《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》第56話「クロエイの巨大種」

冒険者組合のとなりが、宿屋になっていた。

貧民街の宿屋なので、あばら家同然のような建だった。以前、グランドリオンで借りていた宿屋と似ていた。強引に龍一郎は、黒騎士によって連れ込まれた。

「なんなんですか、いったい」

そう言った龍一郎は、ベッドに座らされた。

「失禮をして申し訳ありません」

と、目の前で黒騎士がかしずいた。

いったい何が起きているのかわからない。質値が高くて、庶民から人気と言われている黒騎士が、いきなり龍一郎に頭を下げはじめた。

黒騎士は、顔を隠していたヘルムをいだ。

現れたのはの顔だった。

真っ赤な髪をベリーショートにしている。髪が短いせいもあるが、凜然とした顔立ちから、一瞬だけ年のようにも見えた。

しかし、ヘルムの中で醸造された甘い香りは、まぎれもなくのものだった。瞳は赤く、死地に赴く兵士を思わせた。口元はかたくむすばれていた。

「えっと……」

龍一郎は戸いを隠せなかった。

まさかこんなが、黒騎士の中から出てくるとは思っていなかったのだ。やや男勝りな印象をけたが、整った顔立ちをしている。

「フィルリア姫から、手紙をいただいております。グランドリオンでの騒を救った英雄。そして質値200以上もあるという、龍神族だと」

「ええ。まぁ」

そう面と向かって言われると、面映ゆいものがある。

「私はエムール・フォン・フレイと申します。フィルリア姫からは、〝同志〟と聞かされております」

「同志?」

ゼルン王國は今、〝純派〟が権力を握っている。それを覆すためにフィルリア姫は、著々と仲間を集めているのだそうだ。

そのひとりがエムールだとのことだった。

「オレは、同志になると言ったような覚えはありませんけど」

政爭とかに巻き込まれるのは、ゴメンだ。

質値の低い者にたいして、どんな形であれ慈の心を持っているのであれば、それはもう同志なのです」

エムールは、ケルゥ侯爵の騎士なのだそうだ。騎士ということは、いちおう貴族ではあるということだ。裏ではこうして顔を隠して、庶民たちの支援活を行っているのだと言った。

「貴族が庶民に手を貸しているとなると、貴族としてやっていきにくくなります。私は〝純派〟であるケルゥ侯爵のもとで働いていますから、余計に良い目で見られません。ですので、こうして顔を隠して活させてもらっているのです」

と、エムールはヘルムをかぶりなおした。

「お察しします」

龍一郎も貧民にをわけてやっただけで、貴族たちから偽善者だと言われた記憶がある。

それで、オレに何か用事でしょうか――と龍一郎はたずねた。強引に部屋に連れ込んで來たからには、何か特別な事があるのだろうと思った。

「実は、協力していただきたいことがあるのです」

「なんでしょうか?」

「この近くに、シュバルツの村というのがあるのですが、クロエイ退治を手伝っていただきたいのです」

「手伝えと言うのなら、手伝います。ですけど、それはオレの助力が必要なことなんですか?」

わざわざ部屋に連れ込んでまで、頼み込んでくることにしては違和があった。エムールが貴族だというのなら、クロエイを倒すこともそう難しくはないだろうにと思う。

「実は、このあたりはクロエイの出現率が非常に高く、巨大種というのが目撃されているのです」

「巨大種?」

「はい。言葉通り、大きいのです」

エムールはヘルムを小脇に抱えてそう言った。巨大種というものを知っているかとベルに尋ねた。ベルは知識としては知っているが、見たことはないと言った。

「どれぐらいの大きさなんです?」

「それはもう、都市を丸のみにするぐらい」

「そ、そんなに大きいんですか」

その大きさになると、さすがに龍一郎も勝てる気がしない。ただでさえ、クロエイは怖ろしいバケモノなのだ。

「ご安心ください。そこまでの巨大種が出てくるとは限りません。どうかシュバルツ村の護衛に協力していただきたいのです」

エムールはヘルムで隠された頭を下げた。

キレイな人だけど、すこし堅苦しい人だなという印象をけた。騎士とは、こういうものなんだろうか。

「クロエイを出るということは、夜ということですか」

「夜通しの護衛になります」

「わかりました」

なかなか骨の折れそうな頼みだ。だが、フィルリア姫の命をけて來ている以上は、斷るわけにもいかない。

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