《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第20話 侵せよ
お屋敷から遠く離れた高臺の上。俺とイデアとコンボイの三人は、ほぼ全ての戦闘準備を整え、襲撃予定のマスマテラ・マルケニスの屋敷を観察している。屋敷からはまだ數百メートル離れてはいるが、この世界では魔力を目に注ぐことで、視力を強化できる。俺もそれに習い、敵の布陣を確かめている。
  屋敷は3階建ての巨大な建だ。そしてその屋敷の周囲の庭も、東京ドーム一個分はありそうだ。そしてその広い庭が、高い壁に覆われている。今や超人的な能力を持つ、いや、鳥人的な能力を持つ俺ならば単純に飛び越えられそうなのだが、それでも正攻法で侵するならば、巨大な門が一つあるので、そこからとなるだろう。
だがそうは簡単には行かない。壁の周りと門の前にはお誂え向きにゴーレム型のモンスターが守りを固めている。數えるのも嫌になるくらいの數だ。しかも、ゴーレムというのはロボットの様ならしく、《真紅眼》でステ確認が出來ない。
「どうやら、結界も張られておるようじゃのう」
コンボイがそんなことを言い出した。
「結界?」
「うむ、壁にじゃ。侵者拒絶の結界じゃのう。恐らくじゃが、あのゴーレム全てを倒さんと結界は解けんぞ」
この世界での結界、魔力を込めることで発できるらしいのだが、拠點を守るレベルの結界ともなると、魔力消費はとんでもないことになるらしく、実用的ではないらしい。
だが、その発式に何かしらのリスクを組み込むことで、維持魔力を抑えたまま強力な効果を使用することが出來るのだという。そのリスクとは『結界を崩す條件』を設定することらしい。つまり、鍵を設定するのだ。そして、今回の場合はゴーレムの全滅なのだという。
「まぁ、ゴーレムを配置しているということはそういうことじゃろうて」
「そんな簡単でいいのか?」
「いや、あのゴーレム、相當強力じゃぞ?」
「無効化すればいいんだったら簡単だって」
そうして、俺はイデアの方を確認する。イデアは張するでもなく、今まで鞄に収めていた自分の剣を確認している。彼の剣は雙剣と呼ばれる武だ。左右非対稱で、全的に稲妻のような形をしていて非常に廚二心をくすぐる。刀は黃緑の水晶の様になっており、薄ぼんやりと発している。
「フッ、この剣が気になるか? これはジークセイバーⅡ。かつて世界最終の魔竜と呼ばれたハル・メギドラゴンと戦ったメディバルと呼ばれる騎士が使っていたとされるジークセイバーを修復したらしい。
元々は一本の巨大な剣だったらしいがな。ハル・メギドラゴンとの戦闘で真っ二つに折れたそうだ」
伝承というか、伝説の剣なのか。今更ながら、武あるのいいなと思ってしまう。武生というスキルを手にれたものの、実用的なオリジナル武の生は難しかった。見たことある、なんとなく使い方が解る武しか作れない。その點、このジークセイバーⅡは凄い。この剣自が膨大な魔力を包している。
「ところで、今まで全然気にしていなかったんだけど、襲撃の作戦ってどんなじ?」
「そういえばワシも聞いていなかったのう」
「フッ、説明しよう。作戦の容は、敵の屋敷に潛し、マスマテラ・マルケニスを捕まえる」
「うん。で、その為の作戦は?」
「え?」
「え?」
いや、ちょっと待って。この日の為に一ヶ月も下見を繰り返したんじゃないの? しずつだけど、森に散らばってた戦力をそぎ落としていたんじゃないの?
マジか君。
「大丈夫だ。明日を信じて突き進め! そうして通り過ぎたところこそが、私達の栄のロードとなるのだ」
「言葉の意味はよくわからんが、とにかく凄い自信じゃのう」
「とりあえず、計畫も作戦も何もないことがわかったよ」
こうなっては仕方が無い。あまり時間をかけたくないし、強行突破しかない。
「それじゃあコンボイ、あのプランで行こう」
「わかったぞい」
起用に指でOKマークを作ったコンボイは、高臺から飛び降り、下に広がる森にる。ここからしばらくは別行。俺もイデアを抱えて走り出す。
「この抱っこ、まるでお姫様だな! 良い、良いぞすぞら」
いや、君お姫様でしょ。と突っ込みつつ。10分ほど。既に俺達2人は屋敷の直近くで待機している。茂みの中にを潛め、塀の外の様子を伺っている。
「まだ仕掛けないのか?」
「もうそろそろ、コンボイが仕掛けるはずなんだけど……お!」
すると、森の向こうから獨特の発音が聞こえて來た。花火の様に煙を吐き出しながら舞い上がったミサイル達は、やがて角度を変えて、敵の屋敷に降り注ぐ。
だが、恐ろしいことが起こった。6基のミサイルは、その全てが見えない壁にぶつかったかのように、塀の上の空中で発した。やがて、ゴーレムがその発に反応したかのように目を覚ます。適當に組み上げられたガラクタでも、顔の様な部分はある。顔と思われる部分に、赤いモノアイが出現する。
ゴーレムたちは周囲を警戒するかのようにきょろきょろと辺りを見回しながら警戒のを強めている。確実に第二目に備えている。
