《究極の捕食者 ~チート融合スキルで世界最強~》第40話 九尾の絶佳

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

「俺は行方不明の絶佳を探しに來たと思ったらクラスメイトを見つけ、クラスメイトの家について行ったら探していた絶佳が新妻エプロン姿で出てきた」

な… 何を言っているのか わからねーと思うが

おれも 何がおこったのか わからなかった

頭がどうにかなりそうだった… 催眠だとか超スピードだとか

そんなチャチなもんじゃあ 斷じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ。

と、コピペからスタートしたものの。いや、どういう事よ本當に。

「え……あ、あ、ああ」

「ん? どうしたんだ絶佳さん?」

絶佳の顔は真っ青になり、目は殘像が出來るほど泳ぎまくっている。俺にこの姿を見られたのが恥ずかしいのだろう。

「おいおい探したぞ(サミュが)。こんな所で何をやってフガッ!?」

突如絶佳に口を押さえられた。こ、呼吸ができねぇ!?

「どうしたんだ絶佳さん?」

「お、おほほ。ダーリン。私ちょっとこの人に用事がありますので、失禮っ!」

「フガ!?」

口を塞がれたまま、家の裏庭に連れて行かれる。そして、壁ドンをされた。恥ずかしさはピークが過ぎたのか、今は據わった目でこちらを睨んでいる。

怖い。

「ち、違うんです……これは、その」

「わかってるよ。今や隠れ里の筆頭となった狩野くんをたぶらかし、この里を手中に収めようとしたんだろ?」

狐は男をたぶらかす……なんてのは昔話でよくある話だ。

確かに絶佳は超人だ。も大きいし、おっぱいも大きい。俺だって本を知らなければ、好きになってしまったかもしれない。

孤高の不良だった狩野くんなんて、ひとたまりも無いだろう。彼が居たという話も聞かないしな。

「けど、その心配は無い。俺が直接話した。この隠れ里がジオサイドに味方してくれるよう、みんなを説得してくれるってさ」

そう告げた途端、絶佳がし怒った様な顔をした。

「ちょっとちょっと竜帝さん! ダーリンの心臓にはガルム野郎の刻印が刻まれているのをお忘れで?」

「あ、やっべ!?」

「もう……迂闊すぎます。けど大丈夫。あの程度の呪式、私の持っていた法で解除してしまいましたから」

「マジで!?」

え、凄くないこの狐ちゃん?

「なんだか急に絶佳が有能なのでは? と思えてきたよ。間違って好きになりそう」

「気の悪い事言ってんじゃねーぞカス」

「けど、絶佳がそんな技を持っているなら話は早いよ。俺の、いや君のダーリンの他の仲間も、是非解除してやってくれないか?」

途端、絶佳が目を逸らした。おいおい。マジか。姫川の心臓の刻印さえ解除してくれたら神樹なんて倒さなくていいし、ジオサイドなんてどうでもいい。そもそもガルムと戦う必要だってないんだぜ。

「あーちょっとそれは難しいかもです」

「何故だ!? 何が気にらない!? 俺の命だったらいくらでもくれてやるぞ」

「いやー。そのアイテムなんですけどね……一回きりしか使えないんです……」

「そ……そうか……殘念。いや、狩野君だけでも助かって、良かったのか」

大丈夫だ。今まで通り。ショックなんて、けては居ない。

「竜帝さん……」

絶佳に心配そうな顔をされてしまった。いつもなら「期待しちゃいました? ずあねんですたぁ!!」と煽ってきそうなものなのに。それほど、俺が落ち込んで見えたのだろう。

切り替えろ。

「ま、狩野くんの刻印を解除していたのはファインプレーだよ。流石だ」

「勘違いしないでください。私のダーリンの心臓に汚い刻印があるのが許せなかっただけです」

「う~ん」

コイツの反応。まさか。まさか。

「まさかとは思うけれど……もしかして本気で狩野くんにホレちゃってたり?」

「まっ!?」

ま……?

