《S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜》第31話 『帰り道はご用心』
「ここまでくれば安心ですね。そういえば、グレンダさんも冒険者っぽいなりをしていますね」
「え、ええ。まあ、そうですわね」
迷宮を抜けて、私たちは一面に広がる平原へと出た。
日はとっくに沈んでしまい、一面は真っ暗な暗闇に染められている。
ここはアルガルベ王國、辺境に近い東の平原である。
近隣國との繋がりがあるためか、行き來する貴族の観客や迷宮を目的とした冒険者らが多い。
なんせ、アルガルベ王國は魔の大陸の最前線であり防衛が最も強化されている國なのだからだ。
だけど魔の大陸から流れてくる濃度の濃い黒魔力は遮られず、王國にある神殿や窟に潛むモンスター、建造自に変異が絶えずに起こってしまう。
それによって生まれてしまうのが迷宮(ダンジョン)と呼ばれる場所である。
「魔道士をやっていまして……あ、あの失禮ですけどタメ口でも宜しいでしょうか?  命の恩人に対してあまり他人行儀はいけないかなぁと……」
「うん、別に構わないよ」
ネロは気安く承諾してくれた、どうやら私には遠慮は必要ないらしい。
ますます使い易いタイプの人間である。
この人はグイグイ迫られるのが嫌いで、すでに同等の相手と接していたい格なのかが分かる。
「そう!  それじゃ馴れ馴れしいようだけど、ありがとねネロさん! キャピ」
腰に手を當てながら腰をつきだし、ウィンクからのキュートスマイル。
アイドル時代で観客らのハートを打ち抜き、虜にしてやった全力の可いポーズを披してやった。
これならこの人も私にイチコロさ。
「……ハハ?  なんなのソレ?」
苦笑いしながらネロは平然そうに疑問を口にした。
まるで一ミリもじていないような様子だ。
それを見た途端、私は瞬時にありえないと思い込み同時に恥心というものに襲われてしまう。
(な、な、どういうことなの!?)
私はポーズを披し、直したまま冷汗を流す。
アイドル時代から男という男の鼻の下をばさせてきたこの奧義に、目の前の男はノーリアクションなのだ。
「あ、ああ、ごめん。どう致しまして? (こうかな)きゃぴっ」
軽い気持ちで返してきたし。
ぎこちないけど何故だろうか、凄く似合っている。
男のクセに可いのだ。
男裝しているの子のように健気で激カワ。
思わず自分自が鼻の下をばしてしまいそうだ。
ナニその才能?
(え、可いだって……噓でしょ?  なにこの男、男の娘!?)
「ん、そんなに見つめてどうかしたの?」
ネロは挙不審な行を取り始める私に、ニコリと微笑みながら訪ねてきた。
それを見た私は頰を赤らめながら、目を颯爽と逸らしてしまう。
「いえいえいえいえいえっ!  な、なんでもないですよ!!」
とっさに口にしてしまった敬語、これじゃ先ほど敬語を使わなくてもいいかと聞いた自分が馬鹿みたいだ。
し驚いた顔を見せてきたけど、ネロは特にそんなに気にせずに続けた。
「えっと、そうなの?  それなら良かった。だけど合でも悪かったら言ってね、薬草なら有り余るほど持っているからさ」
「ありがとね……だけどいいの。ちょっと悪い出來事を思い出しただけで。別に気にしなくてもいいんだよん☆」
「そ、そう?  それじゃ、乗合馬車まで案するから、もし疲れたりしたら言ってね」
「はい!  きゃぴ」
あからさま私は揺を隠しきれない様子だったけど、なんとかポーズをとってごまかす。
この人の笑顔を目にするだけで、がドキッとしてしまったことは口が裂けても言えない。
むしろ認めたくない自分が、心の中のを邪魔をしていた。
どうせこの男も一目で私に惹かれ、わざと気にられようと優しい行を取っているのだ。
どうせこの男も、私のこの満なを目當てにしているんだい。
私って罪人!  きゃぴ!
※※※※※※
私たちの乗っている馬車が王都に繋がる街道を走っていると、急に後方の車が壊れてしまった。
原因を確認するためにネロが外に出る。
私も続いて出ようとしたその直後、真剣な表でネロは手で私を制しながら小聲で言った。
「待って!  グレンダさんはそのまま馬車から出ないで」
「はい?  どういうこと……?」
壊れた車が目にる。
なんとそこには、弓矢が突き刺さっているじゃありませんか。
しかも、それが數本もだ。完全に素人の腕じゃないわねコレぇぇ!
