《最強家族のまったりライフ》58話 決意と覚悟とユニークスキル
「おい白峰!お前まで逃げていたら示しがつかないだろ!」
「そ、そんなこと言ったって勝てるわけないじゃないか!」
てっきり殘って騎士達と戦っているのかと思っていたが、どうやら本命勇者君も他の勇者と一緒に逃げ回っているようだ。顔をあまり覚えていないので判別が難しいが集団の真ん中辺りにいる豪華な剣を手に持った勇者がそうだろう。
「坊っちゃま、これからどうなさいますか?」
「どうって……あ、もう偵察は完了したんだったね」
階層主はし近づけば悲鳴を上げて逃げ回る勇者達に面白さを見出したのか、勇者達をし追いかけては足止めする騎士達を待って適當に相手をし、またし勇者達を追いかけては騎士達の相手をし……という行を繰り返していた。そのため、瀕死というか既に出死している先行した勇者を除いて死人は誰一人出ていなかった。それも時間の問題ではあるが。
「でも外界と隔絶されてるんだからここから出るにしてもあの階層主が死ぬか勇者達が全滅しないといけないんじゃないの?」
ちなみにアマリエは時折勇者達の方に目をやりながら俺の頭をでることに集中している。俺としては気持ちいいので特に何も言ってない。
「普通ならそうなのですが私の時空魔法で次元を繋げば出することができますよ」
「えぇ……」
なんでダンジョンが制限を設けてまで作った部屋を軽々と突破できちゃうの……。
「ですから坊っちゃまのお好きなようにすることができますよ」
「うーん、それなら……」
「白峰!お前は主神様から加護をいただいたんじゃないのか!今のお前は主神様の加護を持つ者として相応しいと言えるのか!?」
「っ!?お、俺は……」
それなら帰ろうかと言おうとしたが上の言葉にハッとして立ち止まった勇者君を見てし思いとどまった。
……主神じゃないけど。
「主神…?」
「本の主神じゃなくて偽裝された下級神の加護だけどね」
「あ、そういえば見せていただいたステータスにありましたね…………ん?もしかして先ほどの神託はその件に関してということでしょうか?」
まあ狀況的に分かるよね……。
「うん、そうだよ。神様が怒ったのはその下級神に対してだったんだよ」
「そういうことでしたか……」
先ほどの一幕の経緯について一応納得してくれたようだ。しかしイリス様が許されたかどうかは定かではない。
アマリエに説明している間、勇者君は逃げる他の勇者を追わずに立ち盡くしていたが、不意に顔を上げると足止めの騎士と戯れている階層主に向かって進みだした。
おお!語の主人公っぽい!
「白峰……」
「あなたの言う通りだ。今の俺は主神であるヴェーニャ様の加護を持つ者として相応しい姿じゃない。これではヴェーニャ様に加護の恩を返すどころか悪評を招きかねない」
恐怖から立ち直ったのか自分に言い聞かせるようにそう話す勇者君の表からは決意のが見てとれた。
……かっこよく決めてはいるんだけど対象がヴェーニャなんだよね。
『ちなみに上の説得のおかげでヴェーニャへの信仰心が上がっているようです』
お、じゃあノイントが改造した加護の効果が上がるのか!
『実際の効果についてはまだわかりませんがそういうことです』
《上がいい仕事をしましたね~》
『私達や天界の神にとっては、という注釈がつくがな』
本人達の自覚がないまま自させられるってやっぱりノイントのスキルはえげつないね……。
勇者君は足止めをしていた騎士達の隣まで行くと剣を構え、勇者君の変化に困して逃げる足を止めている他の勇者達に聲をかけた。
「みんな!立ち向かうのは怖いかもしれない!でもこいつを倒さなければ明日は來ないんだ!俺達にはこの世界を救うためにヴェーニャ様からもらった力がある!みんなで力を合わせればあいつを倒すことだってできるはずだ!」
あれ?勇者の力って次元を超える影響とかじゃなかった?
『そのことは周知の事実なので知っているかと思いますが……まあその場のノリと急上昇中の信仰心によるものでしょう』
ああ、なるほど。
勇者君の言葉は彼らに響いたようで徐々に恐怖に染まった表から覚悟を決めた表へと変わっていき、一人、また一人と勇者君の隣に並び立つ者が現れていった。階層主はその間くことはせず律儀に待ってくれていた。
変……ではないけどお約束な展開を待ってくれる階層主に俺の好度は1上昇した。
《ちなみに最大はいくつですか~?》
14。
《何でそんな中途半端なんですか~……》
「み、みんな……」
やがて全ての勇者が階層主に向かい合い各々の武を構えた。騎士の方もそれに化されたのか同じように武を構えている。階層主は自に歯向かわんとする矮小な人間の群れを見渡すと目を細め二ヤリと牙を見せて笑った。そんなお約束な悪役的なことまでしてくれる階層主に俺の好度が2上がった。
『何だか急上昇していないか?』
《あれだけで好度を上げる階層主にしジェラシーが~……》
「白峰、お前が指揮をとれ」
「隊長……」
「主神様の加護に相応しくなるんだろう?今のお前ならできるはずだ」
「っ!!ああ!任せてくれ!」
それだけ言うと上は他の騎士のところへ向かい同じように剣を構えた。
《そういえばもう死んじゃってますけど最初に吹っ飛ばされた勇者のことに誰もれませんね~》
……それは思ったけど多分この後の決め臺詞的なところで「死んだあいつの仇をとろう!」とか言うんじゃない?