「ま……まさか……そんな、事は」

頬を染めて、それを恥ずかしそうに隠す絶佳。おいおい。マジかよ。

「わかった。キミの気持ちは良くわかったよ。で、きっかけはなんだったんだ?」

「ええ。それは……」

絶佳は語り始めた。狩野君との、出會いを。

***

10日前。

隠れ里のジオサイドへの加渉へと赴いた絶佳は、危機に陥っていた。

「きゃー!? 蟲、蟲!? 誰か取って取って取ってえええええええええええええ」

髪のにでっかい蟲がついたのだ。

「じっとしていろ!」

「ひゃ……!?」

そして、突如現れた狩野くんが、その蟲を取って、遠くへ投げたという。

「大丈夫かお姉さん。怪我は無かったか?」

「ず、ずっきゅーん!!!!」

***

「と、言う訳ですー。いやん恥ずかしい」

「淺っ背えええええええええええええええ」

文章にして177文字。なんという短さ。淺さ。チョロさ。

「五月蝿いです。私は今まで男に優しくされたことなんてありませんでしたから。チョロくて結構です。ダーリンも私の事を好きだと言っていますし。私の料理を味しいといってくれますし。私の事を、しているって言ってくれましたし。だから私はジオサイドを抜けて、ここで一人のとして幸せに暮らすんです!」

「まぁ、それはいいんだけどさ」

「いいんですか!?」

そんな理由があるのなら、別段引きとめはしない。けれど、一つだけ聞いておきたい事がある。

「お前。ちゃんと自分が九尾の狐だって事、告げてあるんだろうな?」

「えっ……」

「今の俺達の姿は《人化》によって一時的に得ているに過ぎない。このスキルさえなくなれば、その本は化けだぜ」

「ばけもの……」

「ああ。それを踏まえた上で、狩野くんは君を好きだと言っているのか? 普通の獣人族と勘違いしているんじゃないのか?」

「そ……それは……確かに、言ってはいないですけど」

「言ってない? マジで? それで本當のだとでも?」

「で、でも。せっかく……初めてなんですよ。私の事をしているなんて言ってくれた人は。私の正をバラしたら……きっと嫌われてしまいます。り、竜帝さん。私の事はどうか黙っていて……え、ちょっと。どうしてそんなゲスい笑顔を浮かべているんですか? 噓ですよね噓ですよね噓ですよね!? ばらしたりなんてしないですよね!?」

「おいおい、俺がこんな面白い事。バラさない訳がないじゃないか!」

「うざっけんなカス帝コラ!! いや、待ってください待ってください待ってください待ってくださいー!! 黙ってくれていたら何でもしますから。どうかどうか」

「俺に泣き落としが通用すると思ってるのか? 俺は元々お前の事が大嫌いなんだよ。殺されたくなかったら黙ってろ」

縋った手が、振り払われた。

「そもそも人間である狩野くんと化けのお前じゃ無理があるだろうが。お前なんかの勝手な心で、真っ當な人間の狩野くんを、そのレールからひきずり下ろすような事はやめてくれ」

