《S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜》特別編 「ネロvs休暇の騎士」
前書き
ストックが全て消えたことにより悲しい思いで特別編を執筆させてもらいました。
とりあえず再現できるよう頑張ります泣
ーーーー
ファンブル大陸アルガルベ王國、とある高原へと訪れにきた、黒い鎧を全に纏った青年が一人で剣の素振りを繰り返していた。
雲ひとつない快晴な空。
青年にとって鍛錬するにはうってつけの日和、誰も居ない空間がさらに彼のやる気をださせていた。
一方、ギルドの依頼で偶然その場を通りすぎようとしていたネロは足を止め、完璧なまでに磨かれた青年の剣技と型を呆然と眺めてしまっていた。
「……すごい」
鎧を著ながらも、しなやかなきで繰り出す人間離れした技、ここまで伝わるピリピリとした覚。
自分では到底あのきはできないだろう、ネロは青年に不思議と魅了されていた。
「ん、そこに……だれか居るのか?」
し離れた場所で立ち盡くしていたネロへと、青年は意識を向けた。
気づかれたことにネロは肩をビクリと震わせてしまう。
兜をかぶっていてため表は見えないが、ネロはなんとなく青年の鬼のような形相を思い浮かべた。
あれはアルガルベ王國の騎士の鎧で、近頃あまり良い評判は聞かないからである。
「あ、お前っ………!」
剣をしまい、青年は驚いたような顔をするネロへと早歩きで歩み寄った。
相當怒っているのだろうか、ネロは覚悟を決めながら瞼を閉じてしまう。
だが、意外にも青年は優しそうな聲をかけてきた。
「え、え~と。そこのお前、暇そうに何をしているんだよ?」
「いえ……あまりにすごい剣劇にして、重々しそうな鎧なのににいていて疲れたり、痛くなったりしないんですか?」
流れ的にも話題を振らなければならない狀況に揺を覚えてしまうネロだったが、先程の鍛錬を眺めていて、ふと思ったことを聞いてみた。
「痛いねぇ~、そりゃ誰だって最初は痛みをじたり苦しくなったりするけどさ。子供から慣れておけば、どうって事なくなるよ」
あっさり言ってくれるが、いくら子供であろうと先程の剣技の會得のためだけに続けられる自信がネロにはなかった。
ましてや自分は非力なので、鎧をつけるだけでも疲れそうだ。
「はは、凄いんですね……」
しお世辭っぽい苦笑いだが、ネロ自は青年のきに本気で驚いていた。
「俺の名前はユウゴ。アルガルベ王國の親衛騎士団の隊長を務めさせてもらっている。よろしくな……ネロ」
「あ、うん。よろしくお願いしますねユウゴさ…………え?」
言葉に詰まってしまったネロは、たった今ユウゴの発言にとてつもない違和をじたのだった。
名前だ、どうしてこの青年は自分の名前を存じているのか。
先ほど名乗った記憶が一切ない。
直接本人に理由を尋ねてみよう。
「あのっ」
「そんじゃネロ君よ、ちょうど退屈してたところなんだけどよ。一騎打ちでもしないか?」
途端、ユウゴは揺するような聲でネロの言葉を遮ってしまう。
流石のネロも不審に思ってしまったが、ユウゴが兜を被っているせいで表が伺えない。
もう一度、もう一度だけ尋ねてみよう。
なにか良からぬ事でもあるんじゃないか?  と嫌な予がしてくるが、ネロが再び聞こうとしたその瞬間。
邪魔するように木剣が顔に投げつけられる。
驚きつつもネロは木剣をけとった。
「ルールは先に一本とったら勝ち、ちと危ないから寸止めな」
ユウゴはネロの了承を待つことなく一騎打ち前提で説明をしだす。
「こっちはいつでもオーケーだから、準備ができたら言ってくれよ」
準備どころかコッチの話をちっとも聞こうとしないんですけどぉ、とツッコミたい衝を抑えながらネロは木剣に目を落とす。
斷るのは簡単だが、今のところフィオラやリンカの力に頼りっぱなしの不甲斐ない自分にはいい機會なのでは?  と罪悪に蝕まれているが直接訴えてくる。
確かに思い返せば本來の自分の力量や技量なんて、たかが知れている。
トレースにだって勝った気ではいない。
もしまた、剣をえる事があればきっと自分はきっと負けることになるだろう。
何故なら、ネロにはいま憎悪という要素が不十分なのだからだ。
あの日、あの瞬間、トレースに決闘を持ち込まれた時『何か』に背中を押されたような覚がした。
一度だけではない。
故郷が魔王軍に滅ぼされた時、同じような覚を前にじていたんだ。
復讐心、すなわち憎悪。
傷を負ったエリーシャが眠るベットの前で誰かが囁いたような気がした。
それが不思議に嫌な気分にはならなかった。
斷るのは簡単だった、だが僕は踏み出してしまったのだ。
だからこそ、その責任から逃れないためにも自は強くならなければならない。
エリーシャにも傷をこれ以上は負ってしくない、たとえ魔王と対峙する使命であっても。
「お願いしますっ」
渡された木剣を両手でかまえながら、準備萬端の合図をユウゴに告げた。
その面を見たユウゴは呆気にとられたような聲をらしてしまうが、すぐにネロの変化を快くけれユウゴ自も木剣をかまえる。
「泣いたって知らねぇぞ!」
ユウゴが地面を蹴って全速力でネロとの間合いを詰めたその瞬間、戦いの火蓋は切られるのであった。
(速っ!)
