《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第21話 暗黒進化じゃないよ!
イデアのジークセイバーⅡによって切り開かれた塀。それを乗り越え、遂にマスマテラの屋敷へと侵した俺達だったが、表にいたのと同型のゴーレムに囲まれてしまった。
「囲まれているな」
またもやゴーレム。流石に見飽きた、俺は手を天に掲げ、それらを全てクズ鉄へと変えようとする。だが、手ごたえが無い。
「アレ……融合できないな」
反応しない。一どういう事だろう。
「同じ手は二度も通用せんよ……」
俺達を方位するゴーレム軍団の後方から、そんな聲がした。それはモンスターのようで、僧のような法を纏っている。辛うじて服のスキマから覗く顔は淺黒く、鈍く発する黃い眼が不気味だった。見るからに魔法特化系のモンスターだろう。そのモンスターは勝ち誇ったように巨大な口を歪める。
「我輩はこの屋敷の防衛を任されているナイト・プリースト。貴様の持つレアスキル、融合の力は見切った。強力ではあるが、所詮は魔力を介するスキル。ならば、対魔力コーティングを施した巖石で作ったゴーレムを用意すればよいだけのこと。我輩のるゴーレム部隊の餌食となれ、久方の侵者よ!」
ナイト・プリースト 魔力數値4800
  巨大な魔力をる悪魔族のモンスター。使い魔や召喚系の魔法に長けている。
「奴……奴もワシの里を襲った者の中に混じっておった」
「ナイトプリースト……アレもこの辺りでは強力な魔だと聞く……警戒しろよ」
構えるゴリラとイデア。融合で楽しようと思ったが、どうやら駄目らしい。まぁいい、ならば実力で敵を倒すまでだ。
両腕を切斷に特化したエナジーブレイドに変化させるコンボイ。休むといっていたが、再び先陣を切ってくれた。敵の部隊に真正面から突っ込み、足で踏みつけ、そして両腕のブレイドでゴーレムを切斷する。無限に再生するとは言っても、崩れてしまえば、再びゴーレムとして復活するまでに一定の時間が掛かる。必ずしも全滅させる必要のない今回の闘い。コンボイはそれをよく理解していた。
「私も行かせて貰おう。これほどの數、楽しませて貰うぞ」
高く飛び上がりながら嬉々とした表でぶイデア。そして、空中で何かを蹴り飛ばしてその機を変えてゴーレム部隊に切りかかる。ジークセイバーⅡの切れ味は最早ここで語るまでもなく凄まじい。
だが、それ以上に凄いのは彼の戦い方だ。まるで空中に見えない足場があるかのように、格ゲーの二段ジャンプのように、空中で自在に機を変える。これこそが彼の持つ紋章の力の一つ。風の霊からの加護により、空中に見えない足場を形することが出來るらしい。
縦橫無盡に、3Dな攻撃を繰り返すイデアに、単純な命令だけでられているゴーレム達が敵う訳がない。
「ハッ! 手ごたえが……無いぞっ!」
久々の戦闘ではしゃいでいるようだ。ドヤ顔が輝いている。
さて、2人が頑張っているし、俺も気合をれますかね。俺は肩から羽を6つ毟り取り、空中に放り投げる。その羽たちは空中で制止したあと、それぞれがランダムな軌道を描き、ゴーレム達に襲い掛かる。迫ってくる羽を攻撃とはすぐに認識できなかったゴーレム達は、魔力により超化した俺の羽に切り刻まれていく。
「な、なんだあの技は!?」
この技は『武生』のスキルを応用した技だ。武生は自分のを武へと変化させる。その形狀までも。だが突き詰めてみると、膨大な魔力消費と武に関するイメージが必要になるのは、自分のを全く違う形狀の武に変化させた時の話なのだ。
だったら、形狀を変化させないまま武にしてしまえばいい。俺が羽にインプットした命令は二つだけ。『敵を切り裂くこと』と『俺とイデアとコンボイ以外のくものは全て敵』ということだけだ。
