《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第1話 異世界召喚
とある高校の放課後。クラス全員の殘った教室では、生徒達が返卻されたテストを見せ合いながら、喜んだり、絶したりしていた。
「うわぁマジ最悪……志校のレベル、下げなきゃ駄目かな」
(次勉強すれば大丈夫だって!)
「うお!? 最後漢字ミスってなきゃ100點じゃねーか!」
(お前そういう詰めの甘いところあるよな)
「赤點だが、大丈夫だ。問題ない」
(いや……頑張ろうぜ)
 クラスメイト達のそれぞれの臺詞は、もちろん俺に対して放たれたものではない。これは最近の俺のトレンドであるシャドー會話。クラスの奴等の會話に心の聲だけで參加するという、暇潰しだ。え、楽しいかって? もちろん虛しい。
 俺は自分の七瀬素空(ななせすぞら)と書かれた答案を見つめる。オール90點臺のテストを、俺だって自慢したい。だが、俺はクラスで仲の良い人が一人も居ないという、いわゆるボッチ。認めたくは無い。だが、どうしようも無い事実だった。だから、《テスト返卻》という盛り上がるイベントが終わるまで、ひたすら耐える。耐えるんだ。
「靜かに!」
騒がしくなった教室に矢の様に鋭い聲が響き渡る。緩んだ空気を引き締めるがごとく、教壇に立っている人は手をパンパンと叩く。自分に注目せよとでも言いたいかのように。
このクラスの委員長、姫川璃緒(ひめかわりお)である。そんな事をしなくても十分目立つ、日本人離れした容姿を持つの子だ。フランス人の母を持つというハーフであり、そのしい金の髪は世の男子達を魅了する。西洋風の抜群に整った顔と青い目を持ち、出すぎず足り無すぎずという絶妙なバランスのプロポーションを持っている。
「みんな。今は文化祭の出しの相談をしているのよ! テストの話もいいけれど、こっちに集中して」
その整った顔でキリっと真面目な表を作り、線していたクラスの雰囲気を軌道修正する。
姫川は『姫』というあだ名で親しまれており、本人の生真面目でまっすぐな格もあって、クラスの中心人だ。放課後學級會の進行を、突如現れた擔任の黒崎先生のテスト返卻に邪魔されてイライラしているのかもしれない。だが、それでも凜とした表は崩すことなく、皆の挙手を待つ。
演劇、カフェ、やきそば屋、たい焼き屋……
候補のどれが選ばれたとしても、友人のいない俺には辛い日々になることは間違いない。準備に參加すれば「ええなんかキモい~」と言われ、參加しなければ「何あいつ?」と後ろ指指される。もう三回目の文化際だ。知ってる。そして、救いがない。
「誰か他に意見はないかしら?」
皆がどうしようか……とざわざわしている中、俺は姫のをぼんやり眺めながら、ひたすら時が過ぎるのを待っていた。早く帰りたい。だが、突如背中を抓られる。
「あ?」
俺はできるだけイラついた聲に聞こえるように言って、振り返る。これで子ならば許せるのだが、俺は男子。當然後ろの席も男子だ。
「おい七瀬、メイド喫茶って言えよ」
話し掛けて來たのは久住強太(くずみ きょうた)。名前の通りクズであり、何かと俺にちょっかいを出してくる。名はを表すを地で行く嫌な奴だった。
「自分で言えよ」
「はぁ? お前姫のメイド姿見たくないのかよ?」
「いや、まるで意味わからねぇ」
そりゃ見たいけど、それとこれとは話が別だろう……本當にこういう馬鹿と話していると疲れる。見たいなら自分で言えよ。
「そこ、うるさいわ! 意見があるなら挙手を」
姫は俺と久住を指差し、注意してきた。まぁそりゃ怒るよな。ぷりぷり怒っている姿も可いが、その怒りを自分に向けられるのは嫌だ。その時、突然久住が立ち上がり、俺を指差す。
「はいはい! コイツ、七瀬がメイド喫茶がいいって言ってました!」
「ちょっ、おまっ……はぁ!?」
コイツ何勝手に。案の定、教室は靜まり返る。そして始まるひそひそ話。「うわぁ」とか「キモ」とかいう聲は俺ではなく久住が言われているのだと脳変換。案の定、姫は頭を抑えるような仕草でため息をついた。
はは、アレが馬鹿を見る目か~冷てぇわ。
そして、姫の橫、黒板の前で書記をしていた子がニヤニヤしながら振り返る。仙崎(せんざき)ゆとり。赤っぽく、そしてウェーブするように流れる長い髪をした、姫に負けず劣らずのだ。彼はどこか愉快そうに言った。
「ゴメンねー七瀬君。私らのメイド姿を見たいって気持ちは凄くわかるんだけどー。ってか、璃緒のメイド姿だったら私も超見たいけどー。ウチの學校の文化祭はメイド喫茶止なんだよねー」
「會の最初に説明したわよね? 聞いて無かったってこと?」
もちろん知ってる。メイド喫茶を始め、大人の考える子生徒が危険になるかもしれない系の出しは止なのだ。だが、久住は知らなかったようだ。姫と仙崎の指摘にヤベっという表をしている。だが、クラスの批判は俺に集まっている。なんてことだ。丸出しどころか、話までちゃんと聞けない奴だと思われるじゃないか。
 「いやーなんかすんませんでした」
とにかく場を収める為、立ち上がって全方位にお辭儀を繰り返す。そして俺は倒れるように著席し、背もたれに重をかけ、天を仰ぐ。
あー。早く家に帰りたい……そんなことを考えていた。今日のアニメはなんだったかなーとか、夕飯はハンバーグかなーとか。
その時だった。
周囲が突如に包まれる。そのは、まるで世界の終わりを告げるかのように熱く、熱を持っている。機や照明が、ガタガタと激しい音を立てて揺れる。やがて床や壁、天井に亀裂がっていく。
「地震か!?」
「みんな落ち著いて! とにかく機の下に避難して!」
そんな姫の聲が聞こえた。俺は我に返って、機の下に潛り込もうとする。だが、すでに何も見えなくなっていた。視界は全て白く塗りつぶされたのだ。臓がひっくり返ったかのような気持ちの悪さと吐き気が襲ってきて、やがて収まった。
気が付くと、俺達は教室ではない場所にいた。皆が皆、聲も出せないようだった。
「おお、今回は功ですぞ」
「31人……いやはや素晴らしい」
そんな聲が聞こえた。ある者には見慣れない、だがゲームや漫畫に親しんだ者にはある意味見慣れた格好をした人間達が、俺達を見下ろしていた。そんな中、一際絢爛豪華な裝にを包んだ、20代後半に見える男が前に出て、驚きの事実を口にした。
「ようこそ異世界の戦士達。我々は君達を歓迎する」
異世界……その言葉を聴いた瞬間、俺は異世界に転移したのだと悟った。
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