《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》114話「龍一郎とフィルリア」

「右肩、左肩!」

龍一郎のもとに木剣が襲いかかってきた。龍一郎も木剣でそれをけ止める。

「右首、右わき!」

聲を発するはフィルリア姫だ。花吹雪のごとく華麗にまって、フィルリア姫の木剣は指示した場所に打ち込まれる。

「左首、左わき!」

フィルリア姫のプラチナブロンドの髪が舞い上がって、柑橘類のような香りを発散させる。だが、それに陶然としている暇はない。左首に來る一撃を撃ち返して、左わきへの切り上げを叩き落とす。

間!」

最後は下段からの切り上げだ。

なんとかすべて防ぎきった。

「よし! 見事!」

とフィルリア姫は木剣をおさめた。

「はぁ……はぁ……」

呼吸するのを忘れていた。龍一郎は仰向けに倒れて呼吸をととのえた。

セリヌイア城の練兵場だ。

芝が丁寧にそろえられており、グルリを郭に囲まれている。城から見下ろすと緑の池のように見えるようになっている。

普段は竜騎士軍が訓練を行っているが、今はほとんど出払っている。そのために人気はすくない。仰向けに倒れた龍一郎のもとにメイドたちが水を持ってきた。冷たいタオルで汗を拭いたりしてくれる。

「強くなったな。リュウイチロウ」

フィルリア姫もタオルをけ取っていた。

「はい。フィルリア姫やエムールが稽古をつけてくれるおかげです。まだまだ、フィルリア姫には敵いませんけど」

フィルリア姫は王であり、武人でもある。

はレイピアだが、刀剣や槍をもった立ち回りも見事にこなす。

「そう悲観することはない。リュウイチロウの本領はクロエイ退治のさいに発揮される。それ以外では護衛の者が守ってくれるだろう。君は君自を守れるぐらいになれば良い」

「はい」

「もっとも、私の専屬騎士になりたいなら、もっと厳しく鍛えるがな」

「それはカンベン願います」

はははッ、とフィルリア姫はさわやかに笑った。笑うと八重歯が見える。八重歯があるのはヴァルフィと同じだ。

ヴァルフィの魅力はその不気味さにある。フィルリア姫の魅力は単純な貌だ。運のあと頬を紅させて、目を潤ませるフィルリア姫は、よりいっそうしい。

「しかし驚いたよ」

座り込んでいる龍一郎に、フィルリア姫は手をさしだしてきた。龍一郎はその手を借りて立ち上がった。

「オレなんてまだまだですよ」

「いや。武のことではない。このセリヌイアという都市のことだ」

「何かありましたか?」

「民が非常に明るい。行商人たちも最初は興味本意で來るそうだが、居心地が良くて長居してしまうと言っていた。私の目指しているものは、これだ。そうじさせられたよ」

ありがとうございます、と龍一郎はうなずいた。

「でも、問題はいろいろありますけどね」

「どんな問題だ?」

「奴隷解放令というのは、貴族たちにはれられにくいもののようです。セリヌイアから出て行く貴族が多いですし、毎日不服を訴え続けている貴族もおります」

なかには、都市を出て行く貴族と一緒について行く奴隷もいる。奴隷であることに満足している者もいるということだ。

「あと、お見合いのこととかか?」

フィルリア姫は意地の悪い笑みを浮かべて、龍一郎を見つめていた。

「あ、いや、それはまぁ……」

気まずくなって、龍一郎は目をそらした。

「エムールから報告をけている。令嬢たちとのお見合いをイッサイ斷っているそうではないか。私とのお見合いもまだけてもらっていないようだが」

顔を寄せてくる。

鼻と鼻がくっつくほどの距離になった。この距離でもフィルリア姫のには、一點の染みさえ見當たらなかった。

「それは、ちょっと、々と決心がつきかねるというか、なんというか……」

「気楽に考えれば良い。別にそれで結婚が決まるというわけではないのだから。私なんてなくても1日に3人とはお見合いをさせられているぞ。もちろんすべて適當にあしらっているがな。私の本命は1人しかいないのだから」

フィルリア姫が熱っぽい視線を、龍一郎にそそいできた。その視線に気づかぬフリをするのが大変だった。

「そのエムールのことも心配です」

と、龍一郎は強引に話を切りかえた。

「ヴァルフィ王の要請をけて、サディ王國に向かっているのだろう。なに、サディ王國はたいした國ではない。大義があるのなら、難なく制圧できるはずだ」

フィルリア姫の言葉が、すこし龍一郎の肩を軽くさせた。

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