《最強家族のまったりライフ》21話 カリスとメイドの狂騒曲
「………はあ、はあ、もうし、もうしで………」 
俺は今全力でシェーラの部屋まで走っている。
気の遠くなるくらい長い廊下だ。それにもう5回は廊下の突き當り壁を折れ曲がっている。何故この屋敷はこんなにも広いのかと何度思ったことか。
別にシェーラの部屋に行くのが楽しみだから、というわけではない。では何故俺が走っているのかというと──
『待たぬかっ!八つ裂きにするぞっ!』
待っても八つ裂きにするでしょーがーっ!
『それはっ……そうかもしれんが………いいから待つのだーーー!!』
はぐらかすなああああっ!!
純白の羽と、鷹のように鋭くしい金の瞳──カリスの瞳はルーナ姉さんの瞳より濃い琥珀に近いだ──を持つ俺の従魔、カリスから逃げるためだ。俺は強化系のスキルをフルで使って逃げているのだが、全く振り切れない。むしろ追いつかれそうだ。
『マスター。シェーラの部屋が見えてきました』
本當だっ!あとし!
部屋の前には俺の近づいてくる気配に気が付いたのかシェーラがニコニコしながら立っていた。
「坊っちゃま!ああ、そんなに急いで。それほど私とのお泊まりを楽しみに──」
なんか勘違いしているけど今はいいや!とにかくこれでカリスから逃げられ──
《ご主人様!危ないっ!》
え?
バシュッ!!ズザザザー!!
シェーラの部屋が目前に迫った瞬間、カリスが魔法を発させたようで背中に衝撃が走り、俺は吹き飛ばされた。
※ピローン 痛覚耐がLv.2になりました。
「坊っちゃま!」
俺が吹き飛ばされたことにシェーラが悲鳴をあげて駆け寄ってくる。ここはメイドエリアなので、自室で轟音を聞きつけたメイドも部屋から出てくると倒れている俺を見つけて駆け寄り、次々に聲をかけてきた。
「坊っちゃま、大丈夫ですか?」
「ああ、服がボロボロに………」
「坊ちっゃま、お怪我はありませんか?」
服は魔法で切り裂かれてしまったので、背中側がパックリと開いてしまってる。
「う、うん、大丈夫だよ」
カリスも一応手加減してくれたのか特に外傷はなく、それでもついてしまった小さな傷は"HP自回復"で完治していたので特に傷は見當たらなかった。
「いいえ、坊っちゃまに萬一があってはいけません。回復魔法を使いましょう」
しかしメイド達がそんなことで安心するわけがなく一斉に回復魔法をかけられた。
「フルヒール」
「エクスキュア」
「エクスヒール」
「癒しの聖域ヒーリングサンクチュアリ」
「癒しの旋風」
「妖王の祝福」
「霊王の息吹」
「神の癒し」
んん!?なんか名前からして如何にもすごそうな魔法をかけられたんだけど!
『ええ。ほとんどが王級以上の魔法です。心配なのはわかりますが、正直やりすぎですね……』
後にティオに聞いたがこの世界の魔法は強さによってランク付けがされており、低いほうから順に、初級、中級、上級、超級、王級、絶級、神級となっているらしい。
つまり、このメイド達は一つの魔法だけでも十分すぎるような上位の魔法をたった一人に複數も、さらには無詠唱で使ったのだ。完全に魔法と技の無駄使いである。
「これで安心ですね。しかし、坊っちゃまをこのような目に合わせた者には然るべき罰をけてもらいましょうか」
魔法の効果が終わると、シェーラ達は満足そうに頷いた。だが次の瞬間には濃な殺気をまき散らしながらカリスの方へと振り向き、騒なことを口にした。
「あら、あの鳥が元兇なんですか?」
「ふふふ、食材が目の前に転がってるわあ……」
「いけないっ!今日のメニューにローストチキンも加えなきゃ」
ヤバい、カリスが早くも天に召されようとしてる。
「みなさん駄目ですよ。あれは坊っちゃまがテイムしたのですから」
良かった………シェーラが止めてくれたみたいだ。
「そうなのですか。では殺し料理はできませんね。しっかりと半殺し教育してあげないといけませんね」
「ふふっ、それが最善かと思います。あ、坊っちゃまは先に部屋にっていてください。私達はクソ鳥カリスとお話をしてきますので」
殺気を振りまきながら笑顔で話すメイド達に俺が何か言えるはずもなく、
「……は、はい。」
ただ従うことしかできなかった。
メイド達は今まで勝ち誇ったような顔をして地面に降り立つカリスを取り囲むと、徐にシェーラがその顔面をアイアンクローで持ち上げた。
『な、何をするかっ!』
「黙ってろクソ鳥……!」
『ひっ!はい…』
シェーラ拘束を逃れようとバタバタと暴れるカリスを一言で黙らせると、カリスをアイアンクローしたままメイド達を引き連れてどこかへ行ってしまった。
取り殘された俺達はというと、
「………ねえ、ノイント、ティオ」
『はい』
《なんでしょうか~?》
「今、何かあった?」
『いいえ♪』
《何もなかったですね!》
「だよねっ。さあ、シェーラの部屋にろう!」
揃って現実逃避をしたのだった。
シェーラの部屋のベッドに腰かけて寛いでいると、ノイントが実化して話しかけてきた。
「ご主人様。ボク、使える魔法が増えたみたいですよ~」
「本當?見せて見せて」
「はい!ステータス開示」
ノイント :    3歳
種族:混沌の霊(変化中)
狀態:健康(契約済)
Lv . 89(共有)
耐久力   ∞/∞
魔力    87568 /87568(共有)
攻撃  34060
防  43710
俊敏  52999
用  53444(共有)
運     85  
《スキル》
【武系】
【魔法系】
・深淵魔法Lv . 1 
・神聖魔法Lv . 1
・魔法Lv .10(new)
【技能系】
・気配察知Lv.10(共有)、超覚Lv. 6(4up) (共有)
・気配遮斷Lv . 10(共有)、隠Lv . 6(共有)
・魔力作Lv.10(共有)、神力作Lv . 1 (共有)
・魔力探知Lv .10(共有)
・魔力吸収Lv . 4(3up)
・集中Lv . 1 
・鑑定Lv .1(new)
【ユニーク】
・霊魔法Lv . 1
・スキル改造Lv . ─
・合魔法Lv .─
《加護》
主神イリスの加護、魔法神ラセアの加護、技巧神シュヴァルエの加護
《稱號》
神の加護をけし者、新たなる芽吹き、改造者エデイター、混沌の調停者カオスミディエイター
俺がシェーラの連れてきた猿の魔を倒したから、レベルを共有しているノイントのステータスは軒並み上昇している。共有しているステータスが2つだけなのは共有できるステータスは2つが限界なのか、それとも単にノイントの方がステータスが高いのか…。
というかノイント防と俊敏高っ!
