《VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい》05.私の初
私(桃香)は、龍さんのお家から帰ってきた後、すぐ自分の部屋に行って、あまりの恥ずかしさにベッドの上で悶えていました。
最初に龍さんとゲームで速人君の紹介で會った時は、ただの他人のそら似だと思っていました。しかし、マクロさんという方が龍さんのPVPの畫を見せてくださった時、しドキッとしました。
なにせ、リュウさんのき方が私の知っている猿渡龍さんと酷似していたんですから。
それからリュウさんがギルドに加して、皆でリュウさんをギルドホームへ連れて行くと、リュウさんがハヤト君と家の大きさでもめ始めました。
そこで私が、リュウさんのお家にお晝飯を兼ねてお邪魔するのはどうかと提案すると、ハヤト君が採用してすぐにお父さんに伝えに行くと言ってログアウトしてしまったので、私達もログアウトしました。
それから、四人集まってリュウさんのお家を訪ねると、本當に大きな家でしかも敷地まで広いお家でした。そして、挨拶をすると、仮定だったものが確信へ、それがさらに結果へと変わりました。
そう、リュウさんがあの猿渡龍さんだったのです! 嬉しくて思わず県大會の事を言ってしまいましたが、覚えていないのか龍さんに何故知っているのかと聞かれて、ショックで咄嗟に新聞に載っていたというのを言ってしまいました。
でも、覚えていなくて當然です。県大會が有ったのは三ヶ月前で、その上、県大會でしか會わないんですから。
しかし、龍さんのおばあさんの味しい料理を食べた後、龍さんのお部屋を見せてもらえることになり、私は龍さんのお部屋を見るなりテンションが上がってしまいはしゃいでいると、輝ちゃんが県大會の事を話し出しました。
でも、結果的に輝ちゃんが話してくれたおで、龍さんが私の事を覚えてくれていた事が分かったので良かったと思います。しかし、その後私は口がってあんなことを言ってしまいました。
もう私、龍さんのお顔を見ることが出來ません……。私は龍さんとなら一生一緒に居ても良いですが、龍さんが良くないと思うかもしれません。それに、龍さんが自分の事を庶民だと言い張っていることから、お金持ちの事をよく思っていないかもしれません。
そこまで今日の事を振り返った私は、龍さんと初めて會った兄が高一の時の事を思い出しました。
◆◇◆◇◆
「直幸、いよいよ県大會だな。優勝したら直幸がしいもの買ってやるぞ!」
「もちろん優勝するよ、父さん」
「頑張ってね、兄さん。私とお母さんが応援に行くから!」
「ああ、兄さん頑張るよ」
そんなことを県大會の前日に話しました。
次の日、兄さんたと共に県大會の會場へ行き、兄は順調に勝ち上がり決勝戦まできました。
相手は……さ、わ、た、り……猿渡? という、全く知らない人でした。これなら兄の優勝は確実だと思いました。
しかし、開始の合図と共に兄さんが不意打ちで面を打ち一本取ったと思った次の瞬間、猿渡さんが分かっていたかのように余裕の有るきでりあげ面をして、逆に兄さんが一本取られてしまいました。
その時私は猿渡さんの剣道のカッコ良さに引かれました。しかも、猿渡さんは表彰が終わった後、自分が勝った相手つまり兄さんのところへ話し掛けに來ました。
「また試合したいので、次の大會でも決勝戦まで上がって來てください。僕も上がってこれるように頑張るので」
「ああ、もちろん! リベンジさせてもらうから覚悟しておけよ!」
「わかりました。楽しみにしてます」
猿渡さんはそう言った後、兄さんの傍に居た私に気づいてニッコリとした笑顔を向けてくれました。その笑顔が、剣道をしているときとは違う魅力をじて、がドキドキしました。
家に帰ってからも、猿渡さんのお顔が頭から全く離れませんでした。
お母さんが撮った録畫をテレビに繋いで何度も何度も見直しました。猿渡さんが一本取ったときは拍手をして。
