《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第24話 コンボイの孫
「滅茶苦茶長くなりそうだな。それじゃあ今のうちに……」
俺は翼の骨を8つに分解し、大場を包囲するように彼の周囲に待機させた。さらに。
「あら……これは何の真似?」
「武裝解除だよ。下著を殘したのは趣味だ……じゃなくて、俺の優しさだと思ってくれていいよ」
エッシャーたちにしたのと同じように、大場の著ていた白や服同士を融合させ、ゴミへと変化させた。今の彼は黒いブラとパンツ姿。は滅茶苦茶スタイルが良いと言う訳ではなく、程よくが乗っているという、言うなれば普通のだ。
俺の橫ではコンボイが「良くやったぞぉぉ!!」と発……もとい、ハッスルしている。おじいちゃん……。
「あらあら、流石思春期だわ。強力なスキルをこんな風にエロに使うなんて」
「ち、違うって。エロ目的じゃないって。武裝解除だよ武裝解除。さっきエッシャーたちにもやってただろう」
「つまり……そっちもイケるということ……?」
「だから違うって。そもそも、俺は今、骨なんだぜ? 服どころかまでいでいる、骨たる俺にがあるわけ無いだろう」
「せいよく……すぞらに!? すぞら、私もぐぞ!」
「え、ちょっと待ってイデアまでボケ始めたら収集つかないから」
――しばらくして。
何事もなかったかのように大場に話を始めてもらった。イデアがぐのはなんとしても阻止したぞ。我ながら偉い。
10年前。當時19歳だった大學生の大場(おおばあい)は大學サークルのキャンプ中に異世界召喚に巻き込まれたという。人數は彼を含めても20人くらいだった。
そして、召喚から先の経緯も俺達と大同じだった。し違うのは、大場を含めた20人の中に《勇者の魂》を持つ者が居なかった事である。
やがて魔との戦いに皆が疲れ落していき、例の土地を與えられ、そしてそこに都市を建設したらしい。その時で既に異世界召喚から3年が過ぎていたという。
「けれど私はガルム様のところに殘ったわ。だって、あの方をしていたから」
推定29歳のが両手を頬に當てて、下著姿で顔を真っ赤にしながらくねくねしている様を眺めるのはなかなか苦痛だった。今の俺の姿も人に見せられたもんじゃないのだが、それを差し置いても、棚に上げてでも言いたい。
その仕草はキツイと。俺が洋服をがしたせいで余計見苦しい景になったのでは? という鋼の真実からは全力で目を逸らす。ふ、服著てたって、29歳であの作はキツいよな。うんうんと、誤魔化す。自分自を。
「ガルム様は私を信頼して、ご自の研究の協力者として私を參加させてくれた。あの方の為に、私は數々の果を上げて來たわ」
その後、ガルムが研究を切り上げるまでの數年間、共に研究を続けていたらしい。ガルムの研究が何を目指しているのかを、大場自も知らなかった。的な果がでると、譽めてはくれたものの、また別の研究に移って……というのを繰り返していたらしい。寧ろ大場の方から「何か心當たりはない?」と俺に尋ねて來る始末であった。
そして、ガルムが研究を切り上げた後も、彼はここに殘り研究を続けた。彼の目的は強い魔の生。その為に、希な存在や、レアなスキルを持つ魔獣を集めさせていたらしい。その報酬は、新たな強さを與えることだったという。そして、研究果を試すのは、やはり戦闘ということになる。俺はしだけ嫌な予がした。
「その為に、自分の仲間を売ったのか? 戦闘データをとる為に」
俺の問いかけに反応したのはイデアだった。
「まさかアルカディアに居た召喚者たちが滅びたのは……」
「ええ、私がやったわ。まぁある程度の強さを持っている異世界召喚者たちに魔をぶつけることで、いいデータが手にった。それに、死んだ先輩達のは有効活用したし。七瀬素空君、あなただって、その果を目の當たりにしたでしょう?」
「ああ……」
キラーパンダ。奴も、俺達の世界の武に関する知識を持っていた。こいつが裏で糸を引いていたんだ。
「も、もう一つ聞かせてくれんか?」
今まで沈黙を貫いていたコンボイが口を開く。
「何故ワシの里を襲ったのじゃ?」
そのコンボイの問いかけに、大場は意地悪く口元に笑みを浮かべる。もしかしたらコンボイがソーサリーコングの里の者だと察したのかもしれない。
「ええ、この際だから教えてあげるわ。そもそもこの森に囲まれた、神樹の西側一帯の地域は、マスマテラ・マルケニスの家が代々管理していたらしいわ。私はその中にある、比較的知の高い魔獣たちの村や里を、見守りながらその生態を研究していた。貴方達ソーサリーコングの他にも、ドワーフやエルフ、獣人族などなど。それは、稀に生まれる突然変異種を待っていたから。ソーサリーコングの村でもそれが生まれたわ。天才的知と膨大な記憶保持量を持つ脳を持った天才児が」
コンボイの孫のことだろう。まだ、名前すらなかったはずだ。コンボイは事の元兇であるを前に、必死に耐えている。コンボイはここまで協力してくれた心強い仲間だ。活躍していたかどうかとは別問題で、その老した格を、俺も結構頼りにしていた。神的支えの一人だ。だからこそ、彼のみである孫娘の奪還は必ず功させたい。
「あれはワシの孫なんじゃ。頼む、お主に人としての良心がしでも殘っているのであれば……孫娘を返してはくれんかのう」
「あら、貴方のお孫さんだったの? じゃあ、今持ってきてあげるわ。ちょっと待っていて?」
「ほ、本當か!?」
ソファから立ち上がり、後ろにある、が詰まれまくっている機の奧の方に移する。
「フッ、やったなコンボイ。孫娘と出會えたら、お前は先にここを離れるといい。後は私とすぞらがなんとかする」
「謝する……本當に謝じゃ。お主達に出會えて、本當に良かった……」
イデアの言葉に今にも泣き出しそうに禮を言うコンボイ。だが、俺のには不安が洪水の様に押し寄せていた。今、奴はなんて言った?
