《初心者がVRMMOをやります(仮)》カナリアの忘れ

そこから二時間ほどかけて、織職人がいるという町までやってきた。

「ジャス、るぞ~~」

気さくにジャッジが聲をかけていた。

「ジャッジさん、いらっしゃい。ジャスさんはもうししたら手が空きますから」

こちらはのAIかと思えば、雇ったNPCだという。AIも手伝って布を織っているらしい。

「またあいつ、手の込んだの作ってんの?」

「はい。ディスさんが細い銀のワイヤーを開発したとかで、織に混ぜるんだそうです」

その言葉にカナリアが驚いていた。

「悪い。作業場に行くぞ」

「え!? ジャスさんが怒りますよ!!」

「気にしない。行くぞ、カナリア」

「いいいい、いいんですか?」

「大丈夫じゃない? 俺も行くし」

引き摺るようにカナリアを連れて行くジャッジと、笑ってついてくるディッチだった。

「布にも使える細いワイヤーとなると、カナリアも現見てみたいだろ?」

「う……見たい、ですけど」

作業の邪魔をするのはいかがかと思ってしまう。AIたちはAIたちで親を深めるため、外でのんびりしている。

「さっきディスって呼ばれてたのが、ディスカスというPCだ。こいつも俺らの知り合い」

ディッチが歩きながら説明した。

「あいつはどちらかというと鍛冶職人だと思ってたんだが」

「俺もです。明日會わせる予定だったんですが」

「今日來てるのかね」

「サラに聞いてくるべきでしたね」

ディッチとジャッジが話している。

「いるんだったらラッキーだろ。紹介の手間が省ける」

「確かに。……で、カナリア。顔悪いぞ」

ずっと靜かなカナリアを不審に思ったジャッジが、カナリアに聲をかけてきた。

「……忘れてきました」

恐々とカナリアが口を開いた。

「何を?」

「贈りです」

「セバスが持って來て……まさか」

「セバスチャンに持たせたまま、もしくは拠點に置いてきました!」

「阿呆か! お前は!」

「ジャッジ! うるせえ!!」

カナリアに向かって怒鳴ったジャッジに、スパナと怒鳴り聲がふってきた。

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