《初心者がVRMMOをやります(仮)》初のフレンド限定クエスト 2

「いやぁ……ふぐぐ」

ぶな。敵に場所が見つかっちまう」

すぐさま口を塞いできたのは、一緒に後衛をやっているディスカスだ。

いたるところにいる、おびただしい蜘蛛の數。正直カナリアは泣いて逃げたいくらいだった。

「カナリア君。タブレットを見せなさい」

使う魔法に疑問を覚えたディッチがいそいそと見ている。AIたちはダンジョンの外に待機中である。

「やっぱり基本的な魔法しかないか。……ジャッジはそういうの向いてないからな」

最初に炎で蜘蛛を焼こうとして全員に止められ、現在はモンスターに対してDEFダウンやSTRダウンといった補助魔法ばかりを使っている。

「どうりでオリジナル魔法がないと思ったよ。魔法を使う際、タブレットを使用するのは分かってるよな?」

軽い休憩にると、ディッチが説明にった。

「カナリア君は魔法を発させる時、どうやってる?」

「えっと……炎の魔法でしたら、炎のイラストを三回タップしてます。広範囲にするときは三回目を長押しです」

「うん。それは基本。実は三回タップというのは最低限のタップで、最大で十回までタップして魔法を発させることが出來る」

「十回……ですか?」

「メテオとかになると、それくらいタップするんだ。……今は三回で十分だと思うけど、最大數を覚えておいたほうがいい。ちなみにAIたちは五回タップが限度。大が事足りるというのが理由だ。それで、だ。どうして他の魔法と組み合わせない?」

ディッチの言っている意味が分からなかった。

「さっき、ディスが毒に冒されたとき、カナリア君は『ポイズン・ディスペル』を使用した。『ポイズン・ディスペル』を発させる時の組み合わせは?」

「『ポイズン』一回と『ディスペル』二回のタップです」

これでうまくいかないことも多く、最悪は「ディスペル」を三回タップする時もある。

「だと、タップする順番としては、『ポイズン』『ディスペル』『ディスペル』の順かな?」

カナリアはその通りだとすぐに頷いた。

「そっか。ちなみに俺の場合は『ディスペル』『ポイズン』『ディスペル』『ヒール』『ヒール』の順にタップしていた」

「タップしていた?」

「そ。何度も使ううちに、新しい魔法が出來上がる。それまでは魔法も失敗が當たり前なんだ。同じ魔法三回タップというのは、『必ず功する』組み合わせであって、正しいわけじゃない。しかも、このタブレットは頭がよくて、持ち主の使い方の癖を記憶するんだ。

カナリア君が同じ魔法三回ばかりを使っていると、他が出來なくなってしまうのが難點だ」

意味が分からない。

「同じ魔法職として言わせてもらえれば、新しい魔法をどんどん開発しなさい。そうしないと、レパートリーが広がらない。カナリア君は回復と攻撃、両方出來るようになりたいんだろう?」

ジャッジから聞いたのだろう。ディッチまでもがそれを知っていた。

「だったら尚更、開発していくしかない。他のゲームと違い、これの特徴でもある。失敗して當然のゲームなんだ」

だが、他の人達とやっていて「失敗した」ではすまないはずだ。

「だからこそ、ディッチはカナリアを俺らと一緒に連れてきたんだろ」

ディスカスが笑って會話にってきた。

「カナリアは初心者なんだろ? しかもMMOもほとんどやったことがないくらいの。

……そんなんだったら、本來であれば『死に戻り』を何回も繰り返していて當然なんだ。失敗して當然。俺らは迷だと思わんぞ」

「で……でも」

「こういうところは、人生の先輩方に頼りなさい」

ディスカスの言葉に、頷けないカナリアの頭をディッチがぽんと軽く叩いた。

「そうそう。俺らは二十年以上ゲームをやってるゲーマーだからな」

「……ジャスティスさん」

「カナリア君はやれることをやっていけばいい。ゆっくりと俺たちについてこればいい」

「初心者の失敗をフォローできなかったら、ゲーマーの名前が泣く」

ディッチとディスカスが続けざまに言ってきた。

「いつも、できることからやってけって言ってるだろ? 俺も、セバスも。お前は抱え込みすぎなんだ」

「ジャッジさん」

「難しいクエストがあったら、俺らに言ってくれればいい。付き合う」

ディスカスの言葉に、カナリアは思わず泣いた。

「え!? 今の泣くとこ!?」

「いえ……。嬉しかったんです」

失敗して當たり前。大丈夫だよ。気負わないで。四人がそう言ってくれる。

「とりあえず思い切って挑戦してみようか。駄目で元々。補助魔法や回復魔法で失敗した時はディッチにすぐに言うこと。攻撃魔法は……特に言う必要ないよ。俺らに當たったら、即座にディッチが回復してくれるから」

「はいっ」

四人の心遣いに、カナリアは元気に返事をした。

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