《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第26話 世界最終の魔竜
 戦いは続く。
・《キングゲーター》を融合 スキル《王気》を手しました。
……魔力數値の低い相手を支配する。
・《ジェノサイドスライム》を融合 スキル《増》を手しました。
……時間を掛けて分裂する。
***
一どれだけのモンスターを吸収したのか。
・《メンタルヘルスサキュバス》を融合 スキル《自傷(リストカット)自得(シンドローム)》を手しました。
……自分で自分を痛めつけ、そのダメージを周囲にも與える。
***
強くなっていく。増えていくスキル。
・《終末騎士》を融合 スキル《暗黒裝甲》を手しました。
……敵にれられると発する。
***
だが、だんだんと自分自の意識が希薄になっていく。
・《セフィロトツリー》を融合 スキル《記憶回廊》を手しました。
……自分のの記録の閲覧。
***
を削っている自覚はある。だが、敵はなんてことないようにコピーを繰り返し、俺を超えていく。
「あんまし手間取らせてしくないっすね」
のっそのっそと、まるで狩りでも楽しむように俺のことを探している。俺は背後に回りこみ、敵の後頭部を毆打する。新たな姿となった今、俺の方が有利なのだ。敵が俺をコピーする前に、全力の一撃を叩き込み続ける。
だが、敵を毆る手に手ごたえをじなくなったと思ったら、いつもの様に霧狀に変化し、今の俺と同じ姿、魔力數値となる。
敵は《変》を繰り返すたびに力を回復しているように思えた。それは俺も同じなのだが……気力と神力が、続きそうにない。そろそろ限界が近づいている。
敵が勢を立て直す前に、俺は次の餌を探しにいく。このフロアも大分閑散として來た。いったいどれだけのモンスターを融合してきたのか。今俺がしいのは奴を一撃で屠れるほどの圧倒的な力。もう、ここにいるモンスターではそれが出來そうにない。
俺は決意する。
この階層よりもさらに下。俺はありったけの魔力を腕に注ぎ込み、地面に突き立てる。まるでモグラのようであったが、みっともないとは思わない。必ず奴を、倒さなくてはならない。
***
地下6階。
気合をれすぎて、地下5階をすっ飛ばしてしまったようだ。より淀んだ空気をじる。というか、さっきまでの地下1~4階までと、明らかに雰囲気が違う。まだミュートランスの奴は降りてきていないな。
「よしよし今のうちに……おっ?」
一際大きな水槽がある。壁に埋め込まれたその水槽は、大型の映畫館のスクリーンよりも大きい。今の俺も結構な巨だが、それでも上の方が見えないくらいだ。その巨大な水槽の中に眠る、巨大な紅蓮の竜。赤い外殻に漆黒のラインが刻まれており、見ただけで悪い奴だなとわかるデザインだ。その竜が巨大な水槽を持ってしても、窮屈そうに収まっている。
「はるめぎどらごん……あれ」
どこかで聞いたことがあるような名前だ。《世界最終の魔竜》というらしい。ということは、世界を終わらせるだけの魔力をめているってことだよな。だとしたら、この空間の異常な寒さというか、不気味さにも納得できる。
「よし……それじゃあ捕食融合をは……ッ!?」
融合のスキルを発しようとした瞬間、今までにないほどに悪寒が走った。なんだろうこの覚は。三車線の赤信號を渡ろうとしたとき……猛獣の折に手ぶらでろうとしている……そんな、目に見えた恐怖が、押し寄せてくる。
(引き返すなら今だぞ)
俺の中の何かがそう語りかけてくる。
「ふふ……」
笑ってしまう。それ程までにこの魔は強大なのだろう。もしかしたら、俺が俺で無くなるほどの力をめているのかもしれない。けれど、それがどうしたと言うのか。自分が自分で無くなる覚悟など、ずっと昔に決めている。俺は改めてハル・メギドラゴンに手をかざす。まるで自10秒前の基地の様に、頭の中でアラートが鳴り響いている様な覚がある。
いや、アラートなんて、毎回鳴っていた。自分のに別の魔を融合させる。それは融合本來の使い方ではないのだろう。だからこそ進化した捕食融合。道理を捻じ曲げ、食い散らかす。そうさ、毎回アラートは鳴り響いていて。融合後はまるで自後の様な神狀態だったじゃないか。
「我ながらよくここまで頑張ったものだ」
