《最強家族のまったりライフ》18話 ゲームの続きをしよう
「どうでしたか、坊っちゃま」
シェーラが俺に結果を聞いてくる。
「すごいよシェーラ!Sランクの魔だったよ!しかもかなり上位のだったからポイントも高かったよ」
俺がそう答えるとシェーラは大して驚かず、むしろ納得したような表になった。
「なるほど、Sランク上位の魔でしたか。どうりで軽く毆っただけでは膝をつくだけに留まったのですね」
 「え?」
ちょっと今何て……?
Sランクの、しかも上位の魔を軽く毆っただけで膝をつかせたってこと!?やっぱり化けだわこの人……。
「ところで坊っちゃま。そのポイントとやらはランクによってどのくらい違うのですか?」
「えっとね────」
俺はシェーラにランクごとのポイント獲得量を教えた。
「ふむ、ランクによってそんなにポイントの量に差があったのですか。坊っちゃまに萬が一があってはいけないと思い弱めの魔を選んできましたが、通りすがりに倒したSS級の魔の方が良かったかもしれませんね…………」
やっぱり化けだわこの人(斷定)。
シェーラとしては何気ない呟きだったのかもしれないが、俺にとってはシェーラの強さを再認識する程の衝撃だった。
何この歩く災害……道端の小石を蹴る覚で國を滅ぼす魔を倒さないでよ…………。
「クルス、終わった?」
「あ、うん。終わったよ」
「それじゃあ、次は私の番ね!シェーラよりもっと凄いのを連れてくるんだから!」
やめてぇ…………。
そんな俺の悲痛に満ちた思いは屆かず、レレナ姉さんはシェーラ同様にその場から一瞬で消えた。
レレナ姉さんが行ってから、5分程経った。俺は特にすることがないのでボーッとしているのだが、シェーラがいつか見た獲を狙う猛禽のような目で俺を見てくるのでとても居心地が悪い。
今日はやけに大人しいと思っていたが、ここで來たか………あれ?シェーラ以外からも視線をじる、まさかっ!
ルーナ姉さんの方を向くと案の定、シェーラ同様の目で俺を見ていた。
俺今日死ぬんじゃないかな…………?
早く帰って來てっ!レレナ姉さぁぁぁぁんっ!
俺の心からのびが屆いたのかは定かではないが、レレナ姉さんがこちらへ何か引きずりながら戻ってきた。
「レレナ姉さんっ!」
これほどレレナ姉さんのことを待ちわびた日があっただろうか?今俺の目にはレレナ姉さんが窮地に駆けつけた英雄のように見えていた。
ああっ、レレナ姉さんが眩しいっ!
レレナ姉さんの帰還に歓喜していると、レレナ姉さんは俺の前で止まり、引きずってきた魔をその場に離すとすぐさま俺に抱きついてきた。
「この魔は絶対にシェーラのより強いはずよっ!」
その魔は全が赤と黒のトカゲのような姿をしていた。大きさは先ほどの猿の魔よりは小さく、3メートル程だ。それでも大きいことには変わりないが。
でもこのトカゲ、さっきからピクリともかないんだけど。もしかしてレレナ姉さん、殺・っちゃった?うーん、地球のトカゲは捕まえると死んだふりをして相手が油斷した隙に逃げる習があったはずだけど、この世界の魔も同じなのかな?
ふとそんな知識を思い出しているとトカゲの魔がいきなり起き上がり、俺に話しかけていてまだ気付いていないレレナ姉さんに向かって大口を開けて襲いかかってきた。
ヤバいっ!
「それでね──ってわあ!何するのクルス────」
俺は咄嗟にレレナ姉さんを突き飛ばし迫りくる魔の顎から遠ざけた。
これで大丈夫────
しかし魔はすぐさま狙いを外させた俺に狙いを変えて迫ってきた。そのことに気が付いた俺は咄嗟に強化の上位スキルである超越化と魔力による強化を自に施し、加速の上位スキルの瞬速を使って後ろに跳躍した。
ブチッ!