『持ってきてあげるわ』と言った。持ってきて? 言い間違いか? 連れて來てあげるが正解ではないのか? そして、俺の不安は最悪の形で的中することになる。大場が持っているのは、水槽の様なだった。二リットルペットボトルよりもしだけ太い、そして短い、そんな円柱の水槽。
その中は薄水ので満たされ、なにやら不気味なものがぷかぷかと浮いている。それが脳だと理解するのに、かなりの時間を要した。
いや、その事実を認めることを、思考が拒否したのかもしれない。何かの間違いだろう? 大場の冗談だろう? そんな縋りたくなるような想像が頭を過ぎっては、一瞬で消えていく。そして、それらの予想、いいや、希を大場の殘酷な言葉が打ち砕いた。
「これが貴方のお孫さん。データは取り終わったから、貴方にあげるわ。せいぜい、可がってあげてね」
そういいながら、俺達の方に投げつける。地面に激突する寸前のところをイデアがキャッチすると、それを合図に、俺の橫にいたコンボイが激昂する。
「貴様あああああああああああ!!」
全の白いを怒りで逆立て、両腕を機関銃に変え、さらに中のいたるところからも重火を出現させ、大場目掛けて発する。思わず俺は大場を包囲していた骨を待避させる。
「落ち著けコンボイ! 今はまだ奴を殺す時じゃない!」
そう言いながらも、無理も無いと思う。それだけのことを、大場はした。
その時だった。逃げようともしない大場の前に、突如何かが落下し、コンボイの攻撃を全てけ止めた。それらはまるで壁の様に組まれた骨だった。もちろん、俺のものではない。壁が出現したにも関わらず、攻撃を止めないコンボイ。だが、すぐに魔力に限界が訪れ、武が消失する。膝に手をつき、肩で息をするコンボイ。
「なんだあの骨は?」
壁となった骨たちはバラバラのパーツとなり、目にも留まらぬ速さでコンボイに向かう。そしてそれらは止まることなく、凄まじい音を立てて、コンボイのを突き破り、貫通していく。
「ぐおおおお!?」
低く唸るようなびをあげて、コンボイが倒れる。驚きながらも、イデアが駆け寄る。俺はコンボイを貫いた骨たちから目を離さず、敵とコンボイたちの間に割ってはいる。そして、ようやく気が付く。大場の後ろに、巨大な球が浮いていることを。そのれ過ぎた果実の様な球の周りに、コンボイを貫いた骨が集まり、組み合わさり、そして何かを形作っていく。
恐竜の様な頭部。球コアを包むあばら骨。シャチか鯨のヒレの化石のような腕。飾りっ気満載の翼の骨。そしてナーガの様なヘビ狀の下半。
「驚いたようね」
嬉しそうな大場の聲など気にならない。目の前にいるのは……。
「俺が……もう一人?」
「紹介するわ。これが私の研究果その2、ミュートランス」
大げさに手を開いて、俺そっくりの魔獣を誇らしげに眺める大場。そして、その誇らしげな視線をゆっくりとコチラに移す。
「これで話はお仕舞い。ここまで聞いた以上、生きて帰れるとは思って無いわよね?」
ギィギギ……ギギィ。
俺と対峙した魔は、ゆっくりと姿を変えてゆく。骨の軋むような、不気味な聲を放ちながら。
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