ちょうど外に出てみようと思っていたところで母さんがってきた。今日はシェーラの他に姉さん達も一緒だった。

とりあえず聞いてみようかな。

「おはよう！かあさん！しぇーら！れれなねえさん！るーなねえさん！」

まだ舌が上手く回らないので、発音が拙いが大丈夫だろう。

「あら～クルスちゃん起きてたのね。おはよう」

母さんは大の花のような笑みを咲かせながら、挨拶を返してくれた。

母さん、めっちゃ綺麗です……。

「坊っちゃま、おはようございます。……はっ！坊っちゃまからご挨拶をっ！！やっと私が母親なのだと思えるようになって━━━あいたっ！」

このポンコツメイドはなにしてるの？また母さんに呆れられながら頭はたかれてるし。

「クルス！おはよう！」

レレナ姉さんはそう言って俺に抱きついてきた。 

「おはよう………。む……お姉ちゃんだけずるい」

ルーナ姉さんはレレナ姉さんが抱きついているのを見ると後ろから俺に抱きついてきた。

……この世界の挨拶はこういうものなのかな……っと本來の目的を忘れるところだった。

「かあさん！きょうはいえのなかをみてみたいな！」

「そうね、約束してたものね。でも、私はまだ仕事があるのよね………。ああもうなんでこうもタイミングが悪いの！？あとでカレイドに文句言ってやる……。はあ、しょうがないからシェーラ、屋敷の案をお願いするわね」

ごめん父さん、なんか八つ當たりされるみたい。

「お任せください！もう私なしじゃ生きられないくらいの勢いで案させていただ━━あいたっ！」

だからどうして余計なことを言っちゃうの……。

「大丈夫、セーラお母さん………私達が見張ってる」

「そうね。なら問題ないわね」

「な！思わぬ伏兵が━━あいたっ！」

このメイド、よくクビにならないなあ。

シェーラと母さんの一連のやり取りが終わり、母さんは渋々といったじで仕事へと戻っていった。俺はというとシェーラ達に家の中を案されている最中だ。どこもかしこも職人が意匠を凝らしたような作りになっていて、この家を作った人のこだわりが垣間見える。

あっメイドだ。みんな本當に人だなぁ。……でもメイド全員がハイエルフで強さも母さんと同じくらいって言うんだから、世の中見た目で判斷しちゃいけないな。お、執事もいる。みんな若いし超絶イケメンだ。くそっ、寄ってたかってなんだこいつら。俺みたいなフツメンへの制裁か！

『マスターの両親はどちらも形なのでなくとも不細工ではないです』

確かに俺の両親はどっちの顔も良いから將來に期待が持てそうだ。

そういえば、前にティオがこの家の人の種族を調べたときに執事達のことを言わなかったよね？なんで？

『……忘れてました。てへっ』

………本當にガイドマスターなの？仕草が人間臭くなってきてるし、ものの忘れ方も人間に近づいてるんじゃない……？。まあいいや、それであの執事達の種族は何なの？

『彼らの種族はドラゴニアンです。全員ベースとなっているドラゴンは違いますが、ただのドラゴニアンではありません。高位古代竜人ハイエンシェントドラゴニアンです』

高位古代竜人ハイエンシェントドラゴニアン？それって何が違うの？

『高位古代竜人ハイエンシェントドラゴニアンは竜王を越えた、竜神に最も近い種族と言われています。名前に古代エンシェントとありますが実際は先祖返りで古代竜語魔法が使えるというのが名前の由來です。………そして、毎度お馴染みですが、全員通常の高位古代竜人ハイエンシェントドラゴニアンの域を越えています。竜神越してますね。もうしでその上の龍種とサシで戦えます』

竜神？龍種？分からない単語ばっかりだ。

『申し訳ありません。説明不足でしたね。竜神とは竜達を統べる竜王が神格を得たものです。強さは一匹で複數の國を相手にとって滅ぼせるほどです。そして、龍種とは竜種と別格の強さを持つ存在です。普段はこの世界に隣接する空間で暮らしているので害はありませんが、その力は一匹で大陸が消え去るほどです』

ちょっ、えええええええ！！ってことはここにいる執事達は大陸滅ぼせるくらい強いの！？………そんな強さなのに竜神みたいに神格を得てないのか。じゃあ神格を得たらどうなっちゃうの？恐ろしい……。

『ちなみにセーラやメイド達も同じくらいの強さですよ。カレイドはその上をいきます』

母さんたちも同じレベルなの！？父さんに関してはそれより強いって……。この家は世界でも滅ぼすつもりなのかな？……うん、騒な事を考えるのは止めよう。今は屋敷の探検だ。

「──こちらは私達メイドのエリアになります。何かあればこちらにお越しくださればメイドの誰かが対応致します」

メイドエリアは飾りなどは最低限しかないが、逆にそれが落ち著いた雰囲気を醸し出している。部屋は全員個室を與えられているらしく、メイドエリアはホテルのように間隔を空けて扉が並んでいた。

「そしてこちらが私の部屋になります。どうぞおりください」

シェーラに案されながらメイドエリアを歩いていくと、彼は自の部屋の前で立ち止まり俺達を中へと促した。俺が部屋にると後ろから「坊っちゃまの匂いが私の部屋にっ！！！」という聲が聞こえたがとりあえず気にしないことにした。

