《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第39話 派な彼は立ち上がる

狩野慎二(かのうしんじ)。

クラスメイト。不良であるが、弱い者に手は上げない派な不良であった。困っている人を助けたり、いじめられているウチの學校の生徒を助けたりと、まるで漫畫に出てくるような不良である。

180はあるタッパと屈強な筋。そして鋭い眼。もし町で絡まれたらチビること必須な強面である。彼はフルチンで出てくると、まるで生き別れの家族でも見つけたかのように目に涙を浮かべた。

「おおっ、七瀬! 七瀬じゃないか! どうしたこんなところで!」

「それはこっちの臺詞だぜ。急にスキルで消えてしまってさ。あの後、結構みんなで心配してたんだぜ?」

「ああスマンな。短絡的だったと、今でも思う。だがよ。お前が今そんな狀態でここに居るって事は。俺のあの時の判斷は、間違ってなかったんじゃないのか?」

「はは。ぐうの音も出ないね」

その後、滝の上まで昇った俺達は、狩野君の弁當を食べながら、あれからの出來事を語り合った。狩野君の持つスキルは空間転移というスキルらしい。なんでも、自分だけランダムな場所に転移できるらしい。何故そんな危険な事を? と尋ねると「ガルムというヤツがとにかく気にらなかった。勘だが」と。

ずいぶん凄い勘だった。そして、狩野くんの転移先はここ。隠れ里だった。

「始めは驚いたよ。何せ、魔人と呼ばれる奴等がいたんだからな。顔が狼のヤツも居た。だが、怖がっていたのは向こうも同じだった。だが、空腹で倒れた俺を、この里の人たちは助けてくれた。いい人たちが居るんだ」

そうか。俺にも様々な語があったように。狩野君にもあったのだろう。だから、俺も語った。コレまでの事を。

姫川のこと。

既に人間を辭めたこと。

ジオサイドのこと。

そして、ガルムの野を。

「そうか。死んだ人間を生き返らせたいか……そりゃ、大した目的だぜ」

彼は一呼吸置いて。

「ガルムはよう。その生き返らせたい人が死んだとき、どう思ったんだろうな」

「そりゃ、悲しかったんじゃないかな? いろんなものを犠牲にして、生き返らせようとしているらしいし」

「そうだろな。そうなんだろう。悲しくて悲しくてしょうがなかったんだろうよ。だがよ。だからって誰かに同じ悲しみを與えてもいいってのか? 違うだろう? それは間違っている」

凄い、剣幕だった。彼は、元々苛められっこだったという。そういうところにシンパシーをじないでもないけれど、彼のそれは俺よりもずっと強い。

「俺はこの里の連中から聞かされた。とある獣人はずっと無給無休で働かされていた。とあるエルフはずっと地下に閉じ込められ、何十年も男たちに酷いことをされていた。とあるドワーフは臓を盜られた。だがよ。こいつ等は別に悪いことをした訳じゃねーんだ。ただ、魔族として生まれただけだ。この世界は、それが當たり前なんだと。そう笑ってたぜ」

「うん」

「彼等は俺達よりずっと大人だから、きっちり心にケジメをつけているんだろう。だが、俺は許せなった。

みんな優しかった。まだ役にも立たない俺に飯をくれた。住む場所をくれた。仕事を教えてくれた。そんな良い人たちが、魔人として生まれた。たったそれだけの事で、どうして酷い目に會わなくてはならない?」

いつの間にか。彼は泣いていた。俺の表でそれに気付いたのか、狩野君は腕でそれを拭った。

「なぁ、この世界は俺達の居た世界に似ていないか?」

「確かに……似ている」

俺達が居た世界。教室にった瞬間に、全てが決まっていた。楽しそうにはしゃいでいいヤツ。隅っこで存在しないかのようにしていなければならない者。そしてげられる者。目に見えない、だが確かにあそこには、生まれ持った何かによって差が存在していた。そして、この世界も。魔族として生まれただけで、神樹の影響をける。

神樹とは、神が植えた木だ。つまり、生まれながらにして、神に拒絶されるという事。生まれながらにして、世界を呪う事を宿命づけられている。

絶佳やサミュ、そしてヴァンを始めとした六柱達。彼等も格が歪んでいるが。

無理も無いのかもしれない。だとしたら、魔族と言うのはまるで。まるで世界を憎む為に生まれてきたかのようではないか。

「けどよ七瀬。お前が作ろうとしているその……」

「ジオサイドね」

「そう、ジオサイドな。それは、魔族が人間達を倒すというものじゃなくて、対等に渡り合う為に作るだろう?」

「うん。まぁり行きだけど……」

俺の目的はあくまで姫川の解放だ。だがその前に立ちはだかる最大の障壁であるガルムを倒す。その為に神樹を倒す。その為にジオサイドを結し、ミスラ様と組む。

だんだんと遠回りになっている気がしないでもないが。

「そうか。七瀬。お前は魔族の拠り所になるんだな……」

そう言って立ち上がった狩野君は、俺の目をまっすぐ見つめる。

「神樹さえ倒せば、みんなの心もしは晴れるだろうよ。だから……俺も協力するぜ」

「本當か?」

「ああ。俺が話せば、みんなも話を聞いてくれると思うぜ」

「そりゃ助かるよ。六柱の時みたいに《殺害から始まる》を使わなくて済むよ」

「一何を言っているんだ」

「はは。この後も《蘇生でつなぐ》、《煽って有利に》と続くんだけど」

「この數ヶ月で大分逞しくなったようだな……」

そして俺達は隠れ里へと向かう。ウルドの森の南の外れ。険しい道を乗り越えた先にあるそこは、普通の農村といったじだった。家は20件程。広く広がる畑で作業をしているのは、魔族だ。中には人間もいるな。聞いていた通りだ。

「ま、まずは俺の家に來てくれよ。お茶くらいご馳走するぜ」

「そりゃありがたい。けど、手土産とか持ってきてないや」

サミュが持ってたんだけど、あいつ帰っちゃったからなー。

「別にいいさ。それにな、紹介したい人がいるんだ」

急に顔を赤くして、何やら照れた様子の狩野くん。

「紹介したい人?」

「ああ、最近知り合ったんだがな。俺みたいなヤツにも優しくて、料理が上手くて……」

おいおい、これはつまり。

「彼か? 彼なのか!?」

「ははっ! まぁそんな所だ!」

「痛い痛い。背中叩くなって」

なるほど。つまり可い彼を自慢したいという訳か。まぁ気持ちはわからなくもない。やれやれ。今日は黙って壁を毆ってやるとするか。

木で出來た簡素な家の前に到著する。中からは、ほのかに食う匂いが。

「ただいま~帰りましたよ~」

「!?」

「おっ帰りなさいませ~ダ~リン!」

急にデレデレ口調で中にっていく狩野君。どうやら中は想像以上にあまあまな空間になっていそうだ。俺の理が持つかどうか。やはりサミュに逃げられたのは失敗だっただろうか。

しかし……今中から聞こえた聲。甘々で々の聲。どこかで聞いたことがあったような……?

「今日俺の友人と會いまして。一緒に食事していいですか?」

「いやぁん! ダーリンのお友達でしたら大歓ー迎! いらっしゃいませご友人。私達のの巣に……よ……う……こ」

狩野君の彼の臺詞はそこで止まった。

「えっと……絶佳?」

ドピンクのエプロン姿で姿を表したのは、行方不明とされていた九尾の狐、絶佳だった。

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