《《完結》待されてる奴隷を救った、異世界最強の龍騎士》121話「ヴァルフィの占い」

「リュウイチロウさまァァァ――ッ」

エムールが龍ならぬ鬼のような形相で、龍一郎のもとに駆けつけてきた。

サディ國は降伏の意を示した。城門を開いてもらい、竜騎士軍を中にれてもらった。その城門が開くやいなや、エムールが龍一郎のもとに土ボコリをまきあげて疾走してきたのだった。

「ど、どうした?」

恐ろしい。

老赤龍より恐ろしい。

「なにを平然としておられるのですかッ。セリヌイアはどうしたのです。セリヌイアは!」

エムールが龍一郎の両肩をつかんで、激しく前後に揺すってきた。

「し、心配はいらない。フィルリア姫が見てくれているから」

「あの問題児のガルス男爵はッ?」

「酔いつぶれてる」

「リュウイチロウさまがいなくては、都民は不安にかられますッ」

「フィルリア姫が演説をしてくれると言うから……」

「せっかく竜騎士軍としての初陣。我らが勝利を持ち帰ろうと思っていたのに」

エムールの激しい忠誠心に、龍一郎は苦笑した。

うれしいことには、うれしい。

だが別に、セリヌイアにとって大事な戦というわけでもない。

「エムールたちが無事であれば、それで良いよ。それに思っていたよりも日食がずっと早かった。戦爭なんかしてる場合じゃない」

龍一郎はここに來るまで、老赤龍に乗ってきた。すでに各地でクロエイのうごめくさまを確認することができた。

「すんすん」

エムールが龍一郎の首や腹に、小鼻をひくつかせていた。

「どうした? 汗臭いか?」

「いえ。失禮しました。なんだかいつものリュウイチロウさまではないようなじがいたします。すこし大人になられたというか……男になったというか……」

「気のせいだろう」

たしかに龍一郎の心境は、いつも違う。

なにせこの頬に、ベルからのキスをけたのだ。気分が高揚して、今ならなんでもできる気がする。

「気のせいかもしれませんね」

と、エムールは納得してくれた。

「それよりヴァルフィさまは、どこにいる?」

こちらですリュウさま――とヴァルフィがスミレの髪を振りして、龍一郎に抱きついてきた。

大きな房が龍一郎の二の腕に押し付けられた。だが、揺することなく、やさしく押し返すことができた。

「ヴァルフィさま。戯れもほどほどに」

「たわむれだなんて、そんな……」

「これが例のでしょう」

ヒューリマンから取り返した金の杯を、ヴァルフィに差し出した。

「取り返してくださったのですね。これで未來を占うことができます」

「この日食による慘劇を回避する方法が、占いでわかると良いですが」

城門のわきには木造の小屋があった。番所だ。その部屋を使わせてもらうことにした。木の機が置かれている。《影銃》と思われるものが、いくつか壁にかけられていた。それだけの簡素な部屋だ。

機の上に金の杯を置いた。

「リュウさま。水と剣を用意してくださいますか?」

「剣ならある」

腰にさしていた剣を、ヴァルフィにさしだした。水はエムールがすぐに持ってきてくれた。杯に水を満たした。ヴァルフィは躊躇なく、みずからの左手の平を切りさいた。が杯にしたたり落ちた。明だった水が赤くにごった。

「龍のよ。我らのやるべきこと。進むべき道を示したまえ」

ヴァルフィがそうとなえた。

杯に満ちた水に、ある映像が浮かび上がった。それは一本の樹の映像だった。その樹に龍一郎が寄りかかっている場面だった。

「オレが――何かしてるな」

そこで映像が終わった。

「なるほど」

とヴァルフィは神妙な顔でうなずいた。

「今ので何かわかったんですか?」

正直、龍一郎には何がなんなのかよくわからなかった。ただ、自分の姿が映されているということだけはハッキリわかった。

「リュウさま。命をかける覚悟はありますか?」 ヴァルフィがそう問いかけてきた。

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