それと魔法が追加されてる。え?レベル10!?あと霊魔法と魔力吸収もかなりレベルが上がってる。鑑定と稱號も追加されてるよ…。
『おそらく先ほどのメイド達の回復魔法を一部吸収したのでしょう。そして、魔力吸収の効果でメイド達が放った魔法を一部だけ使えるようになったのだと思います』
魔力吸収にそんな効果が………。そうだこの際だからノイントの持っているスキルと稱號を鑑定しくれない?
「それボクも気になるからボクからもお願いっ」
『わかりました』
・魔力吸収………放たれた魔法を吸収できる。吸収量は魔力吸収のレベルによって変化する。また、吸収した魔法は確率で覚えることができる。魔法を覚える確率はレベルによって変化する。
・集中………魔力を消費することで、一定時間思考スピードを加速させる。効果時間はレベルによって変化する。
・鑑定………ありとあらゆる生とモノの詳細を見ることができる。レベルによって閲覧できる詳細の量が変化する。
・霊魔法………霊だけが使えるユニークスキル。ただ、霊と契約することで契約者も使うことが可能になる。
・スキル改造………魔力を消費することで、スキルの効果を改造することができる。魔力の消費量は改造した文字數によって変化する。
・主神イリスの加護………主神イリスから與えられた加護。主神イリスの加護はひとつひとつ効果が異なる。
:MP自回復
:神託Lv .10
・魔法神ラセアの加護………魔法神ラセアから與えられた加護。
:MP自回復
:魔力吸収Lv .1
追※魔力から霊が生まれるなんて聞いたことないわ!気にいったから加護あげるわね♪
・技巧神シュヴァルエの加護………技巧神シュヴァルエから與えられた加護。
:鑑定Lv .1
追※イリスのところでゲーム機改造しただろ?その手腕が気にいったから加護をやるわい!ガッハッハッハッハ!
・神の加護をけし者………神から加護を與えられた証。
:魔法強化
・新たなる芽吹き………この世界に生まれた新たな種族の第一人者に贈られる稱號。効果は一つ一つ異なる。
:???(変化中)
・改造者エデイター………既存の果を別のものへ昇華させた者の証。
:スキル改造
・混沌の調停者カオスミディエイター………相反する二つの力をけれ、それを己の力とした者の証。
:合魔法
何からつっこめばいいんだろう………。まず、魔力吸収と鑑定は神様の加護が原因なんだってのはわかった。追の神様達のメッセージ……適當すぎるだろう。
魔力吸収はかなり強いスキルなんじゃないかな?
集中のスキルは要するに周りが遅く見えるようになるわけだ。
鑑定と霊魔法はなんとなくわかるが、スキル改造?これはノイントに実際にやってもらわないとよくわからないな。
あとは稱號なのだが、“新たなる芽吹き”の効果は???でわからない。変化中となっているからおそらく、ノイントの種族がはっきりと決まったらわかるのだろう。
“混沌の調停者カオスミディエイター”の効果の合魔法って………うん、今度使ってもらおう。
「ノイント………すごいね」
「ボクもびっくりですよ~………」
そんなじに二人でノイントのステータスを呆然と眺めていると、扉が開きどこか清々しいじがするシェーラがってきた。その後ろからはトボトボと、ボロボロになったカリスが続いている。
「お待たせいたしました、坊っちゃま。今お夕食をお作りしますね」
シェーラは笑顔でそう言うと、キッチンの方へと消えていった。
そしてシェーラがいなくなると部屋のり口で俯いていたカリスが俺のに飛びついてきて謝り始めた。
『クルスッ!!すまなかったっ!私が悪かった!!だから許してくれっ!』
『え?い、いや俺がからかったりしたのが悪いんだから別に気にしてないよ。それに、魔法も怪我しないように手加減してたみたいだし』
俺にも非があったのでちゃんとフォローすると、カリスは顔を輝かせた。
『ほっ、本當か!ありがとうクルス!一生ついていくぞっ!!もう二度とあんな思いはごめんだ………』
世界の終わりでも見たかのような雰囲気で語るカリスを見て、俺達は何があったのか聞くのが怖くなって何も聞かないことにした。
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