鎧を著ているとは思えない速さで接近してくるユウゴに翻弄されながらも、ネロはありったけの勇気を振り絞って前に踏み込んでみせた。
真上から振り下ろされる木剣、タイミングを見計れないネロだが運任せで適當に避けてみる。
「うおっ!?」
すると、運良いことにユウゴの攻撃を回避したネロは焦る。
(寸止めルールどこ行ったの!?)
ユウゴの振り下ろした木剣の風切り音がエグい。
聞いて分かるが、きっと重々しいんだろう。
唾を飲み込むながらも、ネロは隙のできたユウゴの背中にめがけて木剣を打ち込んでみせる。
だが、鎧のれ合う音とともに瞬時に振り返ったユウゴによって木剣が下からの斬り上げで弾かれてしまう。
あまりの威力に手の平が痺れてしまうネロだったが、木剣を持つ手が頭上まで上がってしまったことに気がつく。
(防ぐための攻撃だけで、ここまでの威力がっ)
「これで、終わりだ!」
勢を整えるよりも先にユウゴがすでに次のきへと、切り替えていた。
木剣の先端を全力で額に叩きつけようとする死へのい、『突き』だ。
命中すれば溜まったもんではない。
そう確信しながらネロはを回し、回避を試みようとする。
しかし、間に合わない。
ユウゴの木剣はすでにネロの鼻の先という僅かな距離まで達していたのだから。
ーー!!   
死ぬ。
信じられない速度に目を疑いながらも、潔く先の良からぬ展開になることを覚悟すると……。
「どうやら俺の勝ちのようだな」
ピタリと、ユウゴの木剣がネロの額に當たることはなかった。
ルール通りの寸止めである。
すぐ目の前には、攻撃をギリギリで停止したユウゴの兜があった。
そのあまりの勢いに押されたネロは、地面にもちついてしまう。
まさか瞬殺されるとは。
勝てるイメージはまったく浮かんだりはしなかったけれど、ここまで圧倒されるだなんてネロ自ショックだった。
まあ、リンカとの一騎打ちで多は慣れていっている敗北である。
それに、ユウゴの対応の速さは簡単にリンカを凌ぐものだろう。
流石は國王の命を任されるほどの騎士と言うべきか、すべてのきにおいて無駄な要素が一切ないことにネロは心させられていた。
「今のお前のき、けっこう良かったぞ。もう一回やろうぜ?」
「良いき?  まさか、自分は無我夢中でしたよ」
「もしそうだったとしても、まさか避けられだなんて思わなかったぞ。一撃で終わらせるつもりの全力だったけど、正直焦ったんだぜ?」
えぇ、と顔を青ざめるネロ。
あの最初の攻撃が本気?  道理でありえないぐらいの衝撃が伝わってきたんだ。
「嫌なら別にいいんだぜ?  別に強要する気はまったく無いし」
気を遣いだすユウゴにネロは目を細めた。
(さっき意見を聞かなかったのに、どの口が言えるんだろう……?)
だけど、流石にここで止めるのは勿ないと思ったネロは、ゆっくりと頷いた。
「もう一戦、お願いします」
「おう、コッチこそよろしくなネロ」
ユウゴに手を差しべられ、それを手に摑み持ち上げられるネロ。
すぐさま互いに距離を離し、最初と同じ勢で見つめ合う。
「そんじゃ、手は抜かねぇから覚悟しろよな」
「はい!」
遠慮することなく二人が同時に地面を蹴り、握られた互いの木剣が衝突するのであった。
ーーー
夕方になり、ちょうど二人は大の字になって地面から空を見上げていた。
力を使いきったせいか、互いはすでに息切れしてけない狀況である。
特にネロの方が大量の汗を流していた。
「……もう、だめ。ギブだ」
「はぁ……はぁ……僕も同です」
まさか、こんな遅い時間になるまで続けていただなんて、空を見上げた二人は驚きを隠しきれなかった。
そうなるまで夢中に剣を振り続けていたのだ。
「へへ、結局は俺に一本も打ち込めなかったなネロ」
「悪かったですね、弱くて」
々、拗ねた様子で言うネロ。
ユウゴはそう言うが、彼自はかなり揺していた。
僅かに手を抜いたりしていたら、負けていただろう。
何度も木剣をわっていくうちに、ネロの相手のきを観察して學習する能力が異常なものだったのだ。
同じ手を使ってしまえば、大きな隙をこじ開けられるような気がした。
つまりネロには通じないのだ、同じ手が。
(恐ろしい奴だな。あんなにヒョロかったのに)
過去、同郷であるかつての友人の姿を浮かべながら、ユウゴは空を見回す。
ーーまだどうやら、向こうには行っていなかったようだな。
「なぁ、ネロ……あのさ」
と、聲をかけようとしたユウゴだったが。
隣を見てみると仰向けの狀態で眠ってしまったネロの姿があった。
小さな鼻息を吐くネロを見ながらユウゴは苦笑いして、腕で勢いをつけながら地面から立ち上がる。
「じゃあなネロ、またな」
荷をすぐさま整えたユウゴは気持ちのよさそうに眠るネロを見下ろしながら、一言だけそう告げる。
「一人にしていくのはしだけ心苦しいが、これから大切な用事があるから……仕方ないか」
薄く微笑みながらもユウゴはネロの周辺に結界を張り、自的に魔などを遠ざける魔を付與する。
一通りの作業を終わらせると、ユウゴは心殘りないような顔つきで沈んでいく太を見上げる。
そしてまた、にめたとある野を達するために進むのだった。
彼が思い返すのは、かつて平和な日常に包まれていた自分自と、大切な友人である二人の兄妹の姿であった。
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