「うぅ……酷い。酷すぎる」

泣き崩れる絶佳を置いて、俺は家の中にった。そして不思議そうな顔をする狩野君に、全てを話したのだった。

***

生まれた時から、一人だった。

たまたま発生した魔力の吹き溜まりから零れ落ちた存在。それが私だった。

生まれ持った魔力は強大で、存在するだけで世界を歪ませた。

始めは何がなんだかわからず、ただただ迫り來る脅威を振り払っていた。

その過程で様々な《スキル》をに著けていった。

人間達は私を恐れ、敬った。

生贄や貢。私の機嫌を取ろうと、皆必死だった。

そして、いつしか気が付いた。自分が特別だという事に。

それから先は、思い出すのも恥ずかしい。まさにやりたい放題。

気まぐれに人々の町を焼き、気まぐれに人々を助けたり。

あらゆる贅を盡くしたりした。

そんなある日。《人化》というスキルによって不完全ながら人になる事が出來るようになった私は、より人間に近づいた。そして、そこで初めて人の営みというモノに惹かれた。

壽命も短い、力も弱い。けれど神樹の威を借るだけの脆弱で矮小な生きだと思っていた。でも、違った。短い生の中で彼等は育ち、笑い、し、そして育てた。

その生命の、完されたサイクルに、憧れた。いつか、私も。する人と結ばれて、子供を生んで。

そんなささやかな夢を見ていた。

「人と一緒に生きたいだって? はは。冗談がきついよ」

當時唯一、私と対等に渡り合っていた人間の騎士、メディバルはそう言った。

「君は世界のイレギュラーだ。異端だ。規格外だ。君の様な存在が人類のろうなんて、図々しいにも程がある。一つの固として完された君は最初から最後まで。孤獨に生まれ孤獨に生き孤獨に死ぬしかないんだよ」

酷い言い様だったが、それが彼なりの気遣いなのだという事も理解できた。の丈に合わない夢は見るなと。

だから私は諦めたのだ。そうだ。あの時、諦めたじゃないか。

なのに。

***

「あら……ここは」

気が付けば里の外れ、湖まで來ていた。日は傾き、湖面はまるで照明の様にオレンジに輝いている。

涙は乾き、頬がぴりぴりと痛い。きっと酷い顔をしているだろう。でも、竜帝の野郎に言われるまでも無く。私はを引くべきなのだ。

私の醜い正を知れば……きっと。慎二さんの怖がる顔は見たくない。ましてや私を見て怖がる顔なんて。

「ああ、死にてぇわ」

竜帝は何故私を復活させたのだろうか。あのままあそこで寢かせておいてくれたら。こんな夢を見ることもなかったのに。こんなに苦しまずに済んだのに。

「絶佳さんっ!」

「慎二さん?」

振り向くと、そこにはつらそうな表をした慎二さんが立っていた。荒い息。一目散に駆けてきたのだという事がわかる。恐らく竜帝から話を聞いたのだろう。

「七瀬から全て聞いた。アンタの事、全部だ」

やっぱり。嫌なヤツだ。最低最悪。嫌い。

「そうですか。で? 悔しくて追いかけてきたんですか? よくも騙してくれたな。とか?」

「……」

「お気づきじゃなかったのですか? この里を手中に収める為。顔役の貴方を骨抜きにしようと近づいたまで。バレてしまったのなら仕方がありません。潔く姿を消しましょう」

ああ。結局こうなるのか。失した悲しみは、イデアちゃんを抱いてめよう。そう思っていた時。

「何勘違いしてるんだ?」

「へ?」

勘違い? 一何のことだろう。

「竜帝、いや七瀬から、確かにアンタの正を聞いたよ」

「だったら……」

「俺を舐めるな。俺はアンタが九尾……とまでは気が付かなかったが、狐のモンスターだという事は気付いていた」

「えっ……」

どういう事。

「俺を騙そうとしていたというのも噓だ。俺は小學校中學校とずっと苛められ続けてきた。だから俺に悪意を持って接してくるヤツには働くんだよ。センサーが。絶佳さん、アンタからはそれをじなかった」

ぐっ……言葉の意味は良くわからないけれど……期待してしまう。こんな熱い思いをぶつけられたら……期待してしまうじゃないか。駄目だ。それは駄目だ。

そんな淡いはここで斷ち切らないと。

「竜帝さんから聞いたはずです。化けである私と人間である貴方とでは……釣り合わない。貴方は真っ當な人間。純粋な人。優しい人。暖かい人。そんな貴方の人生を、私のわがままで滅茶苦茶にする訳には……」

「さっきから聞いていれば。お前は七瀬を何だと思っているんだ?」

「え? 深くて長い眠りに就いていた私を無理やり起こして殺害した挙句生き返らせて命令に従えと様々な仕事を押し付けてくる鬼畜のド外道だと思ってますが?」

「それが事実なら七瀬とは後でゆっくりと話し合う必要があるな」

慎二さんは額の汗を、ワイルドに腕で拭って。

「絶佳さん。アンタの正を聞いた後、七瀬に頼まれたよ。どうか絶佳をよろしく頼むと」

「え?」

どういう事だろう。あの格の悪い竜帝が? 私の為に?

