《不良の俺、異世界で召喚獣になる》5章6話

「―――はァ……マジかァ……」

『ギアトニクス』を覆っている北側の外壁。

その上に―――額から紅の角を生やす年が立っていた。

「……こりゃァ、何千って規模じゃねェぞォ……」

視認できる範囲だけで―――數萬匹。

『ギアトニクス』外に出てモンスターを迎撃しているのは―――『帝國』の騎士、およそ500程度。『森霊エルフ』のセレーネ。『機巧族エクスマキナ』のマリー。そして『プロキシニア』の騎士、數百人。

『ギアトニクス』でモンスターを待ち構えているのは―――『反逆霊鬼リベリオン』のキョーガに、『地獄番犬ケルベロス』のサリス。そして『帝國』の騎士と『プロキシニア』の騎士。ついでに避難者を探す『地霊ドワーフ』のシャルアーラ。

かなりの強者が揃っているが―――數萬にも及ぶモンスターの群れを前に、どれだけ迎撃できるかわからない。

「……んじゃァ、俺も行くかァ」

モンスターにも知があるのか、目の前の敵を無視して『ギアトニクス』に侵を始める個が現れ始めた。

キョーガの反対側―――南側の外壁に立っていたサリスも、そろそろ戦い始めた頃だろう。

外壁から飛び降り―――軽やかに著地して、背後を振り返った。

―――『ギアトニクス』北側の口を破壊し、中に侵してきているモンスターがいた。

「ガァァァ……!ガァアアアアアアアアッッ!!」

戦闘に立っていたのは、頭から2本の角を生やした3メートルほどの黒い巨だ。

鬼、と呼べば良いのだろうか。大化した巨腕は、小さな家程度ならば簡単に握り潰せるだろう。

「うるせェよクソが―――『焼卻角砲ホーン・ファイア』」

キョーガの『紅角』の上に熱が集まり―――ボッと音を立てて、紅蓮の火球が現れる。

「てめェら纏まとめて死にやがれェ」

尋常ならざる熱を持つ火球が放たれ―――発。

火球が直撃した鬼は、存在を焼き消され―――近くにいたモンスターも、風圧をけて吹き飛ばされた。

「……ォ、ア……」

「カ、アォ……」

「あァ?」

もうもうと立ち込める土煙―――と、何かが土煙の中から姿を現した。

剣や斧、槍などの武を持った―――ガイコツだ。

ゾロゾロとその數を増やし……數十匹のガイコツが、キョーガに向けて持っている武を構える。

「……ァ、アアア―――」

一番近くにいたガイコツが、持っていた剣を振り上げながらキョーガに飛び掛かった。

コイツ、聲帯とかないのにどうやって聲を出してんだ―――とか思いながら、ガイコツの攻撃を簡単に回避する。

クルリと右足を軸にしてその場で回転し―――ガイコツの頭部に、鮮やかな回し蹴りを叩き込んだ。

「アア、ァ……」

「カ、ォォ―――」

吹き飛ばされる仲間には目もくれず、他のガイコツがキョーガに襲いかかる。

一匹一匹はそこまで強くないが―――連攜が取れているし、何より數が多い。

だが―――『反逆霊鬼キョーガ』の敵ではない。

「はァ―――ッ!」

短く息を吐き―――キョーガの両腕が淡い紫を放ち始める。

魔力を一ヶ所に留とどめ、己の力を底上げする方法―――『付屬魔力エンチャント』だ。

「しィッ!」

風を切る拳撃がガイコツに放たれ―――轟音。そして衝撃。

キョーガの拳撃により生まれた拳圧がガイコツを吹き飛ばし―――後ろにいたガイコツの群れが、バラバラに崩れながら吹き飛んだ。

「っしィ……なんだァ、ザコしかいねェじゃねェかァ」

ニイッと顔を歪め、キョーガが迎撃を続ける―――と。

―――ドゴォォォォォッッ!!

