《最強家族のまったりライフ》49話 創世の時代
「うっ、眩しい…」
晝食を終え、再度歩き始めてから約2時間。俺達はようやく森を抜けた。森の中と外の明るさの違いにし目が眩んだが、次第に目が慣れてきたので辺りを見回すと目の前には広大な平原が広がっており、足元には風に揺られてサラサラと靡く草木が青々と茂っていた。
「わあ……」
家の周りの森とは違ったしい自然の風景に俺はしの間、心を奪われた。
「ふふっ、ここの景が気にったみたいですね。もうあと2時間程で日も落ちますし、今日はここまでにしましょうか」
アマリエはそんな俺の様子を微笑ましそうに見つめながらそう提案してくれた。
「うん!」
「ではテントの設営をしますので、しだけ手伝っていただけますか?」
「わかった!」
し前までのアマリエならテントの設営などの雑務は俺に遠慮してすべて一人でやろうとしていただろう。俺のステータスを見たのもあるとは思うが、手伝いを頼まれたということは、前よりもしだけ打ち解けられた証拠であり、アマリエのその変化に気づいた俺はたまらなく嬉しくなった。
「ボクも手伝いますよ~。何をすればいいですか~?」
ノイントも手伝ってくれるようで実化してアマリエに話しかけた。
「ありがとうございます。ではまず───」
「ここはいいですね~」
テントの設営を手伝い終わり、アマリエに出してもらった椅子に座り寛いでいた俺にノイントがのんびりと話しかけてきた。
「ノイントもそう思う?」
「はい~。なんだか寢転がりたくなってきます~」
「あ、それ分かる気がする」
「ですよね~。せっかくですから寢転がってみましょうよ~」
「でも、ローブが汚れちゃうよ」
「大丈夫ですよ。そのローブには防汚、防水、防塵などの効果が備わっていますから、たとえ泥沼に浸かってしまっても汚れ一つつきません」
俺が汚れるのが心配でノイントのいを遠慮していると、後ろにいたアマリエがローブの効果を説明してくれた。
泥沼に浸かって汚れがつかないなんて、どんな素材を使ってるんだろう?
「ご主人様~大丈夫みたいなんですから早く寢転がりましょうよ~。気持ちいいですよ~」
ノイントの方を見れば既に寢転がって草の絨毯を堪能していた。汚れる心配がなくなったので、俺もノイントの近くに行って一緒に寢転がってみた。
「ふあ~これいいね~」
草の絨毯はひんやりとしていて気持ちがよく、時折吹く穏やかな風とポカポカと照らす太がさらに俺を心地よくしてくれていた。
『草の何が気持ちいいのだ?』
15分程そのままノイントと寢転がって自然にをゆだねていると、カリスが怪訝そうに聞いてきた。カリスには俺とノイントのしていることが理解できないようで、緩みきった俺達の顔を覗き込んでは不思議そうに首を傾げていた。
「うーん、草の気持ちよさは分からなくても、こういう穏やかな風が吹くと気持ちよくない?」
『私は飛んでいるときに吹くような強い風の方が好きだな』
そうか、カリスの場合飛ぶことが多いから風をじることなんて日常茶飯事なんだ。
「へえ~、どのくらい強い風が好きなの~?」
『うむ、だいたいこのくらいだな』
ブオッ
カリスがそう言って羽をはばたかせると、突如俺達に向けて一陣の突風が吹いた。
「「わあっ!」」
完全にだらけきっていた俺達は突風の勢いをもろにくらい、3メートルほどコロコロと転がされた。
「うー…」
「カリス~…」
『む?なんだ?』
俺達が焦點の定まらない瞳でカリスに恨めしそうな視線を向けると、カリスは悪気のなさそうな聲で答えた。
「「やるならそう言ってよ!」」
『私はノイントに聞かれたから実際に験させたまでだ』
「た、確かに言ったけど~……」
カリスは俺達の抗議にまったく悪びれることはなく堂々と言い返してきた。
