「んむぅ……んぅ」

「お、起きたか？　ライト」

俺が目覚めたことをじたのか、ライトがをよじる。

「んぅ……んー、あさ…ですか？　主マスター？」

「おう。……今はもう晝前だな。し寢すぎたよ」

壁に掛けてある時計に目をやり、時間を確認する。

現在時刻は十一時ちょいだ。

「主マスター、目覚めのキスを所してもよろしいですか？」

「お？　おう。仕方ないな」

俺は上目づかいでこっちを見上げてくるライトのほほに、キスしてやる。

「違います。こっちです、主マスター」

そういうと、ライトがを突き出してくる。

「あー…うー……し、仕方ないな……ん」

ちゅっと軽くにキスする。

「ありがとうございます、主マスター。おかげで目が覚めました」

「そ、そうか？　…ならいいんだよ。飯食いに行くぞ？」

「はい！　主マスターのおおせのままに」

「よしっ！　んじゃ著替えるぞ」

「はいっ！　主マスター」

俺はベッドから立ち上がり、裝備をつけなおす。

「今日はフリフリにしますっ」

ライトのほうは服まで自由に変えられるらしく、今日はフリフリのたくさんついた、ゴシックロリータ系にしたらしかった。

「どう……ですか？　主ますたー…？」

「ん？　…普通に似合っててかわいいと思うぞ？」

「そう…ですか？」

「あぁ」

実際、黒と白のフリフリスカートがとても似合っている。

「よかった…です」

「んじゃ準備はできたな？　…なら、さっさと宿を出るぞ。どこかで飯食わなきゃならんからな」

「はいっ！　主マスター！」

俺たちはチェックアウトし、街の南にある屋臺などの食べを扱っている店が集まる區畫へと向かった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「どんなものが食べたい？　見て回るにしても、何か指針があったほうがいいからね」

「私としてはやっぱり、おが食べたい…です」

「か……串焼きとステーキならどっちだ？」

「うーん……どちらかといえば、ステーキが良いです」

しばらくうんうん唸ってからの答えは、俺としてはし心配な答えだった。

「朝からステーキは重くないか？　……まぁ今は晝前だから、晝飯もかねるなら良いのかもしれんが……」

「主マスターはステーキではご不満なのですか？」

「いや、不満ではなく心配なだけさ。朝から重いものを食べて、この後行こうと思っているダンジョンで、不便にならないか…？　ってさ。胃がもたれたりしそうじゃん？」

「私はもともとが獣なので、胃がもたれる…ということはありません。しかし、主マスターは半神なのに、人間みたいな事を言うのですね？」

「あー…あぁそういえば、俺って半神になったんだったな……。ってことは、胃もたれとか関係なし？　好きなものを好きなだけ食べられちゃったりする！？」

「本當に主マスターはおかしな方ですね。半神なのに、半神の事を何も知らないみたいです？」

「実はそうなんだよね。なったは良いけど、この世界では最強に近い種族ってくらいしか知らないんだよ」

「なった…ですか？」

「あぁ。俺は転生者だからな」

「なるほどなのです。主マスターは半神になったばかりなのですね？」

「実はそうなんだ。まだこのになってから、一週間もたってないんだよ」

「そうでしたか……。では…僭越ながらこの私が、主マスターに半神についてのレクチャーをしたいと思いますが、どうです？」

「うん、よろしく頼むよ」

「かしこまりました。では…………」

ライトの話を要約すると、いろいろとこのが便利なことがわかった。

まず第一に…このは食事や睡眠などが必要ないらしい（排便もないらしいし、空腹などの狀態異常にもならないらしい）。

あくまで娯楽として楽しむだけであり、そんなに頻繁にはしないらしい（ちなみに、ライトも神狼なので必要無いそうだ）。

第二に…能力の高さだ。

運の良さを変えることは出來ないが、それ以外の能力の上昇率が高く、基礎能力も高いらしい（ここらへんはもともと知っていたのとあまり変わらない。むしろ、ポイントを使って運を上げられるので、一般的な半神よりも強くなれると思う）。

