《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第34話 量産型エクスカリバー

ゴッドスライムは両手を広げる。その手から銀に輝く狀の金屬が流れ出す。まるで無重力下の水の様にブヨブヨとゆがみながら浮かんでいくそれは、徐々に細長く形狀を変えていく。

 やがてそれは棒狀になり、そして剣になり、ゴッドスライムの手に握られた。右手と左手に、それぞれ同じ形の剣が握られる。

その形狀には、見覚えがあった。

「それは……エクスカリバーか?」

「へぇ、見たことあるんだ。流石だね」

勇者のみが召喚出來る武。俺が忘れるはずがない。何せ、あの剣から放たれた必殺技をけたことがあるのだから。

しかし、あの剣はこの世界とは違う次元に隔離されていて、この世界に呼び出せるのは勇者だけと聞いた事があるが。

「教えてあげよう! エクスカリバーを始めとした《神造武》は超神聖と呼ばれる神様達が造っただ。そして、ボクの持つEXスキル《神造工房・極》には、これらの《神造武》の製造方法全てが記録されて、材料を用意するだけでその武が再現できるのさ」

なる程。武の上位版という事か。しかし。

「理屈はわかったが、お前材料なんて持ってなかっただろう?」

「へへ。それがあるんだな。ホラ!」

《人化》を一部解いたのか、ゴッドスライムの顔半分が銀の流に戻る。

「って、おいおいまさか」

「そのまさかさ。この地上に存在する中でも最強の金屬。ボクのは金屬と生の両方の質を持つ《モノゾイドメタル》で出來ている。そして、エクスカリバーも材料は同じ。《無限生》で無限に増えるモノゾイドメタルを材料に、ボクはエクスカリバーをいくらでも生できるのさ」

「はっ、大したスキルじゃないか」

生唾を飲み込みながら、なんとかそう返した。エクスカリバーには、魔や魔族に対してダメージ3倍特功がついていたはずだ。それを抜きにしても、絶対に折れず絶対に刃こぼれしないという質も厄介。

「見たところ君のの鎧も、一化して生金屬になったモノゾイドメタルみたいだね。ただ純度が低い。素材が同じだから互角に打ち合える……なんて期待しない方がいいよ?」

「ご忠告ありがとうよ」

俺のは漆黒の鎧に覆われた鎧竜だ。だが、別段鎧を著けているような息苦しさはなかった。どういう事かと思っていたが、この鎧は生金屬だったのか。だが、その純度はエクスカリバーより低いという。つまり、打ち合えばこちらが砕けるということ。

さらにダメージ三倍。痛そう。

「さ、こっちから行かせてもらうよ!」

二本のエクスカリバーを手に、駆け足でこちらに向かってくる。笑顔なのが怖い。あのエクスカリバーに當たったら只では済まない。

「悪いが黙ってけ手やるつもりは無いよ」

と闇の魔法を同時にる《神聖魔法》、地獄の黒い炎を生する《獄炎核》を同時発。湧き上がる魔力を両手の中で混沌の熱へと変化させ、敵に向かって放つ。ポーズはそう、かめはめ派。

「蒸発しろ! メギドフレイム!!」

「はっ!」

の剛炎は一瞬でゴッドスライムを飲み込み、発する。その発に巻き込まれないようにバックステップで距離をとる。舞い上がった煙が天井まで屆き、未だに衰えない黒炎が凜々と燃えている。

「……ほう」

やはり。このくらいで死んではくれないか。の破壊には功したのだろう。人型は見えない。だが、ヤツが攻撃を食らったであろう場所に、球狀になった銀の塊を見つけた。それはうねうねとうねりながら、その積を徐々に増している。

《無限生》と言っていたか。恐らくモノゾイドメタルが延々と増えるのだろう。ヤツが人型の積を取り戻すのも時間の問題だ。

「だったら、待ってやる義理なんてないよなぁ」

俺は再び魔力を練り、メギドフレイムの為の溜めにる。俺が今やっているのはスポーツじゃない。だから、準備中の相手を待つ必要も無い。ここは容赦なく行かせて貰おう。

「――追撃のメギドフレイム!」

絶賛再生中のゴッドスライムに、先ほどと同規模の魔法を放つ。だが、ゴッドスライムは空中に浮いたまま、いくつもの細かい粒に分裂し、それを回避した。

分裂した銀の流ひとつは中的な人の姿に。そして殘った百余りの粒は、敵の背後でエクスカリバーへと変化を遂げる。

敵の後ろに浮かぶ百本のエクスカリバーは全てが余す事無く、その切っ先を俺に向けている。

「はは、なんだよその技、格好良いじゃないの」

ずるい。俺もそういう技が使いたい。

「格好良い? はは、面白いこと言うねキミ」

そう言って笑うゴッドスライム。だが、背後の剣を納めることは無い。照準を絞るようにジッとこちらを見據えている。逃げる事は……無理だろう。敵があのような配置をしたのは、點ではなく面で制圧するためだ。

