《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第36話 最強の武があれば

あれから10日。俺達はずっと戦い続けた。最後にはお互い魔力を使い果たし、泥臭く毆りあい続けた。そして、ついに決著はつかなかった。

力を使い果たした俺とゴッドスライムは、地面に大の字になって倒れながら、お互いの健闘を稱えあう。

「お前の耐久力には恐れったよ。きっとこの世界の誰もお前を傷つけることはできないだろうな」

「いーや。キミの必殺技に耐えうる武がこの世に存在していたら、きっとボクなんて負けていたさ」

以前の俺だったら、一笑に付しただろう。

もとより人との爭い事は回避する質だった。喧嘩するほど仲がいいとは言わないが、毆りあう友みたいなものを、どこか冷めた目で見ていたのだから。

けれど、この戦いは違った。ゴッドスライムの面白い技を見るたびにし。工夫されたスキルを見るたびにひらめき。自分の中の新しい可能が広がっていった。どんどんコイツを好きになっていた。

互いにしのぎを削る中で、俺とコイツとの間には、確かに友が芽生えていたのだった。お互いのかなくなってから、様々な事を語り合った。

「ふぅん、神樹を切り倒すねぇ……」

「無謀だって笑うか? ってか、お前としてはここで俺を倒しておいた方がいいんじゃないか?」

し挑発するように、俺は言った。

「う~ん。聞いてしまった以上、そうなるんだけどね。けどなぁ……」

ゴッドスライムの歯切れが悪い。

「僕、もうキミの事が好きになっちゃったんだ」

「……」

いや、照れるな。コイツは見た目こそだが、中は男寄りの格。

「はっ。その好意は嬉しいぜ」

「ジー」

「えっと、何かな?」

顔を橫向きにして、俺の方をジッと見ているゴッドスライム。何だろう。俺の顔に見惚れている……訳ではないだろう。

「ボクがキミの事を好きって言ったんだぜ? キミもボクの事が好きって言うのが禮儀だろう? いや、言葉だけじゃないね。本當に好きになって貰わなくちゃ」

「なるほど。俺はゴッドスライムの事が大好きだぜ」

「おいおいゴッドスライムって……ああ、そういえば自己紹介してなかったね」

そういえば。

「ボクの名前はゴッドスライムのランページ。ランページだ。よろしく」

「俺は竜帝……七瀬素空だ。素空って呼んでくれ」

「素空か……いい名前だね」

と言いつつ、チラチラとこちらを見ている。なるほどね。言ってしい事が手に取るようにわかる。

「ランページもイカした名前だぜ」

そう言うと、ランページは満足そうにニカッと笑った。

***

お互い立ち上がれるくらいに力と魔力が回復した。肩を組みながら、ヘルズゲートの階段を上がっていく。およそ十日間戦っていたのだ。この後風呂にでもって一緒にご飯を食べようという事になった。

ランページは髪のを揺らしながらゴキゲンである。

「けど、いくら素空でも神樹を倒すのは並大抵じゃないと思うよ?」

道すがら、ランページはそんな事を言ってきた。

「永遠を超える竜の星を使えばなんとかなるんじゃないのか?」

「神樹の結界を舐めちゃ駄目だよ。あれは神たちがこの世界を作った時に植えた木だからね。魔にどうにかされないように様々な防が敷かれているのさ。いくら素空のEXスキルに防貫通が付いているといっても」

なんでも、神々は前の世界の勇者らしい。このセブンスフィルより前の世界。そこで人間と魔による大きな爭いがあった。

魔王を倒した5人の勇者。だが、その世界は既に崩壊寸前。生き殘ったのも勇者達5人だけだった。

勇者達は《リブートコード》という、使用者の願いを世界に反映する伝説のアイテムを使い、世界を作り変えたのだ。それが今のセブンスフィル。人間が魔げる、この世界だ。

その手助けをしているのが……神樹だ。

「けど、手が無いわけじゃないぜ」

ランページの目がキラリとる。そして、顔が「聞いて聞いて」と言っているので、続きを促してみる。

「素空。キミが神樹を破壊するには《永遠を超える竜の星》の力を100%発揮する必要がある」

それは……そうなのだろう。俺もそれがわかっていたから、ランページの作った複製エクスカリバーを利用しようと考えたのだ。

しかし、実際は駄目だった。複製とはいえエクスカリバーでも、途中で々になってしまう。それほどあのEXスキルは強力なのだ。自分ので試そうものなら……考えただけでも恐ろしい。