融合は苦しい。魂が薄まっていく様な覚が怖い。薄められていく自分自が怖い。だが、負けたくないから、この力に頼ってきた。
そうだ。今回だってそうだよ。俺は滅茶苦茶な苦痛を伴う融合で自分を強化しているのに。何のリスクもなくコピーして強くなるなんて、ズルいじゃないか。そんなずるい奴を倒すには、そうだ、これくらいしなくてはいけない。
赤黒い粒子となった魔竜の力が、俺のに降り注ぐ。自分よりも強い魔の吸収に対するの変革と痛みに構えていたが、、今回はそうでもなかった。苦痛は……ない。
それはまるで、魔竜から厄災を託されたような覚がして。まるで「俺の代わりに世界を滅ぼせ」とでも肩を叩かれたじがして、しだけ不気味だった。
・《暗黒魔竜ハル・メギドラゴン》を融合
スキル《対竜屬無効》を手しました。……対龍屬攻撃を無効化する。
スキル《極炎核》を手しました。……魔力を獄炎に変換する。
……。
EXスキル《終末の轟咆ハルマゲドンハウル》を手しました。
……消費魔力50萬~100萬。最終魔竜が放つ呪われたび。聞いた者に蘇生不可の耐貫通即死を與える。空間、質、魔力さえも殺す事が出來る。魔力を込めれば込めるほど、その範囲は世界中に広がっていく。
EXスキル……これは捕食融合とは違う。エッシャーの使用したような、必殺技タイプのEXスキルのようだ。これはいい。まさしく最強のスキルだ。
ぐんぐんと高くなる目線から、俺のが想像以上に巨大になっていることがわかる。足はなく、下半は尾と同化しており、測らずも、以前のスカルドラゴンの生前といったじの姿になった。ガラスにうっすらと映る姿はまさに魔竜。混濁する意識の中で、俺は天井に空けたから、さっきまでの自分と同じ姿をした敵が降りてくるのを見つける。敵が驚いた顔をするのを見て、しだけ満足する。
「な、何してんすかアンタ……そんな魔まで」
コピーする時間なんて與えない。《終末の轟咆ハルマゲドンハウル》を使うべく、その巨大な口を開いた――
固名:七瀬素空 魔力數値:1070000
種族名:合魔竜
所持EXスキル
《捕食融合》《終末の轟咆ハルマゲドンハウル》
所持魔法
《闇魔法》《魔法》
所持スキル
《融合》《真紅眼》《無常貫通》《暗黒核》《冷卻保存》《空中浮遊》《死施錠(デッドロック)》《人形作》《魔力圧》《甲殻裝甲》《竜》《極炎核》《増》《自傷(リストカット)自得(シンドローム)》《暗黒裝甲》《記憶回廊》
耐
《対竜屬無効》《炎耐》《雷耐》《水耐》《麻痺耐》《毒耐》
「《終末の轟咆ハルマゲドンハウル》……聞いた者に耐無視の貫通即死!? なんすかこのスキル!?」
早速新しい俺の姿に変化したミュートランスがそんな事を言いやがった。だが、もう遅い。俺はしたり顔で(とはいっても、同じドラゴンフェイスなのだが)俺のスキルを確認しているミュートランスの頭に一撃を加える。巨大な音を立てて倒れる敵。
その衝撃で、建自が振しているのがわかる。お互いにがでかくなり、戦うことによってもたらす被害も、だんだんと大きくなっている。さながら大怪獣映畫のようだ。ガッジーラだ。しかも、既に魔力數値は百萬を突破しているのだ。周囲に與える影響は計り知れない。
だが、敵も終焉の轟咆を使えるという狀況は面白くない。敵のスキルを封じようと、俺は近くにあった適當な大きさの水槽を摑み、敵の口の中に押し込んだ。噛み砕けば、中の時の水が溢れ出すことになる。
全に漬けるとまではいかないが、もしに時の水が浸すれば只では済まないだろう。口を塞がれて苦しそうにするミュートランスを満足げに眺めた後、俺は思い切り息を吸い込んだ。
コイツの命を奪うには、全魔力を集中させる必要があるだろう。その數値、およそ100萬。全部だ。
吸い込んだ空気が、そして今までにないくらい膨大な魔力が、腹の底からまで出掛かったときだった。
「――ッ!?」
待て。俺は今何をしようとした? コイツに勝ちたいという事だけに気を取られ過ぎて……。聞いただけで即死……もし上に聞こえたら? 発に使った魔力は100萬。は最大に開いている。これ、即死させる相手を選んだりなんて……。
いや、出來ないのだろう。だとしたら、上に居るイデアも、コンボイも……。俺はスキルを中斷しようとする。だが、まるでスキル自が意思を持っているかのように、中斷が出來ない。何故こんな簡単なことに気が付かなかった!?
