「森に著いたね」

ノイントとアマリエが寢てしまったので……いやアマリエは寢てないか。とにかくカリスの背中が靜かになったので、一人で気持ちの良い風をじながら景を眺めていたのだが、ものの10分もしないうちに目的地の森に著いてしまった。

「ねえカリス」

『む？なんだ？』

「をかしたいって言っていたけど、今回は狩りはするの？」

『手頃な獲がいればするつもりだが、いないならいないでも構わないな』

「手頃な獲っていうとある程度大きな魔とか？」

『大きさは別に関係ないな。それなりに強ければそれでいい』

「強さか……」

そういう基準なんだ。あ、そういえば神界でリョウセン様と観戦してた蛇と竜の魔も歴戦の猛者ってじだったね。あの魔達をカリスが仕留めたのも強かったからなのかな。

「強い魔を狩るのはやっぱりレベル上げのため？」

『まあ概ねそうだな。あとは戦いの勘が鈍らないようにというのも理由だな』

確かに弱い魔ばかり狙ってたら経験値の効率も悪いし、自分と同等の相手だと負けちゃうなんてことにもなるもんね。

『クルスも狩りを日課にした方がいいのではないか？』

3歳児になんてこと要求するのこの鳥は…………いや、でもカリスの言う通りかもしれない。シェーラ達がいるから安全だけど、ずっと守ってもらってたらいざという時に足手まといになっちゃうよね。それに……家の人に限ってあるわけないんだけど、大切なみんなを目の前で失うなんてことには絶対になりたくない！

……魔法の練習はしているけどけないとどうしようもないし、何より実戦で使えなきゃ意味がないか……。

「うん、帰ったら始めてみるよ」

『そうか、良いことだな』

さすがにカリスと同じようにとはいかないけれど挑戦だけはしてみよう。

『クルス、一旦近くの木にとまるぞ』

「え？うん」

そう言うとカリスは真下にあったカリスの何倍もの大きさがある木のてっぺんに著地した。

「どうしたの？」

『飛んで探すのもいいのだが、そうすると地面の下の獲を見逃しやすいのでな。一度とまって地面の下を探知するのだ』

「地面の下にいる魔も狩りの対象なんだね……」

ミミズとかと戦うのかな？

『ああ、々な経験があった方が戦うときに有利だからな。それに地下深くに地竜などの竜種が眠っていることもあるから探知しておいて損はないぞ』

「そうなんだ」

『ちなみにこの世界のミミズの多くは進化していくと地竜を飲み込む巨大なワームになります』

うそん……。

『まあ、そうは言っても人間の國が近くにあるくらいだからここにはいないだろうがな…………うむ、やはり獲となりそうな者はいないな』

あ、もう探知したんだ。

『待たせたな、飛んで探し始めるぞ』

「うん」

それからしばらくカリスと一緒に探したりティオに探してもらったりしたが獲になりそうな魔を見つけることはできなかった。

「坊っちゃま、そろそろ勇者たちがダンジョンに到達するので私達も向かいましょう」

森全域を一通り探し終えたところで時間になったようでアマリエが話しかけてきた。先ほどまでカリスの背中に寢そべりながら頬ずりをしていたはずだが服も髪も全くれていない。そして當然のように勇者たちの向を把握しているが俺はもう驚かない……はず。

「うん、わかった。じゃあカリス、ここまでだね」

『そうだな、獲はいなかったが一緒に探すのは楽しかったぞ』

「本當？俺も楽しかったから一緒の気持ちでよかったよ」

「……はっ！呑気に寢てたらご主人様とカリスがさらに仲良くなってます～！？」

あ、ノイントやっと起きたんだ。

「ではカリス、あちらの方角に向かってもらえますか？」

『うむ、承知した』

アマリエの指し示す方向に飛ぶこと5分、ダンコーツの城壁が見える辺りまで戻ってきた。

「ここですね」

眼下には甲冑にを包んだ騎士に囲まれながら談笑に勤しむ様子を見せる勇者達の姿と、不自然にアーチ狀の草で幾重にも覆われた、いかにも何かありますよとアピールしているり口らしきものがあった。

「あのり口がダンジョン？」

「ええ、あれで間違いないでしょう」

何ともまあ分かりやすい……。

『ダンジョンというものは生かられ出る生命力を糧にして長していくので食糧となる生を呼び込む目的であのように分かりやすくしているのです』

せ、生命力！？それってったら不味いんじゃないの！？

『生命力といってもから溢れ出すオーラのようなものですよ。そうですね、例えるなら植の合が近いでしょう。植も生が排出した二酸化炭素などを糧に長しますが二酸化炭素を排出した生の生命維持に影響はありません。ダンジョンもこれと同じような生態なのです』

