《Creation World Online》106話

「さあ!師匠、準備はいいですか?」

「ああ、バッチリだよ…」

いつもより高い自分の聲に違和を覚えながら俺は、リーンにそう答える。

今回は、キンキチの妹であるカナはリーンのアジトに留守番である。そのカナの護衛としてウィルを置いてきた。

そして、俺達がいるのは拐が多発しているポイントである路地裏、周囲に人通りは無く、あるのは遠くから聞こえる酔っぱらいの喧嘩する聲と、犬の鳴き聲。周囲を照らすのは月明かりのみという、まさに拐には持って來いのエリアだった。

「なあ、本當に大丈夫なのか?そんな小さくて戦えるのか?」

「大丈夫だよ、今回の私達の目的は拐犯を捕まえることじゃ無くて、わざと拐される事だから」

不安そうなキンキチに、ちんちくりんになったリーンがそう言う。

「まあ、任せろ。このサイズになってもステータスは変わらないしな。最悪、どんな狀況でも逃げ出すくらいは容易い」

それでもまだ不安そうなキンキチに聲をかけようとしていると、暗闇から足音が聞こえて來る。拐犯か?

足音が近づくにつれて、こちらにやって來る人影が見えてきた。

雲から顔を覗かせた月明かりによって、照らし出されたのは、使い古された革鎧を著た中年の剣士らしき人だった。

「何やってんだお前ら。こんな夜更けに…ここは危ないぞ。親は何やってんだ?」

ハズレか、ただの良いやつかも知れん。

すると、リーンが一歩前に出る。

「お父さんとお母さんは居ないの。この間ボスに挑んで…死んじゃった…」

そう言ってリーンは目の端に涙を浮かべる。なんだこいつ演技力高すぎないか。

男はそんなリーンを見て、ニヤリと笑ったがすぐに同的な顔を浮かべる。

「そうか…可哀想に。おじさんの家に來ると良い。飯でも食わせてやろう。」

「…本當?いいの?」

「ああ、もちろんだとも!あ、俺の名前はルドリーだ。さあ、著いてこい!」

そう言って歩き出すルドリーの後ろ姿を見て、俺とリーンは顔を見合わせて笑う。

「大功だな」

「そうですね」

「おーい、何やってんだ?行くぞー」

ルドリーの聲掛けに返事をすると、俺達はルドリーの方へと駆け出した。無邪気な子供に見えるように、元気にな。

「さ、著いたぞ。中にるといい」

ルドリーに案された家屋は、お世辭にも綺麗とは言えず、部屋の壁は所々剝がれ、床はささくれが目立っていた。

「そこに座ってろ、すぐに飯を用意する」

ルドリーが部屋から出ていくと、俺達は顔を見合わせる。

「この後は間違いなくアレだな。」

「アレですね」

「アレってなんだ?」

どうやらキンキチは未だに狀況をよく分かっていないらしく「何食わせてくれるんだろ〜」などと、呑気に言っている。

「待たせたな。夕飯の殘りで悪いが遠慮せずに食ってくれ」

「いただきま〜す!」

出された材がゴロリと大量にったスープをキンキチは何の疑いもせずに貪り始める。

俺とリーンは、すぐさま鑑定眼を発させる。

◇◇◇◇◇◇◇

名稱:材たっぷりスープ

効果:食糧値上昇、麻痺5

作者:ルドリー

◇◇◇◇◇◇◇

なんともまあ、テンプレ通りだな。

俺はこのまま食べた所で、耐スキルの高さのせいで麻痺など到底しないため、ワザと【麻痺耐:超】をオフにして、スープに口をつける。

口の中に広がると野菜の旨味、それに伴って手足の先から覚が失われていく。麻痺にかかった証拠である。

「ふははは!かかったなガキども!お前らみたいなクズに優しくする奴なんているわけがないだろ!?まったく、間抜けな奴らだ。さーて、お前らの寢床に案してやるよ!」

そう言ってルドリーは、俺達を抱えると地下への階段を下っていく。

そこは巖剝き出しの牢屋があり、その中で怯えた表を浮かべる數人の子供達が居た。

ルドリーが鉄格子を開くと、子供達は怯えたように後ずさる。ルドリーはそんな子供達を見ることもなく俺達を無造作に牢屋の中に放り込むと、鍵をかける。

「おっ、お前らで丁度ノルマ達だな。ゴロッザの旦那に連絡しねえとな」

ウキウキとした足取りでルドリーは、上階へと登っていく。

ルドリーの足音が聞こえなくなると、子供達が俺達の周りに集まって來る。

「ねえ…大丈夫?」

小柄なの子が俺のを揺する。俺が【麻痺耐:超】をオンにすると、の痺れが一瞬にして消え、スッと起き上がることができた。隣を見ると、リーンも起き上がっていたが、キンキチは耐スキルを持っていないらしく、未だに地面に倒れていた。

「あの…大丈夫?」

「ん?ああ、平気だ」

最初に俺に聲をかけてくれたの子が、おずおずと尋ねてくる。この子はなんて優しいんだろうか。

俺は周囲の巖を見回してリーンの側で呟く。

「取り敢えずここまでは概ね予想通りだな」

「ですね、あとは奴らのアジトに行く方法を考えないと行けませんね」

今考えても仕方なのないことなので、俺は聲をかけてくれたの子ラナに寢床を教えてもらい、眠る事にしたのであった。

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