だから、羽を警戒し、きょろきょろとモノアイや首をかすゴーレムは格好の的だ。3Dのオールレンジ攻撃に対応できず、次々とバラバラになって行くゴーレム達。さながらフェザービットといったところか。
こうして、三者三様にゴーレム達を破壊していくと、だんだんと景が広くなってきた。ゴーレムの再生が間に合わないらしく、司令であるナイト・プリーストが疲弊してきているのが手に取るように解る。
「おのれ……こうなったら、最後の手段だ」
ナイト・プリーストが祈るように両手を結ぶと、ゴーレム達が次々と崩れ去った。
「気をつけるんじゃ、奴はゴーレムの維持に使っていた魔力を自分に集めておる」
「我が契約せし最強の番兵よ、死して尚陣を守る執念を我に示せ――」
地面に現れる幾何學的な魔法陣。そこに恐ろしいほどの魔力が満ちていくのがわかる。そして、ナイト・プリーストは懐からなにやら赤い寶石を取り出すと、それを魔法陣に向かって叩きつけた。寶石は溶けるように魔法陣の中に吸い込まれてゆく。
「フフフ、今のは高純度の魔力結晶石。コレを吸わせて召喚された召喚獣は數倍の魔力を得る。さあ現れ出よ! 地獄の門を守護する番人、阿修羅スカル!!」
魔法陣を突き破って地面より出てきたのはコンボイを越す大きさを持つ巨人の骸骨だった。腕が6本、そして頭は顔が3つではなく頭部が三つある。鎧や剣で完全に武裝しており、なかなかに強そうな魔だ。
阿修羅スカル 魔力數値20000(魔力結晶石によるブースト10000)
命を裁き続けてきた正義のある魔人のれの果て。生前の崇高な信念はもはや消え、理もなく全ての命を裁き続ける為に戦い続ける。
「阿修羅スカルは《裁く番人》と呼ばれる最強クラスのアンデッド。死して尚、理やや人格を失って尚、この屋敷を守るために戦う最強の戦士。これで貴様等も終わりだな!」
 イキるナイト・プリーストだが、そんな様子を見て俺はニヤリと笑う。思わず笑い聲が出てしまうくらいに。
「なんだ、何が可笑しい?」
「理もも人格も無い、か。いいや、全ての力を使い果たして、俺の前に餌を用意してくれるなんて。なんだお前っていい奴じゃん」
「餌? 何を言っているんだ?」
「遠慮なく頂きます――《捕食融合》発」
理のない阿修羅スカルは苦しむ様子も抵抗する様子もなくの粒子となる。空中をしばらく漂った後、粒子は俺のに注ぎ込まれる。
やがて、久しぶりに俺のが大きく変化しようとしている。スケルトン系は今のトレンド、吸収できてラッキーだった。さて、どんな姿に進化する?
《死施錠(デッドロック)》を習得
・高位アンデッド特有のスキル。死なず、魔力をもって再生する。
再びやって來た激しい痛みに耐えつつ、やがて俺のの変質が止まる。
「な、なんだその姿は……」
絶溢れる敵の聲が聞こえる。
俺がまずじた自の形は球。だが、それは正しいようで正しくはない。球なのは、コアだ。そして、コアを覆うのは骨。ベースは恐竜のレックスタイプ。腕は鯨かシャチのヒレの化石のようだ。下半はナーガの様に尾と同化している。さらに既にが浮いているから必要ないのに、カッコいい羽の骨がくっついている。長は3メートルくらい。
正しくスカルドラゴン。見た目だけならば暗黒進化の様相を呈してきたが、の支配者はまさしく俺だった。別に理は失っていないし、やたら兇暴が浮き上がってくることもない。
「ほう……禍々しくなったのう」
「人から離れた……子作り……」
と仲間2人の想をもらったところで、今にもらしそうなくらい震えているナイト・プリーストを見下ろす。
「融合素材のご提供ありがとう。さあて……お禮と行こうか」
骨の頭部からではなく、のあばら骨に収められた生コアから発した聲は、元々の俺の聲のままで、なんとも締まらない。
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