「理屈はわかるんだよ。頑丈で強力な武を通じて放つ。けど、そんな武が存在しない以上、機上の空論だ」

「それが違うんだなー。前にも言ったけれど、ボクは《神造工房・極》を持っていて、そこに載っている武は素材さえあれば全て再現できる」

それは、前にも聞いたことだ。

エクスカリバーはコイツのを形するモノゾイドメタルだけで作れる。もし素材を集める事が出來れば、他の神造武も作ることが出來るようになるという事か。

「そういう事。素材集めは大変だけどね。ねぇねぇ。外に出たら二人で最強の裝備を作ろうぜ?」

まるで彼氏にプレゼントをねだる彼のようだ。可い。

「そうだな。それが神樹を破壊する為に必要なら」

「やったー! 楽しみ過ぎるよー!」

なんて、會話が終わる頃には、俺達は地上付近に戻っていた。扉を開き、地上に戻る。

「ん……なんだこれは?」

ヘルズゲートへと続く階段のある部屋は、小さな小部屋だ。その小さな小部屋は、俺が地下にる前には無機質な部屋だったはずだが、今は謎に生活が溢れている。

置かれたテーブルと椅子、そして布団を積み重ねた謎の場所。

誰かがここで生活している? 一なんで? ホームレス? いや、だったら別に他の部屋使うだろうし。

「ん……? この気配は!」

その時だった。積み上げられた布団がモゴモゴとき出し、中から聲がした。くぐもっていて良く聞こえないが、この聲は……まさか。

「おっ、やっぱりすぞらか! 良く戻ったな」

ずぽっと布団からイデアの頭が出てきた。ちょっとびっくりした。

「何事かと思ったけど。もしかしてここでずっと待っていたの?」

「フッ。その通りだと言わせて貰おう。心配していた訳ではないのだがな。真っ先に勝利の抱擁をしてやりたくて、こうして待っていたのだ。あと、別に心配していた訳ではないぞ」

二回言わなくても大丈夫だが。しかし、心配してくれていたのか。ちょっと嬉しいな。イデアはにこやかな表のまま布団から出てきた。

「はは、もっとこっちに來い。お、ちょっと背がびたか。どれどれ確かめてや……ろ……」

背はびていないが。ようやく。その時。イデアの目が始めて俺から逸れ、橫にいたランページを捕らえた。にこやかな表が途端、驚愕の表に変わる。

「き、貴様敵ではなかったのかー!? どういう事だすぞら!? 仕留めたのではないのか!?」

「ねぇ素空ぁ。コイツ誰?」

いや、ここにる前に対面しただろうが。さてはコイツ、修羅場を演出しようとしているな。その証拠に子みたいな甘ったるい聲を出し、摑んだ俺の腕をその絶妙なサイズのにぐにぐに押し付けている。

俺はランページを無視して、イデアに弁解をする。

「確かに最初は敵だったけどね。下で戦っているに友が芽生えたんだよ」

「芽生えたのは本當に友か? とてもそうは思えんぞ」

「友だって。だからコイツ……ゴッドスライムのランページは敵じゃない」

「よろしくねー」

「いや、別の意味で私の敵になったのだが……」

良くわからないが、イデアはランページを威嚇するように唸っている。怖い。ここでイデアとの仲に亀裂がるのは嫌だな。

「おい、悪ふざけはそろそろ止せよ」

俺はランページにそう告げた。ランページは「てへへ」とべろを出す。

「はは、ゴメンゴメン。健気な素空のを、ついつい悪戯したくなっちゃってね。許してね、素空の彼さん」

じゃねーが?

「フッ、フフ。良い。なかなか話のわかるヤツだな。すぞらが友としたのもわかるというものだ」

一転、即機嫌が回復したイデアは手を腰に當ててがははと笑っている。いいのかそれで。

「構わんさ。すぞらの友達なら、私の友達も同然だ。さ、風呂を沸かしている。一緒にろう」

「やったー!」

「やったーじゃねーよ。いやいや、イデアはの子なんだからさ。俺の友達とはいえ遠慮しろよ」

「ではすぞら一人でるか?」

「いや、俺はランページと二人でるけど……」

「じゃ、駄目」

何が彼をそうさせるのか。結局、俺とランページとイデアという謎メンバーで風呂にり、背中を流し合うのだった。

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