確かに俺は奴を倒したいけれど。仲間ごと倒したい訳ではない。俺は先ほど奴にしたように、再び周囲から適當な大きさの水槽を鷲づかみ、自分の口に放り込んだ。中の魔さんごめんなさい。
だが、水槽は思いのほか頑丈だ。ちゃんと栓としての役割を果たす。腹から湧き上がる魔力と、出口を塞がれた魔力はの辺りで合流し、そしてはじけた。発はしない。まるで風船にが居たかのように、が裂け、中からいろいろなものがあふれ出した。
「ガハッ―ああ」
水槽が地面に落ちた。聲が出せないが熱い。
「なにやってんすか」
同じく口の水槽を取り外したミュートランスがそんなことを言い出した。本當だよ。何やってるんだろうね。起き上がろうとして、がかない。これだけのなら、《竜》の効果で回復するはずなのだが……。意識がかすれて眩暈がする。
「當たり前っすよ。自分自のを何度も何度も作り変えて、それで自我が持つ訳がないっす。ましてや今吸収したのはあの世界最終。3000年前。リアンデシアの歴史が始まる前からこの場所に封印されていた魔っす。超古代の、厄災を吸収したんす。今のアンタは、自我が消えかけてるんすよ。安定するまでは、もう融合は止めたほうがいいっす。もう手遅れかもしれないっすけど」
けど、見逃してはくれないんだろう?
「殺しはしないっす。多分、今までアンタが吸収してきた魔達と同じように、時の水に漬けられるんだと思うっす」
それは嫌だな。泣いて命乞いしたら、大場さん許してくれないだろうか。許してくれないだろうなぁ、研究施設を壊しまくっちゃったし。
ああ、なんて無様な最後だ。イデアにもコンボイにも申し訳ない。そういえば、何故である大場がイデアを結婚相手なんて噓ついて連れてきたのかもまだ知らないんだったな。まあ大場のことだから、きっと何かの実験に使いたいのだろうけど。
けれど、まぁ。一撃必殺、最強の技を手にれたというのに、仲間の命の為に使えないなんて。まったく、七瀬素空も甘くなったものである。もしイデアと出會わなかったら。あそこでコンボイを助けてなんていなかったら。
きっと平気で俺はこのスキルを使ったに違いない。ああ、きっと使っただろう。遠慮なく、ためらい無く。それが、ボッチで過ごしてきた七瀬素空という人間だ。
守るものが出來ると人は弱くなる……とは言うけれど、なるほど確かに。弱くなった。そもそも俺が仲間なんてものを作った事が間違いだった。魔がさした。魔のなってしまった不安と孤獨のせいで迷った。
けれど、なんだろう、悪い気はしない。ここ數日。イデアと、コンボイと過ごした數日。一つの目標に向かってみんなで頑張った數日。それは現実世界ではとうとう出來なかった経験で。なんというか。
楽しかったぜ――
「何満足そうに笑っているんすか。気にらないっすね」
「ゴフッ……ガガガ」
負ける前に何か格好良いことを言おうと思ったのだが、にが開いているのを忘れていた。ってか、心臓が送り出すが頭まで上がってこない。この段々と意識が薄くなっていくのは、自我の崩壊が始まっているのか、それとも。
「まぁ、痛くはしないっすよ。時の外れから、この世界を見守っていてしいっす」
俺の意識を完全に奪い取るべく、敵が腕を振り上げたときだった。
――『まだ終わってはいませんよ』
とても優しい聲が聞こえた気がした。
突如、地面の下から、巨大な力をじた。圧倒的な力だ。地面に亀裂が走り、ひび割れた場所から、圧倒的なが差し込んだ。闇に慣れた目に潰れそうな痛みが走る。目を瞑っても尚眩しい。それはミュートランスも同じだったようだ。
「な、何をしたっすか!?」
目を押さえ、俺の側から離れるミュートランス。俺は最早立ち上がる力もなく、為すがままに地面からあふれ出る暴力的なに包まれるのだった。
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