なら。

「さて、容赦はしない。一斉撃だ――インプリズメント・ジュデッカ!」

一斉にこちらに迫ってくるエクスカリバーたち。その一本一本に大量の魔力が込められている。もし命中すれば、只では済まない。

「はは、じゃあ簡単だ。只では済まない程度なら、最初から避けなくていい」

「ってキミ!? 何故避けない!?」

俺は頭部を守るように腕をクロスさせる。とは言っても、別に頭部を守ろうとしたわけではない。俺の全は《竜裝甲・極ヴァリアントメイル》によって量の魔力で防力を大幅に上昇させる事が出來るが、それでもエクスカリバーを前にすれば紙切れ同然だ。だから、これは心の準備である。純粋に目の前に迫り來る痛みに対しての、抵抗だ。

「がっ……はああっ」

向かってきた剣が鎧を貫き、その下にあるを通り抜け向こう側へと貫く衝撃、そしてエクスカリバーによってもたらされる三倍の戦闘ダメージが遅れてやってくる。×100回。

剣山のようになった俺のは切り裂かれ、バラバラに崩れ落ちた。

「……」

言葉も出ないほどの激痛。だが意識だけははっきりとしている。これも竜種になったことで生命力が強くなったせいか。単純に辛い時間が増えているだけな気がする。

全く。せっかく最強になったと思ったのに、たった一月で新しい敵が現れて、そいつが同じくらい強いなんて。まるで年漫畫じゃないか。止めてしい。強くなったのだから、もうこうしてを張った苦戦なんてしたくないのだけれど。どうやらそうは行かないらしい。

「……終わったか」

《竜》の効果により、は完全な再生を遂げる。その間、敵のゴッドスライムからの攻撃は無かった。やたらに好戦的な笑みを浮かべ、こちらを見ている。

「どうした。トドメを刺さなくて良かったのかよ?」

「別にぃ? あの狀態で攻撃したって、君は死なないでしょ?」

まぁ、そうなんだけど。

「確かにな。あの程度で死ねていたんなら……きっとこんな所まで墮ちてくることは無かったんだろうね」

「はは、流石姉さんを倒した奴だ。言う事が違うよ」

そう言って笑うゴッドスライム。しかし今、変な事を言わなかったか? 姉を俺が倒した?

いや、待て待て待て。そんな伏線があったか? いや、無い。俺はの人を殺した事は無い。いや、フロストデビル……あれはオネェか。姉といえば姉なのか?

「時空聖竜ルミナスドラゴン。あの人、いやあの竜とボクは同じ神から造られた兄弟でね。まぁボクは姉の事が嫌いだったんだけど。倒されてしまったとあれば、多思うところもあるんだよ」

「誤解があるようだから言っておくが、俺は別にルミナスドラゴンを倒した訳じゃないぜ? ルミナスドラゴンから直接、力を使ってしいと言われたんだ」

だから、融合した。そして、今の姿と力を手にれたのだ。

「ふぅん? あのえげつない格の姉が素直にそんな事するとは思えないけどなぁ。まぁいいや。もう姉は死んでるんだし。キミは姉よりも好が持てるヤツだ。さぁ、戦いを楽しもうよ!」

姉どうでもいいんかーい。しかし、飛び切りの笑顔。思わずホレてしまいそうだ。相手は別無いけど。

さて、実ところ、俺には勝負をこれ以上長引かせるつもりは無い。そろそろ勝負を終わらせる。

一連の攻防で理解できたことは一つだけ。決定的な一つ。敵は、ゴッドスライムはそこまで戦闘慣れしているモンスターでは無いということだ。

単純に戦闘経験がないのか、それとも、一方的な殺に終始していて、互角の相手との……そう、例えば先ほどの必殺技を打った後に敵が生きていたというケースを験したことがないのではないか。

そうとしか考えられない。だって。俺の周りには100本ものエクスカリバーが、そのまま突き立っているのだから。そのの一本を抜き取って、手に持ってみる。うん。問題なくる事が出來る。

俺のサイズがデカイので、まるで玩の剣を持っているみたいな間隔だが、それで十分。

「あちゃー。そうか。そうだよね。アレをけて生き殘ったら……そう來るよね」

剣を構える。敵は口ではああ言っているが、その顔は期待に満ちていた。まるで俺がこれから何をするのか待っているかのように。いいだろう。なら見せてやろう。俺の必殺技ってヤツを。

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