『それよりクルス、私はし狩りに行ってくるぞ』
「むう…まあいいや。わかった。でもあんまり遅くなっちゃだめだよ」
カリスにこれ以上言っても無駄だと判斷した俺は早々に諦めることにした。
『分かっている。一匹狩ったらすぐ帰ってくるつもりだ』
カリスはそう言ってを5メートル程の大きさに変化させると、羽をはばたかせて飛び立っていった。
「はあ~、ひどい目に遭いました~」
ノイントはカリスがいなくなると盛大にため息を吐いた。
「まさか実際にやってくるなんて……」
うう、まだちょっと目が回ってる…。
『お二人とも大丈夫ですか?』
「うん……」
「もう大丈夫~」
『それはなによりです。あ、お二人の転がる姿はとても面白かったですよ』
「「ちょっとティオ!」」
どうやらからかうためだけに俺達に聲をかけたようだ。
くそっ、自分には被害が來ないからって調子に乗ってるな。
「なんかカリスのせいでせっかくの癒しの時間が臺無しになっちゃいましたね~。今からまた寢転がる気にもなれませんし~。何しましょうか~?」
確かに。カリスの風でボーっとしていたい気持ちがどっか行っちゃったんだよね。
「それじゃあ、今まで試せなかったスキルとか魔法とか使ってみるのはどう?」
「お~いいですね~」
ノイントも気になるスキルがあるようでかなり乗り気のようだ。
「じゃあ確認も兼ねてボクのステータスを見せますね~。ステータス開示」
ノイント :    3歳
種族:無二の霊
狀態:健康(契約済)
Lv . 89(共有)
耐久力   ∞/∞
魔力  88314 /88314(共有)
攻撃  51060
防  68120
俊敏  72000
用   53444(共有)
運     85
《スキル》
【武系】
【魔法系】
・火魔法Lv . 1 
・風魔法Lv . 1 
・水魔法Lv . 1 
・土魔法Lv . 1 
・闇魔法Lv . 1 
・魔法Lv . 10
・時空魔法Lv . 1 
・深淵魔法Lv . 1 
・神聖魔法Lv . 1
【技能系】
・気配察知Lv.10(共有)、超覚Lv. 6(共有)
・気配遮斷Lv . 10(共有)、隠Lv . 6(共有)
・魔力作Lv.10(共有)、神力作Lv . 1(共有)
・魔力探知Lv .10(共有)
・魔力吸収Lv . 7(2up)
・集中Lv . 3 
・鑑定Lv .2
【ユニーク】
・霊魔法Lv . 2(1up)
・合魔法Lv .─
・スキル改造Lv .─
《加護》
主神イリスの加護、魔法神ラセアの加護、技巧神シュヴァルエの加護、霊神ドルーダの加護
《稱號》
神の加護をけし者、新たなる芽吹き、改造者エデイター、混沌の調停者カオスミディエイター
「相変わらずすごいステータスだね」
「いや~ご主人様のステータスを共有しているおかげですよ~」
「そうは言ってもステータスの値はノイント自の実力なんだからやっぱりすごいよ」
「えへへ~そうですかね~」
俺が褒めるとノイントは嬉しそうにはにかんだ笑みを見せた。
「それで、どのスキルを試す?」
「ん~ボクとしては神聖魔法と深淵魔法が気になりますね~」
俺のステータスにもある魔法だから気になってたんだよね。
「ご主人様はご自が持っているスキルの中で試したいスキルはありますか~?」
「俺も深淵魔法と神聖魔法だよ」
「じゃあその二つを試しましょ~」
神力作とかノイントのスキルの合魔法も気になるけど、全部試す時間はないだろうから今回はこの二つかな。そういえば、初めて魔法の練習をしたとき、ケリルが俺のステータスを見て深淵魔法と神聖魔法は失われし古代魔法ロストマジックだって言ってたけど、失われし古代魔法ロストマジックって何だったんだろう?
