《初心者がVRMMOをやります(仮)》胃袋を摑むのが最強の方法

ゲーム時間で二時間ほど走ったところで、休憩する事になった。

周囲が砂漠で現在いる場所がオアシスのため、カナリアでは心許ないと、ジャッジとディッチ、それから二人のAIで狩りに行っている。その間、セバスチャンは當然、休むための下準備だ。

カナリアは手持ち無沙汰になっているものの、結局は素材集めに勤しんでいた。

「あ、これ食べられる木の実だ」

固い殻に覆われた、ココナツのような実だ。この殻、何かに使えないかなぁとか、思ってしまう。

「ミ・レディ!」

々鞄にれていたら、セバスチャンが慌てたようにやってきた。

「セバスチャン?」

「何をやっているのですか!? あまり遠くへ行かないようにと私も、ジャッジ様たちも仰っていたでしょう!?」

そんなに遠くに來たつもりはなかったが、とりあえず謝っておく。

「ジャッジ様たちも戻ってきましたよ。食事にしましょう」

時間を確認したら、一時間近く素材集めをしていたようだった。そんなに経っていたとは驚きである。

「すみません」

ワンボックスカーのところにつくなり、カナリアは二人とそのAIに謝った。

「どうせ素材集めに熱中しすぎたんだろうが。気をつけろ」

ジャッジが呆れたように言う。

「はい」

「カナリア君、気にしない。ジャッジはかなり心配なだけ」

ディッチが笑って、ごそごそと鞄を漁っている。

「先生……何をやってるんですか?」

「ん? カナリア君が喜びそうなものをいくつか見繕ってきたから、あげようかと思って」

そう言って渡してきたのは金屬類や鉱石類だった。

「ありがとうございます!!」

「で、カナリア君は何を見つけてきたのかな?」

ディッチに促されるままに、カナリアは鞄の中から取り出していく。

「果と……素材か」

心したように呟いたのは、ジャッジだった。

「こちらはデザートにしましょう。ミ・レディ、今度からは私も連れて行ってください」

にっこりと微笑んで、セバスチャンが言う。カナリアはそれに頷き、食事となった。

「AIの作る食事も味しいものだな」

「セバスが特例なだけです。お茶も味しいですし」

ディッチとジャッジがほのぼのと話している。

「拠點にいれば、私が擔當しているので自然とスキルもあがっているだけです」

「いや、普通そこは飯屋に行くかPCが作るだろ」

セバスチャンの答えに、ディッチが突っ込んでいた。

「ジャッジ様が私に最初に頼んだのが料理でしたから」

「いい加減、攜帯食料に飽きてたんですよ」

「それは、分かる。これ食ったら攜帯食料に戻れねぇな」

「ディっさん、俺にこれ求めないでね」

ディッチのAIまでもが混ざって話している。ディッチのAIは年の姿をしている。だが、このAIは自立攻撃型と呼ばれるものらしく、勝手に攻撃と防、回避をするらしい。

「俺がクレリックだからね。その方がやりやすかっただけだよ」

笑いながらディッチが言っていた。

そこから最近の話になる。クエストのレクチャーは休息場で行われ、そこでアフタヌーンティの要領でお茶をしていること、カナリアはそれが當たり前だと思っていることを話せば、ディッチがかなり羨ましがった。

「くそっ。助ける立場、俺がしたかった! そうしたら毎日味い飯とおやつにありつけたのか!!」

悔しがるのはそこでいいのだろうか。カナリアの中でディッチの印象がだいぶ変わってきている。

「つか、町に降りた時お前らの拠點に寄りたい! 味い飯食わせてくれ!!」

「俺に言われても。持ち主はカナリアですし。基本フレンドのみ室ができるようになってます。フレンドはセバスも管理できるでしょうから、おかしなやつは近づけないでしょう」

「お前甘すぎ。そして、カナリア君!」

「は、はいっ!」

「俺ともフレンド登録して!!」

ご飯につられる形でディッチがフレンド登録を要請してきた。

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