壁に激突しこちらを睨んでいる青年のを見ると手足が曲がってはいけない方向に曲がっていた。この様子なら放っておいても大丈夫だろう。

「僕を殺すのかい？」

「殺しはしない。殺すと、泣かせちまうからな」

俺はそう言うと、壁を解除しアンリの拘束を解く。

すると、アンリは目が覚めたようでうっすらと目を開け、俺の姿を確認した途端、抱きついてくる。

「シュウ君…！シュウ君…！」

怖かったのだろう、震えている。

俺はアンリを抱きしめ返すと安心させるように頭をでて、背中をポンポンと優しく叩いてやる。

しばらくそうしていると、落ち著いたようでアンリが顔を上げる。

その顔は笑っていて、いつも通りの表だった。

「もう大丈夫そうだな」

「はい、ありがとう＿＿危ない！」

そうぶとアンリは俺を橫に突き飛ばす。

なんだ？と思い、アンリを見るとそこにはいつの間にか手足を治してアンリの前に立っている青年とから柄まで毒々しい紫の短剣を生やしたアンリの姿だった。

「アンリ！」

起き上がった俺は青年を毆り飛ばす。

すると、アンリがふらりと倒れたため慌てて支えてやる。

そしてそのに突き刺さった短剣を抜こうとしたが、短剣はズルリとアンリのに溶けるように消える。

何が起こったのかわからずにいると、青年がケタケタと笑いだした。

俺は青年に近づくと倉を摑つかみあげた。

「おい、何をした！」

「はははははは！あの方から貰ったものさ！々最の者が死にゆく様を眺めるんだな！それじゃあ…さようなら」

そう言って青年は何かを嚙み砕き、飲み込む。

その瞬間、青年のは炎に包まれた。

俺が手を離すと、しばらくの燃焼の後のち、倒れ伏すとそのままの粒子に変わっていった。その間、やつはずっと笑っていた。

ナクは兄が最期に燃え盡きた場所を見つめると、クルリと踵きびすを返した。

その時彼が何を考えているか、なんてことは俺にはわからなかった。

☆

俺はアンリの橫に座ると【鑑定】を使用する。しかし、アンリのにダメージや狀態異常は見られない。

だが、アンリの様子を見るに明らかに何かしらの狀態異常をけているはずなのだが…

その時、ザザッという音と共にアンリのに紫の砂嵐のようなが浮かび上がる。

一層苦しそうなき聲を上げるアンリ。何か手はないのか！

その時俺はある人を思い出した。

俺はアンリを擔ぎ上げると窟の外に向かって歩き出した。

ナクがその後ろをついて來ながら、俺に尋ねる。

「どこに行くの？」

「第1界層だ」

そう言って俺は第1界層を目指して歩き出すのであった。