『俺は立場だけだけれど。擔がれた神輿だけれど。それでも、ジオサイドの代表なんだ。協力してくれている絶佳には、絶対に幸せになってしい。そして、狩野君。君とならそれが出來ると、俺は思っている。だから隠し事はしたくなかった。俺は彼の正を君にバラす。そして、その上で、君にはアイツを好きでいてしいんだ。わがままなお願いだという事はわかってる。

けど、この家にって、絶佳のあの笑顔を見てしまったら。俺に出來る事は、君に頭を下げることくらいだ。嫌なヤツだと思っているけれど。あんな顔で笑うんだと知ってしまったら、こうするしか出來ない。絶佳のあの笑顔は、君が隣に居なくては、決してみれないんだから』

「そんなじの事を、言っていた。ジオサイドが総力を上げて、二人をバックアップをすると。まったく、不用なヤツだ」

あの竜帝が……私の為に?

「そういう奴だ。優しいヤツなのに、人に優しくする事が苦手なんだろう」

「ふふ。余計な人ですね」

ひとしきり、二人で笑い合って。目に溜まった涙を拭って。もう一度慎二さんを見つめる。おせっかいな誰かさんのおで、以前のような後ろめたさはもう無い。澄んだ心と瞳で、しい人を見る。

「やっべ。クソかっけぇ」

「はは。ようやく本當の絶佳さんに出會えた気がするよ」

しい人の手が、私の頬にれる。そして、目を閉じて。近づいてくる彼の溫と、そのぬくもりをそっと待つ。

「……ん」

***

「あー臭ぇ臭ぇ」

鍵もかけずに飛び出してしまった狩野君。家がガラ空きとは、防犯意識のかけらも無い。だから、追いかける事無く、彼の家の屋の上で二人を待っている。

全く。

「俺としたことが、悪狐の為にずいぶんとらしくない事をしてしまったぜ。失した狐をめて、彼にしてやろうかと思っていたのになーザンネンダナー」

夕暮れの風に吹かれながら、そんな事を口にしてみる。だが、隣にいる人はそんな俺の傷なんて知る由もなく、湖のほうを凝視している。狩野君とれ替わりにやって來たランページだ。

「ははっ。心にも無い事を言うもんじゃないよ素空」

そう言うランページは、さっきから湖の方を見ながら「おひょー」とか「ひゅー」とか言っている。

恐らく目に魔力を込めて視力を強化しているに違いない。

「ってか、無粋だろ。二人だけの時間にしてやれよ」

「何つまらないこと言ってるのさ。おおっ!? ねぇ素空素空! あの二人、チューしてるよチュー!

どうしよう!? ボク達もする!?」

「しねーわ。ってか、マジで覗くの止めておけよ。そろそろ怒るぞ」

「わかったよわかったよー。そんなに怒るなって」

スライム狀態になって俺に撒きつくランページ。一何故こんなに上機嫌なのか。そもそも何をしにやって來たのか。

「実はね! ボク思いついたんだよ。既存の神造武を作るんじゃなくて、そのレシピを応用して、オリジナルの武をつくろうって!」

「出來るのか?」

「出來るのさ。ボクならね!」

「それでこっちに來たのか?」

「うん! それでね。素空はこれからボクと二人っきりでダンジョンに行くんだ」

路を見守ったら。なんか唐突にダンジョンに行く事になったとさ。

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