《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第49話「ベルの気持ちⅣ」

フィルリア姫が去って行った。

リュウイチロウがかじっているリンゴを、いますぐ叩き落としたい気分におそわれた。

もちろん、そんなことはしない。

リュウイチロウに嫌われることだけは、ゼッタイに避けたかった。

「尋ねたいことがある」

ベルは、そう切り出した。

「なんだ?」

と、リュウイチロウはノンキな顔で応じる。

「どうして、あなたはフィルリア姫ではなくて、私を選んだ? どうしてフィルリア姫のいを蹴ってまで、私のメンドウを看るって言った?」

「え……。どうしてって……」

リュウイチロウが口ごもる。

とたんに異様なほどリュウイチロウの顔が赤くなった。また熱が上がってきたのかもしれない。

「ごめん。別にムリして応えなくても良い」

調を悪くされるほうが困る。

「す、す、す……」

「す?」

「なんでもない」

と、リュウイチロウはふとんに潛り込んでしまった。ふとんをめくって、その頭に氷水を乗せた。リュウイチロウは、されるがままになっていた。

しばらく沈黙だった。

しかし、心地は悪くなかった。

「私から、お願いがある」

「ん?」

「私のこと、捨てないでしい」

「は?」

と、リュウイチロウはホウけた顔をした。

「捨てられると行く場所に困るから。だから捨てないでしい」

ベルは今まで3人の貴族に飼われていた。

最初に飼われていたのは、すでに心ついたときだった。質値が低かったので、生まれつきの奴隷だったのだ。親の顔は知らない。だが、ベルのような人間はすくなくなかった。

いベルは、よく命令に背いた。そのたびに辛い目に遭わされた。が、主人のほうも想をつかしたみたいで、他の貴族に売り払われた。

2人目の貴族は、このグランドリオンの貴族だった。そのときにはすでに、飼い主には反抗しないほうが良いと覚えていた。特にこれといった失敗をした覚えはないが、売り飛ばされた。あまりしゃべらないので、飽きられたのだろうと思っている。

で。

3人目。ソトロフ男爵に飼われた。

ソトロフ男爵がイチバン酷かった。ベルの心の殘りカスすらも見事に打ち砕いてくれた。

そして――。

リュウイチロウが4人目となる。

別に、リュウイチロウは貴族ではない。ベルも飼われているわけではない。でも、今のところ、ベルの所有権の権利書を持っているのはリュウイチロウのはずだ。

「これ、返しておくよ」

リュウイチロウはそう言うと、ベルにその権利書を握らせてきた。

「え……」

心にズドンと重石が落ちてくるような気分だった。必要ないと言われているのか――と思ったのだ。

「ベルとは対等に付き合いたいんだ。主人と奴隷じゃなくて、同じ立場の人間として」

「同じ立場――」

そんなこと、考えたこともなかった。

質値200を越えるリュウイチロウと、質値2とか3をさまよっているベルと、同列に立つことなんて、あまりに非現実的すぎた。

ベルからしてみれば、リュウイチロウの奴隷としていたほうが居心地は良い。庇護下に置かれている気がするからだ。

常に、誰かに飼われ続けてきたせいでそう思ってしまうのかもしれない。

「だから、これから友達というか、そういうじで付き合ってくれれば良いから。捨てるとか、捨てないとかじゃなくてさ」

「だけど、そしたら私、他の貴族に買われる」

権利書がなければ、フリーの奴隷ということになる。いつ誰に引き取られてもオカシクない。

権利書をリュウイチロウに突き返した。

「そっか。じゃあ、仕方ないのかな。奴隷というのは、あんまり良いじしないんだけどな」

「これから、よろしくお願いします。主さま」

ベルは自分の頬に指を當てて、笑顔をつくって見せた。

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