な、なるほど……。

『もっと簡単に言えば生の排泄ぶ────』

わーーっ！もう十分わかったから！

『なら良かったです』

なんでいきなりその例えを出すの……いや分かりやすいけど……。

『ちなみにダンジョンは生かられ出る生命力が糧になると言いましたが、死に限り生自を吸収することも可能です。というよりその方が得られる生命力も大きいです』

あ、やっぱり殺す方が効率いいんだ。

『はい、そのためダンジョンは眷屬となる魔を召喚して侵した生を襲わせたり罠を仕掛けたりして殺した生を吸収するのです』

そうなんだ……でもってきた生全員を襲ってたら誰も來なくなっちゃうんじゃないの？

『そうならないようにダンジョンは侵者に利益を用意します。人間でしたら貴重なアイテムでき寄せ、魔でしたら良質な魔石を持つ魔やダンジョンの本であるダンジョンコアの魔力でき寄せるのです。余談ですが、ダンジョンコアを殺すと大量の経験値が手にります』

旨味のある食蟲植ってじなんだね。

『なぜ植で……って私が例えたんでしたね』

俺がティオと話している間、勇者達は先頭の騎士から何か説明をけていた。上空でカリスが滯空しているにも関わらず誰も気が付く気配がない。勇者達の服裝は先ほどの制服とは異なり、所々に金屬を使った耐久と機を兼ね備えたような鎧を著ていた。またそれぞれ武を攜帯しており、例の勇者君に至っては豪華な裝飾の付いた寶庫に眠っていそうな剣を帯剣している。

しばらくすると數名の騎士がし離れたところで野営の準備をし始め、他の騎士は勇者達を連れてダンジョンへとぞろぞろっていった。

「私達もりましょう。カリス、降りてください」

『うむ』

カリスは音もなく地面に著地すると羽を片方広げて俺達が降りるところを作ってくれた。

「ありがとうねカリス、乗せてくれたことも。すごい楽しかったよ」

「ありがとう～カリス～。おかげでスッキリしたよ～」

「ありがとうございます。……その、良い羽を持ってますね……」

『別にこの程度大したことじゃないから気にするな……まあ、悪い気はしないがな』

俺は口々にお禮を言われてし照れくさそうにしているカリスの可さに頬を緩ませながら地面に降りた。降りてみて気が付いたが、この辺りは背の高い木々に囲まれている影響で晝間だというのに夕暮れのように薄暗い。

でもこの暗さも案外悪くないね。日差しがなくて涼しいから晝寢とかするのによさそう。

そんなことを考えているうちに小さくなったカリスが俺の肩にとまってきた。

「坊っちゃま」

「ん？」

「階段があるかもしれないので転ばないように手を繋ぎましょう」

「ぅあ、うん……」

ただの善意で言ってくれたのだろうが先ほどの地下での恥ずかしい記憶を思い出してしまいし顔が熱くなってしまった。手はちゃんと繋いだ。

「り口って結構大きいんですね～」

ダンジョンのり口まで近づいてみたがノイントの言うように俺達が並んでも余裕でれるくらいには大きかった。アマリエと一緒に足を踏みれてし進むと下に続く階段があった。

この辺りは人間を想定した造りにしてるのかな。

「ここを降りるとダンジョンが始まります。魔はいますが私達には気が付かないでしょう」

いよいよダンジョンか……どんなところなんだろう。

昂る気持ちを抑えつつ階段を降っていくと開けた場所に出た。

「あれ？意外と明るい？」

地下ということで暗いのかと思っていたがダンジョンは照明でも點けたかのように明るかった。

『暗いとりが悪いですから』

あ、なるほど。

明るいことで辺りを見渡すことができたのだが……こちらは予想通りというか、土壁しか視界に映らなかった。

まあ地下だしね。ダンジョンってこういうものでしょ。

「勇者達は既に戦闘を開始しているようですね。こちらです」

「前衛は後退しろ！魔法隊撃てーっ！」

「───"火球ファイアーボール"！」

「───"疾風ゲイル"！」

「───"炎弾フレイムショット"！」

「───"土杭アーススパイク"！」

「「「グギャァァァァァ！」」」

一人の騎士の指揮のもとに戦う勇者達はとても統率されており、前衛の勇者が魔を引き付け、後衛の勇者が魔法を一斉に放つという戦法は襲い來る獣やゴブリンなどの魔の群れを危なげなく倒していた。

「よし、全て倒したな。ドロップアイテムを回収したらすぐ進むぞ」

勇者達は騎士の指示をちゃんと聞いているようで面倒くさそうな顔をしながらも回収に向かっている。

うーん……なんというか、その……。

『完全に腑抜けているな』

そうなんだよ。安全に倒せているからか全く張がないんだよ。さっきの戦闘中も近くの友達と話すような人が出ていたし、前衛に至っては魔をおちょくるような行をとっていたからね。ううん……もっと人數のパーティで戦うとばかり思ってた。

《そういえばダンジョンの魔って死ぬと消えるんですね～》

あ、確かに。

ノイントの言葉の通り魔の死があった場所にはの一部だったり持っていた武などが落ちていた。今のノイントは実化を解いているので念話だ。

あの騎士がドロップアイテムって言ってたけど、これもダンジョンの仕業？

『はい、分かりやすい果があれば人間は危険を顧みずに嬉々として飛び込んできますから』

言い方……。

《魔が倒した場合も落ちるの～？》

『落ちますが大抵無視されるのでコスト削減のためにダンジョンが回収しています』

ダンジョンもやりくりしているんだね。