《Creation World Online》第20話
俺たちは食事を終えてのんびりと決勝の集合場所である広場へと向かった。
俺たちより早く來て待っている奴がちらほらと見える。その中に対戦相手であるシラクモと俺が二回戦で戦ったサイカが隣同士で座っていた。なんであの2人が一緒にいるんだろうか。
俺がサイカたちの元へ行こうとするとサイカがこちらに気づいたようでこちらに歩いてくる。
「やあ、おはよう。シュウ、昨夜はお楽しみかい?」
「ああ…って待てお前なんでそんなこと知っている」
「あはは〜、簡単な話さ。シュウの顔を見れば一目瞭然りょうぜん!だって僕と同じ顔なんだもん…」
そう言って笑うサイカの顔はどことなく頬がこけていた。このゲームはどこまでリアリティを求めてるんだ。
「ねえ、そろそろ行きましょ?始まるわよ」
「ん〜、それもそうだね」
「なあ、ずっと気になってたんだけどさ」
俺は先程から疑問に思っていたことをサイカに伝える。
「ん?なに?」
「サイカお前、小學生に手を出したのか?それはもうアウトだと思うぞ」
俺がそう言った瞬間サイカがビシッと固まった。なんだ?
「へー…私のことそんな風に見てたんだ?へー…」
「お、おい待て!シラクモ!なんで怒る!?」
「言っとくけど私人してるし!21なんだけど!」
そう言ってを張るシラクモ。全然見えない、なんだこのゲームのプレイヤーたちは見た目と年齢が合わなすぎだろ。どっかの誰かさんみたいに。
「なんですか?喧嘩売ってるなら買いますよ。また縛られたいんですか?」
「え、シュウあんたそういう趣味なの?引くわー」
「おい待てやめろ誤解だ!」
アンリは不満気な表だが今やるべきことではないと判斷したのか構えていた杖を下ろした。
「ははっ、やっぱり君たちは面白いなあ。まあ、お互い頑張ろう」
「ああ、そうだな」
俺は笑いながら差し出されたサイカの手を握った。
するとその手をシラクモが手刀で強引に外す。
俺が怪訝けげんな顔をしているとシラクモはサイカの耳を引っ張る。
「なんであんたが握手してんのよ!あんたは負けたでしょうが!」
「痛い痛い痛い痛い!耳がもげる!」
「うるさい!早く行くわよ!」
そう言うとシラクモはサイカの耳を引っ張りながら歩いて行ってしまう。サイカの耳が無事なことを祈っておこう。
俺が心の中でサイカに合掌しているとアンリが俺の袖を引っ張る。
「ん?なんだ?」
「そろそろ行きませんか。もう時間がないですよ」
時間を見ると試合開始10分前だった。
「そうだな、そろそろ行くか」
「今夜はパーティーですよ!豚パーティーです!」
「しゃあ!豚のために頑張るぜ!」
そう言って俺たちは広場に走って行くのであった。
☆
試合開始10分前ということだからか先ほどまでは疎まばらにしか居なかったプレイヤーたちが今は席を埋め盡くす勢いで座っていた。
座れそうなところを探しているとキョウジからフレンドコールが飛んでくる。
「どうした?」
『席は取れたか?取れてないならこっちに來いよ!前列の石像の橫にいるからなー』
「わかった、サンキュ」
そう言ってフレンドコールを切るとアンリに向かってそのことを伝えると石像に向かって人混みをかき分けて行った。
なんとか石像まで辿り著くとキョウジがこちらに手を振る。その橫にはキョウラクの姿もあった。
「よお、シュウ。おはよう」
「やあ、シュウ君おはよう。元気そうだね」
「ああ、2人ともおはよう。席確保ありがとな」
「いいってことよ!俺たち友達だろ?」
ニカッと笑うキョウジはやはりイケメンだな、と思った。
するとキョウラクが珍しく表を曇らせて真面目な聲音でこう言った。
「僕はフレンド登録してないけど友達なのだろうか?」
「だったら今すればいいだろ!なあ、シュウ」
「そうだな、フレンド登録しようぜ」
「本當かい!?それなら申請を送るよ」
キョウラクがメニューを作すると俺の前にフレンド登録のメッセージが表示される。俺はそれを認証するとキョウラクは嬉しそうにこう言う。
「ありがとう!それじゃあこれからよろしくね!」
「こちらこそ…それにしても喜びすぎじゃないか?キョウラクのことだからフレンドなんてすぐできるだろ?」
イケメンだし。
俺がそう言うとキョウラクは苦笑いを浮かべる。なにかまずいことを聞いてしまったのだろうか。
「いや、まあ、フレンドになろうって言ってくれる子はたくさんいるんだけど昔のトラウマがね…」
「ああ、悪いことを聞いたな。すまん、忘れてくれ」
「いやいや!大丈夫だから気にしないで!」
キョウラクは焦ったような様子でそう言う。
それにしてもキョウラクってここまでがコロコロ変わるんだな。いつも飄々ひょうひょうとしていたからわからなかったぞ。
