《VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい》44.モロナハスタナチヤン茸を求めて

ハヤトが恐らくからかい目的で注したであろう『幻の食材モロナハスタナチヤン茸(ダケ)を手せよ』というクエストをやることにした僕は、【キノコの森】へ一人で向かった。

ここだけの話、何回もモロナハスナ・タ・チヤンかモロナハスタ・ナ・チヤンかを聞いて、ようやく正解のモロナハスタ・ナ《・》チヤン茸ダケと言えるようになった。

何回も聞いたせいで、ハヤト,フウキ,ヒカリに呆れられたけど……。モモは、「私もそのくらい聞かないと混します」と言っていた。

まぁ、それはともかく、ハヤトに聞いたところによると、モロナハスタナチヤン茸(ダケ)の特徴は、パッと見松茸と変わらないらしい。

違うところがあるとすれば、傘の裏側のひだが松茸よりも細かいということぐらい、だそうだ。

【キノコの森】は木が生い茂り、青々とした森だった。ただ、木の本にこれでもかとキノコが生えており、本がタコの吸盤のようなじになっていた。

んな種類のキノコがあるんだな……」

そんなことを呟いて心していると、足が引っ掻かれる覚がして見下ろすと、ブランがちょこんと座っていた。

「えっ、ブラン、なんでここに?」

「クゥクゥ!」

「一緒に探す? それは嬉しいけど、勝手に付いてきたの?」

「クゥクゥ」

「えっ? モモにちゃんと言ってきたから大丈夫? いや、どうやって伝えたのさ」

「クゥクゥ!」

「ああ、やっぱり、手書きなんだね……。あれ? ブランって文字書けたっけ?」

「クゥ?」

「そうだよね、書けないよね……。じゃあ、誰が……」

わかりきった答えが出かかったその時、傍で鳴き聲がした。

「キュキュ!」

「やっぱりシアン!? というか、シアンまで付いてきたの!?」

「キュキュ!」

「キノコ探しを手伝うため? いや、僕、ちゃんとここに來る前に一人で探すって言ったよね?」

「キュキュ?」

「あ、いや、ダメではないし嬉しいけど……ま、いっか。モロナハスタナチヤン茸(ダケ)、一緒に探そうか!」

「「キュキュ!(クゥクゥ!)」」

僕が折れて一緒に探そうと言うと、シアンとブランは嬉しそうな鳴き聲を出して「えいえいおー」と片腕を挙げた。

君たち、本當に演技力が高いな……。

まぁ、せっかく來てくれたんだし、追い返すのも憚(はばか)られるので一緒に探すことにしよう。

「じゃあ、シアンはあそこの木の本を。ブランはあそこの木の本を探してくれ。僕はこの木の本を探すから」

「キュキュ!」

「クゥクゥ!」

僕が指示を出すと、シアンとブランは「任せろ~、バリバリ~」とばかりに元気よく返事をすると、割り當てた木の下へ行ってモロナハスタナチヤン茸(ダケ)を探し始めた。

む、今気づいたけど、モンスターにキノコの見分けってつくのかな?

「シアン、ブラン、キノコの見分けってつくの?」

「キュ!」

「クゥ!」

聞いてみると、「大丈夫だ、問題ない(キリッ」と答えてきた。

あのね、それ、ダメな時のフラグなんだよ? 言っちゃダメなやつなんだよ? ……本當に、大丈夫かな。

それにしても、キノコ、キノコ、キノコ、キノコ、キノコ。キノコだらけ過ぎて、見つけるのが怠くなってくる……。

そんなキノコだらけの木の本をくまなく探すも、この木の本では見つけられなかった。

シアンとブランも同様に見つけられなかった。……本當に見分けられているのか不安だけど。

ん~。これは、長引きそうな予……。

それから僕達は、それぞれ自分の近くにある木の本を探しながら、森の奧へ奧へと捜索範囲を広げていった。

しかし、中々見つからない。

さすが幻なだけはある。そう簡単には見つけられないか……。

それでも諦めずに、「あれでもないこれでもない」と、どこぞの貓型ロボットのようなことを言いながらキノコを見分け続けた。

僕がそんなことをしていると、ブランがトントンと叩いてきた。

「クゥクゥ!!」

「ん? どうした、ブラン?」

「クゥクゥ!」

あっちあっち! という鳴き聲を出しながら腕で方向を指すブラン。

いちいち気になっても仕方ないけど、演技力が有り過ぎて、人間味をじるよ……。

そんなことを思いながらブランに付いていくと、とある木の本の下に著いた。

「クゥ!」

「えっ、これ? どうしてこれだってわかるの?」

「クゥクゥ」

「えっ? これだけ匂いが違う? 嗅いだことがない? ……そんなことわかるんだ。まぁ、熊の嗅覚は犬以上らしいし、有り得なくはない か……」

そこで僕は、ハヤト達を呼んで、これがモロナハスタナチヤン茸(ダケ)かどうか確認してもらうことした。

チャットにて僕からの呼び出しを承けたハヤト達が到著し、ブランが見つけたものを見せてみると……

「こ、これは……! まさか、本當に見つけるなんて……!」

「ということは?」

「はい。これが、モロナハスタナチヤン茸(ダケ)です」

「だって、ブラン。見つけてくれてありがとう!」

「クゥクゥ!」

こんなのは朝飯前だと言わんばかりの鳴き聲を出したブランに苦笑いしつつ、シアンにも手伝ってくれたお禮を言った。

モロナハスタナチヤン茸(ダケ)を見つけたので、クエストクリアとなりモロナハスタナチヤン茸(ダケ)は僕のものになった。

とは言っても、何に使えば良いのか全く検討がつかないので、ハヤトに聞いてみると、「食材なんですから料理に使えば良いでしょ?」と呆れられながら言われた。

あっ、確かに……! 完全にモロナハスタナチヤン茸(ダケ)が食材であることをすっかり忘れてた……!

「いやぁ、それにしても、ブランはよく見つけられましたね」

「熊って犬以上の嗅覚を持ってるらしいから、キノコの匂いを細かく嗅ぎ分けられるってことでしょ」

「へぇ、知らなかったな。さすがリュウさん、知りだな」

「そうね、私も知らなかったわ」

「私は熊のことならリュウさんの次に知ってます!」

「いや、僕は雑學として知ってるだけだから、熊好きのモモには負けるよ」

僕がそう言うと、モモは「えへへ、それほどでもないですよ~」と照れながらそう言った。

食い下がるかと思ったら、意外とあっさり素直にそう言ったので安心した。こんなことで口論になるのは嫌だったから。

やり取りを終えた僕達は、ギルドホームへ帰ることにした。

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