「桃香、もうすぐ夕飯よ……って、何を見ているの?」
「ああ、母さん、桃香の奴、俺の決勝のビデオを何度も見てるんだけど、猿渡が一本取ったときに拍手してんだよ」
「桃香、何でそんなことしてるの?」
「えっ!? えっと、その……」
「あっ、お前まさかあいつの事好きになったとかじゃないだろうな!?」
そう兄さんに言われて、顔が熱くなってしまってるのが自分でも分かるくらいに熱くなってしまいました。
「桃香、そうなの?」
「……うん。だって、兄さんより強いしカッコ良かったし、それに、とても優しかった」
「……そう。桃香、桃香はその人が良いの?」
「うん、猿渡さんが良い」
「ならお母さんは応援する。お父さんにはお母さんから話しておくから」
「ありがとう、お母さん!」
そんなやり取りをした次の日の朝、お父さんに呼び出されました。
「桃香、昨日の夜お母さんから聞いたんだが、直幸と決勝で當たった猿渡という子の事を好きになったんだって?」
「うん」
「そうか、お父さんも反対はしないぞ。桃香の人生だ、自分が選んだ人と一緒になることが桃香の幸せだと思ってる。どんな子か調べておいてあげるからちゃんと気持ちを伝えるんだぞ?」
「ありがとう、お父さん」
お父さんが調べると言ってから數日が経ち、やっとお父さんが調べ終えたと言ってきて、教えてくれると思ったら何故か暗い顔をしていました。
「桃香、猿渡君は可哀想な子だ。これを聞いてどう思ってどう行するかは桃香自信が決めろ」
そう言ってから始まった猿渡さんについての話は、本當に可哀想なものでした。
両親が警察で、猿渡さんが中學三年生の時にお二人とも犯人との銃撃戦で亡くなったとのことでした。それからは母方の実家にお世話になっているそうだ、ということも聞きました。
それでも私は猿渡さんの事が好きです。なので、なにがなんでも猿渡さんに気持ちを伝えて、勵ましてあげないと! そう思っていながら、次の大會でもその次の大會でもしお喋りしただけで、気持ちを伝えることは出來ませんでした。
もう一生會えないという、後悔の念に駆られながら……。
◆◇◆◇◆
しかし、その一生會えないと思ってから三ヶ月後、奇跡としか言い様のない再會を果たしました。
しかも、これからゲームで一緒に遊ぶことが出來るなんて、運命としか言えません! 家にも行けるようになるなんて、夢なのでは? と思うくらいです。
これならチャンスは幾らでもあるので、勇気を出して告白して見せます!
そう心の中で改めて宣言してみたものの、実際のところ龍さんは、私の事をどう思って居るんでしょうか……。
今日で、龍さんがおじいさんとおばあさんの事をとても大事に思ってることがわかりました。たぶんお世話になっているから恩返しをするために頑張っているんだと思います。
そこに私がるのは、邪魔になるだけなのでは? ……いや、むしろって龍さんのお手伝いをした方が良いに決まってます! そうです、諦めたらそこで試合終了だってどこかの先生も言っていました。
やっぱり私は龍さんに告白して、龍さんのお役に立てるようにしなきゃいけないですよね。
そう自分の中で整理をつけたところへドアのノックする音がしました。
『おーい、桃香? 帰ってくるなり自分の部屋に駆けって、どうしたんだ?』
「なんでもないよ! 龍さんのお家が凄くてテンション上がっただけだよ!」
『なんか理由になってない気がするけど、まあ良いか。家政婦さんがもうすぐ夕飯だからって言ってたぞ!』
「わかった、ありがとう」
お禮を言うと、兄の足音が遠退いていきました。
それから私は龍さんに告白するということを、今度は紙に書いて勉強機の橫の壁にりました。
「良し、頑張ろう!」
気持ちを新たにし、強い決意をに、夕飯を取るために私は部屋を出ました。
――これが、私の初のお話。
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