「シェーラの部屋、初めて來たわ」

「私も初めて……」

「しぇーらのおへやきれー！」

シェーラの部屋はの子っぽい可らしい部屋、ということはなくアンティーク調の家で揃えられていた。部屋の中はハーブの良い香りで満たされていて、立っているだけでもリラックスできそうだ。掃除もよくしているようで床にも家の上にも塵一つ存在していなかった。

いや本當に見當たらないんだけど。どうやって掃除したの……。

「はうっ！坊っちゃまが私の部屋をお褒めに！」

その部屋の主はというと俺の言葉に反応してをくねらせていた。

シェーラは本當に元気だね……。

「それー！」

かけ聲が聞こえたのでそちらを見てみるとレレナ姉さんがシェーラの部屋のベッドに勢いよく飛び込んでいるところだった。

「気持ちいいー！」

レレナ姉さんはそのままコロコロとベッドの上を転がり、楽しそうに笑った。

「ほら！ルーナとクルスも！」

「うん……」

「え！？」

驚く俺とは対稱にルーナ姉さんは先ほどのレレナ姉さんと同様に勢いよく駆け出し思いきり飛び上がってベッドへとダイブした。ルーナ姉さんはそのままコロコロと転がって一通り楽しむと俺に促すようにレレナ姉さんと一緒に目を向けてきた。しかもおあつらえ向きに二人とも両端に寄ってくれているという徹底ぶりだ。

ううっ、めっちゃ楽しそう……。でもシェーラの迷じゃないかな……？

そう思ってちらりとシェーラの方を見るがニコニコとこちらに笑いかけてくるだけで特に気にしていないようだった。

うー……とりあえずあとで謝ればいいよね？

俺は一人で納得できる理由を見つけると、スキルの強化を全にかけて駆け出した。そしてベッドまであと1メートルというところで足に力をれてベッド目掛けて飛び込んだ。

ポフッ

「おー……！」

なんかすごい爽快！これは楽しい！

シェーラのベッドは俺の部屋のベッドよりふかふかでシトラス系の良い香りがふんわりとしている。その心地よいと香りに思わず寢てしまいそうになったが、転がるのを忘れていたことを思い出し右にコロコロ、左にコロコロと両端にいる姉さん達の間を2回ほど往復した。

「クルス、楽しい……？」

「うん！」

「私も……」

「でしょ～？それにしてもシェーラのベッドはいい匂いね～」

レレナ姉さんもシェーラのベッドがお気に召したようで気持ちよさそうにを預けている。俺達はそのまま20分ほどシェーラのベッドで寢転がっていた。

遊びが終わり、ベッドがら下りた俺はすぐにシェーラに頭を下げた。

「ごめんなさい、しぇーら。しーつぐちゃぐちゃにしちゃった……」

「いえいえ、良いんですよ。シーツなんてすぐに元通りに直せますから。……ベッドに坊っちゃまの匂いが付くのですからむしろ謝したいくらいですよっ！これだけで3日は食べずにいけます！」

後半はシェーラが後ろを向いてしまったのでよく聞こえなかったが、許してくれたようで安心した。

この部屋は落ち著いた雰囲気でゆっくりできそうだからまた來たいな。

「ねえ、しぇーら。またここにきてもいい━━」

「勿論でございます！！いえむしろ來て下さい！」

なんか即効でオーケー出たよ。何故かシェーラはガッツポーズをしているし。

『ふふっ、ギブアンドテイクですね』

え？どういうこと？まあこの部屋に來れるなら別にいいか。

シェーラの部屋を出てしばらく歩き、次に來たのはとても豪華な造りの大きな扉の前だった。

「ここはカレイド様のお部屋です。いえ、お部屋……というよりお仕事をなさる場所ですね」

執務室みたいなものかな。

「はいってもいいの？」

「今の時間は休憩時間なので特に問題はないでしょう」

「私ここ嫌い」

「うん……。落ち著かない……」

姉さん達はこの部屋は好きではないようであまり浮かない顔をしている。姉さん達に理由を聞こうと口を開く前にシェーラが扉をノックした。

「カレイド様、メイドのシェーラです。坊っちゃまの屋敷の案でこちらへ參りました。中にってもよろしいでしょうか？」

「……いいぞ。れ」

シェーラが扉を開けてくれたので中にると、何十人もれそうな広々とした部屋の奧に王様が座るような玉座に腰かける父さんの姿があった。隣には文の服裝をした初老の男も立っている。

壁や床、飾られている調度品は黒が多くを占めており全的に暗い印象の部屋だが、荘厳なつくりをしているので、まるでゲームでよくある魔王の間にでもいるような気持ちになった。

うん、確かに落ち著かない。

俺があちこち見回していると父さんが話しかけてきた。

「ここはどうだ、クルス？」

「いろんなものがいっぱいあっておもしろい！それにおとうさんがまおうみたいでかっこいい！」

俺が思ったことをそのまま伝えると父さんと初老の男が顔を見合わせ盛大に笑い出した。

「──ははは。ああ、すまんクルス。そういえばお前に言ってなかったな」

はて？なんのことだろうと思っていると、父さんが衝撃的なことを口にした。

「俺は魔王なんだよ」

え……？

「えええええええええええ！？」

父さんが…………魔王！？