ネロの言葉の意図を大察した私は無言で馬車の扉を閉め、顔を青ざめながら大人しくこまった。
「盜賊じゃああ!!?」
前方で馬を走らせていた者のジッちゃんも襲撃に気づき、すぐさま馬車の中に隠れた。
者と目が合う、お互い青ざめた顔だ。
一方、外に出ていたネロは街道を囲んだ周囲の森にむかって大聲でぶ。
「隠れていても無駄だよ!  僕らを待ち構えている全員の位置はもうすでに察知している!  大人しく姿を現せ、さもなければ纏めてここを………」
ネロは鎧の裝備を覆っていゆローブを緑の捲ると、中に潛んでいた短剣を抜き取った。
瞬間、一本の矢が森の中からネロのに目掛けてられる。
(……なっ!)
私の目じゃ追えないぐらいの速さが、ネロにめがけて接近する。
ガキン!!!
命中!  そう思った瞬間に矢は、ネロの眼前から消滅していた。
正確に言うと消えたのではない、ネロの振った短剣が弾いたのだ。
それも、目ではまったく追えない速さで。
弾かれた矢は宙を舞いながら、馬車から離れた地上に向けて落下し地面に突き刺さる。
矢の刺さった地面が真っ黒に変してしまう。
ここからでもそれがハッキリ見えた私は息を飲んだ。
嫌な臭いがした、矢から漂う異臭である。
「な、なんなのコレ!?  うぇぇ」
思わず吐きそうになった。
馬車の者も同様に、臭いに耐えきれず鼻をつまんでしまう。
「……猛毒だよ、それもかなり灑落にはならないヤツのね」
矢を弾いたネロが疑問に思う私たちに答えてくれた。
すると森から突然、數人もの影が飛び出してきた。
目を凝らしながらその姿を見てみれば、深く考えなくとも『盜賊』だと明確に分かった。
思わず私は顔を青ざめてしまう。
三十人もの大人數が殺傷力のある武をそろって手にしているのだ。
「ひゃっひゃっひゃ!  なーんだあのガキんちょ? 自ら死を選んだのかぁ?」
「さあな!  兄貴の弓矢が弾かれたのはきっとマグレだろうな、でなきゃ死んでいるはずだ!」
盜賊らが下衆い顔で唸ってきて、それを気持ち悪く思いながら見ている私がいた。
「ひゃわわわっ……」
ヤバイ、恐怖で腰が抜けそうだ。
馬車の中で大人しく座っているけど、とても立てそうにないぐらい怖い。
「……安心してグレンダさん。あとはボクに任せて大人しくそこで隠れていてくれ。できるだけすぐに終わらせてくるよ」
私を安心させるためか、そう言い殘しながらネロの向ける目線が鋭く変化した。
まるであの可さが噓だったかのようだ。
(あまり格好つけないでよ……私が見ているからって。この男は……)
ネロに対して呆れてしまう自分がいた。
どうせ一人ではあんな大人數を相手にして勝てるはずもないのだ。
いくらモンスターを一人で全滅させたとのろで、手慣れているかのように武を構えるヤツらを相手に、到底勝てるはずがない。
もし捕まったりしたら私、どうなっちゃうのだろうか?
可い容姿とこの満なを求められて、きっと、そういう系の相手にさせらてしまうのだろう。
想像するだけで震いしてしまう。
そして、その後に奴隷商人に売られて私は永遠に奴隷としての一生を終えてしまうのだ。
そのような映像しか浮かんでこない。
なんて不幸なのだろうか……ああ、そんな生き地獄が待っている未來ならまっさきに安楽死したい。
「あ、幸運だ。ここに丁度いいぐらいの石があった」
私が一人で嘆いていると、ネロは呑気そうに地面に顔をむけた。
そこには丸い綺麗な石が落ちている。
いたって普通の石が、ネロの目の前に落ちているのだ。
特になんの意味もなく落ちている石が。
(へ?)
ネロはそれを拾い上げ、舐め回すように表面を確かめる。
ちょうど良かったのか、ネロは笑顔をみせながら両手でその石を握りしめた。
「よし、勝った」
嬉しそうなネロとは裏腹に周囲の盜賊らは、彼のみせるその笑顔に凍りつく。
途端、ネロの手に握られた石は森にめがけて適當に投げ込まれてしまった。
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