《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第46話「ベルの気持ち」

「へくしょーん。へっくしょーん」

リュウイチロウは、豪快にクシャミをしていた。グランドリオン貧民街の宿屋である。ベルは、そんなリュウイチロウを看病していた。

「大丈夫?」

「昨日、ちょっと雨に打たれ過ぎたみたいで」

へくしょん――とまた、くしゃみだ。

かなり高熱を発しているようで、頭に乗せていた氷水がもう溶けてしまっている。ベルはその氷水を取った。

「新しいのもらってくるから」

「ごめん。世話かけて。こんなはずじゃなかったんだけど――」

「大丈夫」

はじめてリュウイチロウと出會ったのは、昨日の明け方だった。

リュウイチロウに助けられてグランドリオンまで來た。チラシの類かと思って、最初はあまり信用していなかった。

優しすぎたからだ。

ベルのような奴隷に親切にしても、見返りなんて期待できるはずがない。それでも彼は、フレンチトーストと紅茶まで振る舞ってくれた。

昨日のお晝に食べた味はまだ、口の中で思いかえすことが出來る。

そしてベルは、スクラトアのもとに連れ戻された。そのときには深い絶に叩き落とされたような気分だった。

領主館はクロエイによって覆われて、孤島に置き去りにされた気分だった。それでも、リュウイチロウはベルのことを助けに來てくれた。

そして――。

一夜が明けて、こうして無事に宿屋に戻ってきた。

朝になるとクロエイたちは溶けてゆき、避難していた人は戻りはじめていた。特に、クロエイの出現地點が城壁の側だったころもあり、貧民街は被害がなかったようだ。

「良かった。無事に生きて戻って來られて」

ベルはそうつぶやいた。

「ホントにな。昨日は死ぬかと思った」

リュウイチロウが助けに來てくれたことは、素直にうれしかった。クロエイから救ってくれたことよりも、スクラトアから奪い返しに來てくれたのがうれしかった。

(この人なら、信用しても良いかもしれない)

今では、そう思えるようになった。

仮に何か裏があったとしても、リュウイチロウに與えられたは偽りではない。彼のことを思うだけで、の底が溫かくなってきた。

この人のために、自分にも何か出來ることはないかと思う。今までは恐怖や苦痛が、ベルのことを働かしていた。こんな溫かい気持でくなんて、はじめてのことだった。

リュウイチロウには申し訳ない。だが、こうしてリュウイチロウを看病することは、なぜか非常に気分が良かった。

(この人のためなら)

自分は、何でもできる気がする。

昨日會ったばかりの人に抱く気持ではない。これほど急速に惹きつけられたのは、はじめて人のというものに、れたからかもしれない。

熱にうなされて、鼻水を垂らしているリュウイチロウの顔を見る。しいがこみ上げてきた。

「どうかした?」

熱に浮かされた目で、リュウイチロウはベルを見てきた。

「……なんでもない」

急いで、氷水をもらいに行くことにした。

の変化は難しいのだけれど、顔ぐらいは変わる。自分の顔が赤くなってるような気がして、仕方がない。こういうを抱くのも、はじめてのことだった。

    人が読んでいる<《完結》虐待されてる奴隷少女を救った、異世界最強の龍騎士>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください