《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第55話「黒騎士」

ケルゥ侯爵からは、領主館に來るようにとわれた。行く気にはなれなかった。

マチス侯爵の領主館でもそうだったが、貴族は奴隷を雑に扱う癖がある。ベルのことを「使い古し」とか言われたこともある。

(また、ベルをけなされたら厭だなぁ)

と、龍一郎は思う。

もしかすると貴族たちは、それを悪いとも思っていないのかもしれない。

地球の思想とは、違うのだ。

質値の低い者はクロエイを呼び寄せてしまう。だから、せめて力として使おうとする。これは合理的なことだ。

一方で、貴族の力として使ったほうが良いという、クラウスやフィルリア姫の意見も、間違ってはいないと思う。

「善悪ってのは、難しいもんだな……」

と、龍一郎はつぶやいた。

どちらの意見が正しいのかなんて、龍一郎にはわからない。それでも、こうしてベルの信頼を勝ち得たことだけは、間違えていないと斷言できる。

木造の部屋にいた。

巨木を切りにしたようなテーブルに、丸太を立てただけのようなイスが置かれている。

大人たちは、安酒を酌みわしていた。ほとんど水みたいな酒だ――そうだ。龍一郎は呑んでいないので、わからないが、そういった會話が聞こえてくる。

ここは、冒険者組合というそうだ。

貴族たちは燦然とかがやくの中で住んでいる。しかし、都市の中に住めない貧民たちは、自分たちのを、自分たちで守らなくてはいけない。そのための自警団的な組織だそうだ。

會話が聞こえてくる。

『ジュルドール修道院を攻めていた、ケルゥ侯爵が軍を退いたのには驚いたぜ』

『あの侯爵、庶民を皆殺しにする意気込みだったのにな』

『ウワサによると、すげぇ大貴族さまが、オレたちの代わりにを差しだしてくれたらしい』

『どんな貴族だ?』

『さあ。そこまでは――』

心でほくそ笑んだ。

は知られていないらしいが、誰かが介して戦を止めたということは伝わっているようだ。反面、龍一郎がグランドリオンの英雄だということは、知れ渡っていなかった。

「もしかすると、黒騎士さまが助けてくださったのかもしれんな」

という聲があがっていた。

よくわからないが、この冒険者組合には「黒騎士」という庶民にしては質値の高い人間がいるそうだ。

ウワサをすれば――その黒騎士とやらが、冒険者組合の中にってきた。

「黒騎士さまー」

と、組合にいた男たちは、総立ちになった。

なるほどたしかに黒騎士だ、と思った。全黒ずくめの甲冑でを固めているのだ。プレートメイルというのだろうか、男かかもわからない。

「不思議なカッコウだな」

と、龍一郎はつぶやいた。

「そうですか?」

と、ベルが首をかしげた。

地球でプレートメイルが発明されたのは、銃があったからだ。火薬による衝撃を防ぐために作られた鎧なのだ。銃のない世界で、あんなカチコチに固めた鎧のある意味がわからなかった。

「クロエイがいますから」

「なるほど。クロエイからを守るための防か」

それにしても今、その鎧を著る意味はあるのだろうか。

プレートメイルの重量はたしか30キロ前後ある。歴史の教科書にそう書いてあった。普段著るには重すぎるうえに、暑すぎるだろうと思う。しかも全黒塗りであるから、厳めしい雰囲気をまとっていた。

黒騎士はみんなに囲まれながらも、何かを探しているようだった。

ふと目が合った。

合ったような気がする。

ヘルムをかぶった奧の瞳が、龍一郎を見た気がした。勘違いではなかった。

ツカツカと黒騎士は、龍一郎のもとに歩み寄ってきた。歩くたびに鎧がガシャガシャと派手な音を鳴らしていた。

いきなり龍一郎の腕を取ってきた。

「え? なんですか?」

「こちらへ」

カブトムシの擬人化みたいな黒騎士から発せられた聲は、思いのほか高い聲をしていた。斷定はできないが、中にっているのはかもしれない。

龍一郎は黒騎士によって外へ引っ張り出された。

怯えるようにヒョコヒョコと、ベルが追いかけてきた。

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