『失われし古代魔法ロストマジックとは、遠い昔、この世界の人々が創世の時代と呼ぶ今よりも遙かに文明が発達した時代に存在していた魔法です』
俺がふとした疑問を思い出すと、思考を読んだティオがすぐに説明をしてくれた。
創世の時代って、確かまだ種族間の軋轢がなくてレレナ姉さん達みたいなヴァンピルフとかがたくさんいた時代だよね?
『はい。マスターの言う通り、創世の時代はどの種族もお互いに手を取り合い、助け合いながら平和な時代を築いていました。あらゆる種族が様々な知識や特技を活用して協力し合っていたため技は凄まじい勢いで進歩し、それに伴い文明も発展していきました。深淵魔法と神聖魔法も文明が発展する中で生み出された技です』
ティオはそこで一度區切り、さらに続けた。
『しかし、外見の違いや価値観の違いなどから、次第に種族間のは深まり協調がなくなっていきました。その険悪な雰囲気を嫌がった人々は一人、また一人と離れていき、文明は衰退の一途をたどっていきました。そして、その衰退を好機とみた魔達の襲撃によって文明は破壊され、創世の時代は終わりを迎えました。魔の襲撃から生き殘った人々はこれを機に手を取りあうことをやめ、種族ごとに暮らすようになりました』
まあ、考え方の違う人達と無理にいたら嫌気もさすよね。
『マスターは意外とドライな考えをするのですね』
ティオの説明を聞いてその時代の人々にし共しているとティオから意外そうな聲でそう言われた。
そうかな?
『もっと博的で夢語のような考えをすると思っていたのですが……』
どうやらティオは、俺が先ほどの話を聞いて「種族が違っても人は皆仲良くできるはずだ!」というようなことを考えると思っていたようだ。
いくら綺麗事を並べたって嫌なものは嫌でしょ。事に対する価値観が本的に違うんだから分かり合うことだって難しいと思うよ。それ以前に、嫌な人と無理して一緒にいてもお互いに嫌な思いをするだけだし。
『そうですね……』
俺がこんな考えで幻滅した?
『いいえ、マスターも私と同じような考えだと知ってむしろ嬉しかったです。無駄に聖人を気取られてもめんどくさいだけですからね』
めんどくさいって……俺もそう思うけどさあ……。
『話が逸れましたね。文明が消え、種族ごとに散り散りになって暮らし始めるようになったことで文明の技を扱う機會はなくなりました。そのため、文明の技は代を重ねるごとに失われていき、やがて誰一人として文明で生み出された技を扱うことはできなくなりました。創世の時代に作られた産などは今でも存在していますが、再現することは今の技では不可能です』
そんな誰も使えなくなった技である深淵魔法と神聖魔法を生まれたばかりの俺が持っていたからケリルはあんなに驚いていたんだ。
『ちなみに、転生時のスキル欄に深淵魔法と神聖魔法が載っていなかったのは深淵魔法と神聖魔法は分類上それぞれ闇魔法と魔法の上位スキルにあたるからです。厳には別の魔法なんですけどね』
なんかややこしいね。
『スキルを人間が作り出したのですからややこしくなってしまうのも仕方ないのですよ』
よくわからないけどそういうものなのか。
『あ、先に言っておきますが、深淵を覗く者の稱號を手にれたら何故失われし古代魔法ロストマジックが使えるようになったのか聞かれても知りませんからね』
気になってたのに……。
「ご主人様~話は終わりましたか~?」
ティオと結構長く話し込んでしまったようでノイントが待ちくたびれて聲をかけてきた。
「ごめんごめん、もう大丈夫だよ」
「まあ面白い話が聞けたからいいですけど~。それでどっちから試します~?」
「まずは危険がなそうな神聖魔法から試そう」
分類的にも魔法の上位スキルだからそこまで危険じゃないでしょ。
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