『ですがその死に誰も見向きもしませんよ?』
気のせいだよ…うん。きっと辛い現実をけれられないだけなんだよ。
「みんな!あいつを倒して……必ず全員・・で生きて帰るぞっ!」
「「「おおおおおっ!!」」」
これ完全に忘れてない!?
「正義は我にありジャスティスロード!風の如くフィジカルウィンド!」
勇者君がそのユニークスキルの名を口にすると勇者君のが唐突に淡く発し始めた。続いて発された2つ目のユニークスキルは勇者君の周りに風を起こした。
「行くぞっ!」
「「「おおーっ!」」」
勇者君を先頭に前衛の勇者と騎士が階層主へと殺到し、後衛は皆魔力を集中させて各々魔法の発準備にった。
「あれがステータスにあったユニークスキルですか」
アマリエもちょっと気になったのかぽつりと呟いた。
「ねえティオ、あの勇者のステータスはどうなってるか分かる?あ、アマリエにも教えてね」
「ありがとうございます」
心なしかアマリエので方が髪を梳くようなで方に変わった気がするがそれも心地よいので気にしない。
『かしこまりました……鑑定したところ、用のステータスが50上昇していました』
…
…
…
「…え?」
「それだけですか?」
予想を遙かに下回る強化に揃って數秒ほど直してしまった。
『はい、スキルレベルも関係しているとは思いますが、どうやら全ステータスが上昇するわけではなくランダムなステータスが一つ上がるようです。それと強化の値ですが、一人につき1上昇するのではなく、10人、100人、1000人というように桁が上がるのに合わせて上昇するようです。つまり賛同する者の數が10~99人までは同じ値で強化されます。100~999人も同様です』
まだレベルが1なのもあるだろうけど、まさかガチャ要素があるスキルだとは……。というか値の上がり方が桁の數で上昇するとか特殊すぎる……。
「ちなみになんだけど、用のステータスってこういう時どのくらい重要になるの?」
『用値が高いと、戦う際にイメージした通りにをかすことができるためかなり重要なステータスとなります』
そうなんだ。引きは良い方なんだね勇者君。
『ただ、強化の値が低いことと勇者のステータスの中で最も低いステータスが用の値なのでおそらく用貧乏のような強化になっているかと』
「そう……」
『歯がゆいというか、口惜しいというか……』
「……ではもう一つ発している風の如くフィジカルウィンドとやらはどうでしょうか?見たところ追い風を発生させているようですがステータスにも何か変化はありますか?」
正義は我にありジャスティスロードの実際の効果に一様に何とも言えない雰囲気になってしまい、アマリエが次のユニークスキルにみを託した。
『いえ、風をるだけですのでレベル1ではあの程度が限界でしょう』
まさかのフルパワーだった。
「ぐあっ!」
「うっ!」
「くっ、隙ができた……!今だよ白峰君っ!」
「うおおおおっ!刃ライトスラッシュ!」
階層主との決死の攻防の末、幾人かのダメージと引き換えにできた隙を突き勇者君が最後のユニークスキルを発した。階層主の腹部目掛けて勢いよく放たれたの刃は階層主が振り向く前に命中し、そして……
「……傷がついてる!いけるぞ白峰っ!」
今は亡き勇者が傷つけることすら葉わなかった剛を切り裂き腹部に赤い線を殘した。
「お?これは強いんじゃ……」
「いえ、勇者の様子を見てください」
「はあっ、はあっ……」
アマリエに言われて視線を勇者君に移すと勇者君は片手を膝に置き荒い息を繰り返していた。
『あのスキルは魔力を消費して放たれますが、消費する魔力が割合消費のようですね。最大値の77%消費されているのでもうほとんど殘っていません。立っているのもやっとでしょう』
ラッキーセブンなのに全然ラッキーしてない……。
俺の髪を梳くアマリエを見てみるともはや虛無を通り越して笑みを浮かべており、カリスとノイントは揃って沈黙を貫いていた。
「えっと……ランダムなステータスをほんのし上昇させるスキルと追い風で涼しくなるスキル、階層主に淺い傷をつけられる一撃必殺のスキル……ね」
まとめてみたがかなり酷いことになった。仕方ないんだろうけど、もうちょっとステータスの分のリソースをスキルに割いても良かったんじゃないの……?
「坊っちゃま」
不意にアマリエがでる手を止め俺を抱き寄せた。
「な、なに?」
「帰りましょう?」
「……そうだね、帰ろっか」
俺はアマリエの提案に是非もなく頷いた。
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