何かが破壊されるような音を聞き、キョーガは背後を振り返った。

「……オイオイオイ……! マジかよォ……?!」

キョーガは『ギアトニクス』の北側口を守っている。

サリスは『ギアトニクス』の南側口を守っている。

『ギアトニクス』への口は、北側と南側にある口だけで、その他は壁だ。

―――その壁が砕され、『ギアトニクス』の中にモンスターが流れ込んで來ている。

「あの壁を壊すほどォ強つえェモンスターがいるって事かァ……?!」

東側から押し寄せるモンスターの大群に舌打ちし、サリスに報告しに行こうと―――して、キョーガがきを止めた。

「……オイオイ冗談だろォ……」

西側の壁を飛び越え、空を飛ぶモンスターが『ギアトニクス』り込んで來ている。

「チッ……! 外の奴らは何やってんだァ?!」

迫るガイコツを迎撃し、誰に向けてかわからない怒號を飛ばす。

―――『ギアトニクス』の中央にあるあの建にモンスターを行かせたらダメだ。

あそこには一応アルマがいるが―――リリアナ以外の一般人がいる狀況で、あの優しい『吸鬼ヴァンパイア』がどこまで人々を庇いながら戦えるかわからない。

それに、魔法を使い過ぎればの供給が必要になる。

「クソがァ―――!」

ガイコツを蹴り飛ばし、『焼卻角砲ホーン・ファイア』で纏めて吹き飛ばす。

そのまま踵きびすを返し―――キョーガは、中央の建に近づくモンスターの元へと走った。

――――――――――――――――――――

「―――総員、前へ! モンスターを殲滅するのです!」

「「「「「おおッ!」」」」」

『ギアトニクス』に侵したモンスターを、『プロキシニア』の騎士が斬り殺していく。

「エリザベス様! モンスターの増援です!」

「隊列を崩さないで! ただのモンスター程度、焦らなければどうと言う事はありません!」

素早く指示を出し、モンスターの大群を迎撃する騎士たち―――そこへ、何人かの騎士が現れた。

「……おーおー……ずいぶんと張り切ってんなぁ……」

「あなたたちは……『帝國』の……?」

「初めまして、『プロキシニア』の王様……つっても、會うのはこれが最後だろうけどなぁ」

四人の騎士が顔を見合わせて笑い―――次の瞬間、モンスターの大群へと駆けて行った。

『帝國』の騎士たちが剣を振るう度に、辺りに凄まじい風が吹き荒れる。

自分たちとは比べにならぬ強者の姿に、思わず『プロキシニア』の騎士たちは息を呑んだ。

「す、すまない。助かったぞ」

「いえいえ……まあ、そうだなぁ、お禮なら―――」

「え―――」

『帝國』の騎士に禮を言った男―――その口から、大量のが零れ落ちた。

「―――そこの王様にしてもらうかねぇ」

男の部から剣を抜き、『帝國』の騎士たちが顔を愉快そうに歪める。

次の瞬間―――『帝國』の騎士四人が、『プロキシニア』の騎士の殺を始めた。

「なっ、な……?!」

突然の出來事に、エリザベスはけなかった。

いや……エリザベスだけではない。

『プロキシニア』の騎士たちも、突然過ぎて反応が遅れた。

―――その遅れは、致命的な隙。

次々に『プロキシニア』の騎士が殺され―――あっと言う間に、エリザベスだけが殘った。

「……弱いな……この程度で國の警護とか、笑わせる」

「あ、あなた方! 一何を―――」

「何をって……決まってるだろ?」

一人の騎士がエリザベスを押し倒し―――下卑た笑みを見せた。

「今からお楽しみなのに、邪魔がったら迷だろ?」

「ぐ、ぁ……?!」

殘る三人がエリザベスを鎧をがし―――その下に著ていた服を引き裂いた。

恥と怒りに顔を真っ赤に染めて抵抗するが―――全くけない。

「こんな事、して……! あなたたち、どうなるかわかって―――」

「わかってねぇのはアンタだろ」

鼻と鼻がぶつかりそうになる距離―――そこで、男が囁くように言った。

「エリザベス王、及び『プロキシニア』の騎士、モンスターと懸命に戦うも、死亡」

「え、は……?」

「まだわかんねぇのか? ―――お前で遊んだ後は、殺すって言ってんだよ。生かしといたら、俺らが殺されるからな」

ほとんどに剝かれたエリザベスが、恐怖に息を詰まらせる。

「クククッ……王様を犯すの、前々から夢だったんだよなぁ」

「早く変われよ? モンスターがどんどん攻め込んで來てるみたいだしよ」

「あの程度のモンスターにビビってんのか? お前は一番最後だな」

「はぁ?!」

いやらしく笑う男が、エリザベスの上に覆い被さろうと―――する寸前。

―――辺りに、影が落ちた。

「……?」

が雲で隠されたのだろうか?

不思議に思った騎士が空を見上げ―――驚愕に瞳を大きく見開いた。

「ァァァ……!」

―――ズンンッッ!!

重々しく著地し―――太を遮った犯人が、大きく雄びを上げた。

「ゴァッ―――ガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

―――突如現れた黒いドラゴンが、雄びを上げて住宅を踏み潰していく。

その外見は―――『忌箱パンドラ』の迷宮でキョーガが戦った黒竜にそっくりだ。

「ひっ……!」

「ど、ドラゴン……?!」

キョーガが戦った黒竜―――それも、一匹ではない。

空を飛んでいた黒竜が並ぶようにして地面に降り―――その數、五匹。

「に、逃げろ! 逃げろぉ!」

尋常ならざる速さでその場を離れ、遠くへ逃げ去る『帝國』の騎士たち。

殘されたエリザベスは―――けなかった。

「あ、ああ……あ……」

まるで糸が切れたり人形のように、力なく座り込んだままかない。

「グルルルルル……!」

抵抗しない獲を前に、黒竜はゆっくりと口を開いた。

―――あ、死んだ。

死をれたエリザベスに、目の前の死が襲い掛かる―――事はなかった。

「―――『焼卻角砲ホーン・ファイア』ッッ!!」

エリザベスの橫を、蒼い球が通り抜けた。

そのまま黒竜にぶつかり―――発、轟音。

理不盡とも言える熱を前に、黒竜の群れは為すなく焼き殺され―――呆然とするエリザベスの前に、一人の男が降り立った。

「よォ、大丈夫かァ?」

そう言った男の額ひたいには、しい蒼の角が生えていた。

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