俺たちがワイワイと話をしているとステージに見たことのないプレイヤーが出てくる。
「大変長らくお待たせいたしました!それではみなさんを決勝戦の舞臺へとご案します!先生!カモンッ!」
先生?誰だそれ。
すると1人の男プレイヤー、おそらく先生と呼ばれたであろう仮面と法をにつけた人が観客席から飛び降りる。
「はい!ということでね!今からみなさんを決勝戦の舞臺である闘技場へとご案します!ちなみに提供は建築家プレイヤーのみなさまです、拍手!」
矢鱈やたらとテンションの高い司會者プレイヤーの拍手に乗って結構な人數のプレイヤーたちが拍手をすると10人ほどのプレイヤーが恥ずかしそうに頭を掻きながらお辭儀をする。
「そろそろいいかね?」
「あ、はい。先生の存在を忘れてました!それでは先生お願いします!」
「承った。【転移】」
先生と呼ばれた人が手を地面に手を著くとそこを中心に魔法陣が広がり広場にいたプレイヤーたちを包むと次の瞬間目を開けていられないほどのを放つ。
が収まったのに気がついて目を開けるとそこは見知らぬ場所だった。
前方5mほど離れた場所に対戦相手であるシラクモがいるだけでそれ以外のプレイヤーは俺たちが立っている位置よりも高い所に座っていた。
地面を爪先で叩くとコッコッという音がする。中々の度らしい。ぐるっと辺りを一周見渡すと意味ありげな門が俺の背後とシラクモの背後にある。天井は吹き抜けになっており太のが眩しい。
建築家プレイヤーの凄さにしていると闘技場の中心からし上、つまり観客たちに見える位置に大きなエアディスプレイが4枚登場する。
それぞれ俺をアップにしたもの、シラクモをアップにしたもの、全的に見ることができるもの、先生と呼ばれていたプレイヤーと矢鱈とテンションの高いプレイヤーと何故か一緒にいて未だに狀況を摑めずにいるキョウラクの姿が映っていた。あいつ何であんな所にいるんだ?
「さあ!ということで始まりました!第1回プレイヤー最強決定戦!司會は私、実況畫界1の人気者クリミアと!」
「観測者ウォッチャーのラグだ」
「そして今回は解説に勇者キョウラクさんにお越しいただいております!」
「えっ、聞いてないんですけど!?」
抗議するキョウラクを無視してクリミアは試合のルールを確認する。
「えー、ルールは今までとほとんど変わりませんが1つだけ変更點があります!今回はですね、地面にを開けることは止となっております!いいですね?シュウさん?」
「…わかった」
潛りは止か…まあ、もともと使う気は無かったけどな。
「それでは両者準備はいいですか?」
「ああ、いつでもいいぜ」
「早く始めましょ」
「レディー…ファイ!」
クリミアの開始の合図とともに俺は風魔法【風纏い[疾]】を発させると一気にシラクモとの距離を詰め、カラトスソードで斬りつける。
龍皇化しようとしていたシラクモは慌てて後方に跳ぶとなんとか一撃目を避けようとするがカラトスソードの効果である【範囲延長】の所為せいでし力を削られてしまう。
「やるわね…危なかったわ」
「そうか、次は仕留める」
「もう遅いわ」
シラクモがそう言うと突然シラクモのがに包まれてその姿を赤い龍に変える。
スキル名を唱えていない、つまり…
「思考詠唱ソートか中々やるじゃないか」
CWOこのゲームではスキルの出し方に2種類の方法がある。
1つ目は通常通り言葉に出して発する方法である。
2つ目は先程の思考詠唱である。思考詠唱はある程度慣れていないと使えないシステムでかなりの集中力を必要とする方法だ。俺は使えるがアンリは使えないんだよな。
「當たり前じゃない、このくらいできないとこれから先、生きていけるわけないでしょ?」
ケラケラとシラクモは笑うと直ぐに真剣な顔になって言う。
「言っとくけどこの姿になったからにはあんたに勝ち目はないわ。早いとこ棄権しなさい」
「はっ、笑わせんなよ。こいよ俺が最強だってことを教えてやるぜ」
「後悔しないでよ!」
その言葉と同時に吐き出された熱線に向かってカトラスソードを投げつける。
カトラスソードは熱線にぶつかると耐久値をみるみる減らしついにの粒子へと変わってしまう。しかし、熱線は勢い衰えずにそのまま先程まで俺が立っていた位置を焦がす。
俺はすかさずアイテムボックスから煙玉を取り出すと地面に投げつける。
周囲が白い煙に包まれたせいでおそらくシラクモは俺の姿を見失ったのだろうキョロキョロと辺りを見渡している。
俺はその間に勝利のために行を始めるのであった。          
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