だが、ゴーレムたちの目論みは外れることになる。上空から降ってきたのはコンボイだ。コンボイはゴーレムを踏み潰すように著地する。
門のすぐ近く。つまり、敵陣の真ん中だ。そんな珍妙な襲撃者に恐れをなすことなくゴーレムは進んでいく。
だが、集まってくるゴーレムを避けるように再び垂直に高く飛び上がるコンボイ。そして、肩、スネ、からミサイルポッドを出現させる。そのミサイルポッドのハッチが開かれると、中から小型のミサイルが一斉に出される。そのミサイル達は雨の様にゴーレム達の頭上に降り注ぎ、一瞬にして炎で包み込む。
熱と風の波狀攻撃に地獄と化した屋敷。一、また一と朽ちてゆくゴーレムたち。だが、これで全てを倒せたとは思っていないらしい。著地したコンボイは、今度は両手をマシンガンに変化させる。だが只のマシンガンではない。ビームを弾丸のごとく打ち出すビームマシンガンだ。コンボイは言葉を発することもなく、生き殘ったゴーレム達に淡々とビームマシンガンを放つ。
「コンボイのあの技はなんなのだ?」
「ああ、元々あれはキラーパンダの『武生』というスキルだったんだけど、融合した今、俺とコンボイの両方にけ継がれた」
「ほう……なんだか一人で殲滅できそうではないか?」
どこかつまらなそうな様子で、目の前の慘劇を見つめるイデア。けれど、ゴーレム部隊の守備力は堅い。あのビームマシンガンであっても、結構な數を當てないと崩れない。
「あれだと持たなそうだな」
「ん? 持たないとは?」
「ああ、あの武生、俺も使ってみたんだけど……」
  実はこの武生、見た目が武に変形するだけで、完全なる武を作り出しているわけでは無いらしい。そもそも、使用者である俺が武の構造に通している訳ではないので、當たり前といえば當たり前なのだが。
では何故武として使えるのか? というと、それは生した使用者がイメージした形と使用方法を、魔力を使って再現しているらしい。弾丸もミサイルも全ては魔力で再現されたものに過ぎないという訳だ。つまりああいう重火系の武は、恐ろしく魔力を消費する。だから、普通に剣とか槍にしたほうがコスパがいい。
「なるほどな。ん? おいすぞら、コンボイがチラチラこっちを見ているぞ」
「おっ? 本當だ。なんだか汗が凄いな」
「もう魔力がキツいのではないか?」
コンボイと目が會う。ゴリラが「そろそろ応援に來てくれ」という顔をしている。まぁ、罠とかも無さそうだし、俺達も行くか。
コンボイは、しずつ後ずさりながら、俺達が隠れている方へと後退してくる。見ると、ゴーレムの殘骸たちが再び合し、新しいゴーレムとなっている。なるほど、これは完全に消滅させないと駄目なパターンか。
「サンキューコンボイ。あとは俺に任せてくれ」
「助かるわい。思いのほか堅くてのう」
「並の魔だったらあの一斉で全滅だったんだろうけどな」
そう言って、俺は一歩前に出てぎこちなく駆するゴーレム達に手をかざす。バラバラになっても再び組みあがる不死。一どんなスキルなのか。楽しみ《捕食融合》……だが。
「あれ、融合できないぞ……?」
「お、気が付いておらんかったのか? あれは作られた人形じゃよ。生きではないから、お主でも融合出來んのじゃろう」
「そうなのか?」
ロボットみたいって、てっきり比喩かと思ってたぜ。あーそういうことね。完全に理解した。ってか、知ってたのかコンボイ。
「早く教えてくれれば、もっと手っ取り早い方法があったのに」
「うむ?」
「言わぬ忠実な番兵達よ、今一つとなりて、その役目を終えよ――融合」
ゴーレム達が、皆の粒子となる。その數は15ほど。それはやがて集まって一つの巨大な球を形作る。そして、出來上がったのは2メートルほどに積みあがった、さびた鉄くずだった。
「さ、後は頼むぞコンボイ」
「お、おう」
すかさずミサイルポッドから一発、鉄くずにミサイルを撃ち込む。錆付いて風化しかけのくず鉄は、その熱量と火薬の威力で々に吹き飛ぶ。
「フッ、どうやら今ので屋敷の結界が消えたようだ。最初からすぞらがやればよかったんじゃないのか?」
「ワシもそう思う」
「いや、もしかしたら、何か罠があるんじゃないかと思ったんだよ。戦い慣れてない俺じゃ、不意の罠には対応できないし、知恵も戦闘経験もあるコンボイが様子を見てくれたのは助かったよ」
力だけはついたけど、まだまだ戦いは素人だしな。決してゴリラを囮にした訳ではない。
「まぁ、そういうことなら。けど、魔力が潤うまでし休ませてくれ」
「フッ、次は私の番だな」
イデアがジークセイバーⅡを構える。両手に持った二本を合わせる様に振りかぶり、塀を切りつける。まるで豆腐でも切っているかのように抵抗無く消え去る壁。
ああ、門じゃなくてここからるんだ……。
「さ、行くぞ!」
崩れた瓦礫を乗り越えて、俺達はいよいよ敵の屋敷に侵した。
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