第三に…これはメリットでもありデメリットでもあるのだが、が一生そのままらしい。

能力の長はするが、見た目は変わらないということである。

半神には壽命が無いらしいので、俺はずっとこのままということだ。

この能力？というか特徴により、狀態異常にもならず健康でいられる。

しかし、俺にとってこれはデメリットでもある。

何故なら今まで語らなかったが、俺の現在の姿が子供みたいな長だということが理由である。

俺の今の長は、１６０にも満たないだろう。

現実の俺は１８０近いので、差が激しいし恥ずかしいのだ。

「なるほどね……今度変の魔法を覚えよう。そうしよう」

背がびないことを知った俺は、しショックをけていた。

「変魔法など使わなくても、主マスターの技能の一つに「千変萬化」というどんな姿にでもなれるスキルがあるはずですよ？」

「マジで！？　どうやったら使えるんだ！？」

「ふつうに千変萬化と唱えれ「千変萬化！！」ば……主マスター？」

俺は千変萬化を唱える。

すると、目線が高くなり、現実の俺と同じくらいになった。

「すごい…です。長だけばすなんて……」

「長だけって事は、顔とか変わってない？」

「はいっ！！　初めてで部分変化を使えるなんて、さすがです！！　主マスター！！」

「そ、そうか？」

「はいっ！！　自慢の主マスターです」

「そ、そうかっ」

「はいっ！」

「よしっ！　んじゃ飯食いに行くぞ！　今日は朝からステーキだ！」

「はいっ！　ありがとうですっ　主マスター」

そう言ったライトの笑顔は、とてもまぶしかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「そういえばさ、ライト？　…昨日もそうだったけど、姿によって口調が変わってるよな？」

所変わって今俺たちは、ステーキの看板の店で一人３０００円のステーキランチを食べている。

「もぐもぐ……ごくんっ。…えーっとですね、主マスター。それは、千変萬化の効果の一つなのです。部分変化ではなく全を変化させた場合、の狀態に神が引っ張られるのですよ」

ライトは俺の質問に、律儀に口の中を空にしてから答える。

「そうなのか。…ってことは、ライトは昨日から千変萬化を使ってたってことか？」

「はいなのです。…ちなみに、昨日と今日で同じ姿なのに口調が違うのは、昨日は初めての千変萬化だったからなのです」

「初めてだと何か違うのか？」

「はいっ。初めての場合に限り、神がに引っ張られる事はありません。なぜなら、その姿がデフォルトになるからです」

「じゃあなにか？　俺はこの今の姿がデフォルトになるのか？」

「主マスターの場合は違います。主マスターが使ったのは部分変化なので、神は影響されません。……というより、主マスターのデフォルトの姿はおそらく、さっきまでの子供の姿だと思われるのです」

「ま、まぢ？」

「はいなのです」

「そうなのか……。まぁたしかに、設定はいじれないもんなぁ……」

「大丈夫なのですよ、主マスター。部分変化を繰り返せば、理想の姿になることができるのですっ」

「あぁ、なるほど。それなら可能なのか……」

「でもでもっ、主マスターは主マスターのままの方が、主マスターなのですっ！」

「どういう意味だ？」

「うぅ…うまく言えないのです。……でもでもっ、主マスターは主マスターのままが良いのですっ！」

「はははっ、ありがと」

「はいなのですっ！」

「ありがとな？　ライト」

俺はライトの頭をなでる。

「よしっ！　そろそろ出るぞ？　もう１３時位だからな」

「主マスター、ちょっとお待ちをっ！　今すぐ食べ終わるのです！」

「あぁ、まだ食べ終わってなかったのか。んじゃ待つよ」

「ありがとうなのですっ。……パクパク…もぐもぐ…」

「あまり焦るなよ？」

「はいなのですっ！　……パクパク…もぐもぐ…」

「はははっ。んじゃ俺は、先に會計をすませるよ」

ライトに一聲かけてから、俺は會計をすませてしまう。

「ごちそうさまなのですっ！！」

俺が會計をすませると、どうやらライトが食べ終わったようで、俺に向かって駈けてくる。

「味しかったのですっ主マスター！」

「うん。それは良かった」

「この店にはまた來たいのですっ！　主マスターとの初デート記念のお店なのですっ！」

「デート…だったのか？　これは…？」

「はいなのですっ！　主マスターとの初デートなのですっ！！」

「はははっ。そっかそっか、初デート…か。楽しめたかい？ライト」

「はいなのですっ！　とってもとっても楽しかったのですっ！！」

「そいつは重畳ちょうじょうだ。…んじゃ行こうか？　デートの続きでダンジョン攻略だ」

「はいなのですっ！」

俺はライトを連れて、街の外へと歩き出した。