聞こえた音を不思議に思いながら著地するとバランスを崩してたたらを踏んでしまった。著地後もトカゲの魔から目を離さずにいたが、左手を握る覚がないことと水の滴るような音が自分の左側から聞こえてきたことで、俺はようやく自分の左腕が本から食いちぎられていることに気が付いた。
「ぐっ、がああああああああ!」
遅れてやってきた痛覚が尋常じゃない程の痛みを伝えてきた。俺は痛みに耐えられずび聲を上げながらうずくまった。
※ピローン!  スキル「痛覚耐」を取得しました。
「「「クルスッ(坊っちゃま)!!!」」」
みんなが焦燥を顕にして俺の名を呼ぶ。
「…こんのクソ魔があああああ!坊っちゃまになんてことをっ!」
シェーラは俺に傷を負わせたトカゲの魔に向き直ると怒りを顕にしてあらん限りの大聲でんだ。トカゲの魔はシェーラの怒気にあてられると、白目を剝いてその場に倒れ伏した。
まだ痛みでけそうになかったから助かった。
魔が倒れるのを確認すると三人が俺のもとへ駆け寄ってきた。
「坊っちゃまっ!ああ、坊っちゃまの腕が……。は、早く回復魔法で!でも、切れた腕がなくては傷口が塞がって欠損を治せなくなってしまいますね……とりあえず急いで屋敷へ!」
シェーラは傷口を見ると絶的な表になり、服がで汚れるのも厭わず俺を抱きかかえようとしてくれた。 ルーナ姉さんも目に涙を浮かべて悲しそうな顔をしている。
「ご、ごめんなさい!クルス……!」
自分が連れてきた魔が原因になってしまったレレナ姉さんは泣きながら俺に謝ってきた。
し痛みに慣れてきた俺は食いちぎられた傷口を見てみた。傷口はギザギザとささくれ立ち、今も強烈な痛みが続いているが痛覚耐のおかげかなんとか思考はできている。
が滴る傷口を見ながら冷靜になった頭で対処法を考え始めていると、突如として傷口から煙が吹き出した。先ほどの魔の毒かと思い慌てたが不思議と痛みはなく、それどころか今もなおが溢れ出す傷口から俺の腕が再生し始めていた。
「「「「!?」」」」
これには全員が驚き、その景に釘付けになった。
しばらくして煙が収まると、そこには傷一つなく再生した俺の腕があった。
「こ、これは……」
……ええと、ティオ。なんだか分かる?
『おそらく主神イリスの加護の付屬効果である"HP自回復"が働いたのでしょう』
HP自回復………力や傷を自で回復する。力が全快すれば欠損も回復できる。傷を負う度に回復速度は上昇していく。
力だけじゃなかったんだ……というかこのスキルヤバくない?
「ク、クルス……?怪我は……大丈夫なの……?」
「うん。スキルで治ったみたい」
「そんなスキルが…………と、とにかくご無事で何よりです」
「ごめんね。ちょっと無茶しちゃった」
シェーラは再生した俺の腕をって本當に無事なことを確かめると心底安心したようにをでおろした。そのままシェーラ達と話しているとレレナ姉さんが伏し目がちに話しかけてきた。
「あの……クルス。その……ごめんなさい。私のせいで痛い思いさせちゃって……」
レレナ姉さんは自分の油斷が原因で俺を傷つけてしまったことが許せないようで沈痛そうな面持ちになってしまっていた。
「うん、もう大丈夫だから気にしないで。あ、でもレレナ姉さんなら庇わなくても大丈夫だったかな……」
「……ちょっ!なにそれっ!ひどくない!?………あ」
「うん。調子も戻ったみたいだね」
「ん、むう…………」
……元気づけるための冗談で言ったんだけど今思えばレレナ姉さんなら絶対問題なかったよね…………あれじゃあ俺のしたことって────
話を変えよう。
「そういえばまだ魔に止め刺してなかったよね。ちょっと行ってくる」
俺は姉さん達にそう伝えてシェーラの怒気によって沈んだトカゲの魔に近づいていった。近くで見てみたがトカゲの魔は四肢を投げだしぐったりとしていてピクリともかない。まさか、また死んだふりっ!?
『いえ、本當に死んでいます』
え?ってことはシェーラの怒気だけで死んだの?
『そうなります』
シェーラ、恐ろしい子っ!
しかしそのまま何もなく戻るのも釈然としないので、俺はなんとなくどこかの名探偵になりきり、トカゲの魔の首筋に手を當てて脈を確かめた。
「し、死んでるっ!」
脈があったかわからないがそれっぽく言ってみた。そしてトカゲの口から流れ出る白のを薬に見立て、指で掬って舐め、「これは!青酸カリ────」
「坊っちゃま~!終わりましたか~!」
とやろうと考えていたところでシェーラから聲がかかった。
クソッ!良いとこだったのに!
『マスター。あのは猛毒なので舐めていたら激痛でけなくなっていましたよ』
うそお…………まあ、あんなの舐めたくはないしやめ時を作ってくれたシェーラに謝しておこう。
俺はシェーラ達のもとへ戻り結果を伝えた。
「もう死んでたよ」
「あら、そうだったのですか。何も攻撃していないのに、不思議ですね」
あれは攻撃にらないのね……。
「じゃあ、クルスがポイントを得られなかったから……お姉ちゃんは失格ってことになるわね…………」
そんなルールあったかな?
「ぐっ。まあ、仕方ないわよね」
し不服そうだがレレナ姉さんは大人しくルーナ姉さんの言うことをけれた。
「次は私ね……あ、クルス。確認だけど魔じゃなくてもポイントは得ることができるのよね……?」
「ん?うん。敵対するものならポイントになるよ。でもなんで────」
「わかったわ……」
そんな事聞くの?と聞こうとしたが既にルーナ姉さんはいなくなっていた。しかし10秒と経たないうちに家の方向から走ってくるルーナ姉さんの姿が見えた。引きずっているものはシェーラ達の魔と比べるとかなり小さく見える。
「うおわあああああ!ルーナああああ!お前何してんだぁぁぁぁぁ!!!」
あれ?喋った?しかも聞いたことある聲?
ルーナ姉さんが近づいてくるにつれて引きずっているものの姿はより鮮明に見えてきて……
「「「(お)父さんっ(カレイド様)!?」」」
そこには父さんを引きずってくるルーナ姉さんがいた。
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