《VRMMO生活は思ってたよりもおもしろい》46.ホラーイベント2
今、僕とモモは廃墟のビルが建ち並んだ場所に來ている。
他のプレイヤー達もちらほら見えるけど、ハヤト達は見當たらなかった。
恐らく、他の場所に行っているのだろう。
それにしても、この建ち並んでいるビルのどこかにスタンプがあるなんて、この前のモロハナスタナチヤン茸(ダケ)を見つける時と同等の難しさだな。
そんなことを思っていると、モモが話し掛けてきた。
「り、リュウさん……」
「ん? どうかした?」
「あ、あれ……」
そう言いって震えながら恐る恐る腕をあげて前方を指すモモを見てから、モモが指した方向を見てみると、し遠い前方でプレイヤーが何かから逃げ出すようにビルから出てきていた。
続々と出てくるところを見ると、どうやらあそこにスタンプがあるみたいだ。
「何があったんですか?」
そう橫を走って通り抜けようとした人に聞いてみると、その人は顔を真っ青にした狀態で一言こう言った。
「あれは無理だ、怖すぎるッ! あれじゃあスタンプ取れねぇだろ……!」
それだけ言うと、その人は走り去っていった。
あの言葉だけじゃなんとも言えないしわからないけど、余程怖いものを見てきたというのはわかった。
それと、どうやら僕が予想した通り、あのビルにスタンプがあると見て間違いないようだ。
「あのビルに行ってみようか」
「えっ、あ、う……はい……」
「大丈夫。僕がついてるんだから安心して? ね?」
「あうぅ、リュウさん、カッコ良すぎです……」
未だに僕の腕にしがみついたままのモモが、そう言って恥ずかしそうに俯いた。
それから僕とモモは、プレイヤー達が逃げ出すように出てきたビルにって順に上の階へと上がりながら探索していった。
至って何事もなく最上階へ辿り著き、そのフロアを見てみると、スタンプが置かれていた。
しかし、その周りには『あ”ぁ”、う”ぁ”』と唸る、やけにリアルな落武者達が刀を引きずりながら徘徊していた。
片腕に自分の生首を抱き抱えた落武者、頭に矢を貫通させている落武者、等々、様々な容態の落武者が居た。
確かに怖い部類にる景ではあるけど、逃げ出すほどではない気がする。まぁ、やけにリアルな上に唸り聲をあげながら徘徊しているから、逃げ出すのも無理はないか……。
「ひぃっ!? り、りりり、リュウさん!? あ、あああ、あれっ、あれっ!!」
「落ち著いてって言っても難しいかもだけど、あまり大聲を出すとこっちに來るかもしれないよ?」
「あっ、は、はい! すみません!!」
「いや、だから大聲出さないで!?」
そう言った途端に、「……あっ、しまった」と思った。
しかし、時既に遅し。そろ~っと顔を落武者達に向けてみると、落武者全員がこちらを見ていた。
次の瞬間、徘徊していた落武者達が刀を振り上げながらこっちに走ってきた。
あ、うん、これは怖いね。一斉に襲い掛かられるとトラウマレベルの怖さだ。たぶんあのプレイヤー達はこれを見て逃げ出したんだろう。
かく言う僕の隣では、今にもび出しそうなモモがをガタガタと震えさせ、歯もカタカタと音をたてている。
歯の音が出るなんて、VRって凄い……って、心してる場合じゃないでしょ! 落武者達をなんとかしないと!
一人漫才を心の中で披しつつ、落武者達をどうするか考えていると、モモが遂(つい)にんでしまった。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
よくそんなに続くなというくらい長いび聲を出した涙目のモモが、今度は僕に向かって早口でこう言ってきた。
「無理、無理、無理です、やっぱり無理です! あんなの怖すぎです、トラウマです! リュウさんの一京(いっけい)倍気持ち悪いです! ブサイクです! 見たくありません! スタンプ諦めて帰りましょう、そうしましょう!」
その言い方だと、怖さ基準がブサイクかどうかになると思うんだけど……。
というか、一京倍って、僕の顔はモモにはどんな顔に見えてるの?
そんなことを思っている間に、すぐ傍まで落武者達が迫っていた。
僕は刀を抜き放ち、落武者達と対峙した。
「待ってください、一人にしないでください! 泣きますよ? 泣いちゃいますよ? 一人にした途端に泣きますよ?」
「……じゃあ、はい。ブランを抱いてれば、しは安心でしょ?」
「そ、そうですけど、リュウさんじゃないとししか安心できません」
「クゥ!?」
ガビーンッとモモの言葉にショックをけるブラン。
こうしてる間にも落武者達は迫っている。……どうしよう?
「キュキュ」
「えっ、シアンが倒してくれるの? じゃあ、お願いするよ」
肩に乗っているシアンが落武者達を倒すと言うのでお願いすると、肩から飛び立ったシアンが落武者達に向かってブレスをぶちかました。
まさかブレスをするとは思っていなかったので、スタンプが壊れていないか心配だったけど、落武者達が塵になっただけで、スタンプは無傷で置かれたままの狀態を保っていた。
「キュキュ!」
「うん、ありがとう。おでスタンプが押せるよ」
シアンにお禮を言った僕は、震え上がっているモモを連れてスタンプの所まで行き、貰った紙にスタンプを押した。
それから、スタンプを押し終えた僕とモモは、スタンプを元の場所に戻してからビルを出た。
ビルを出ると、モモは顔が真っ青にもかかわらず、なぜか得意気にこう言った。
「こ、怖くなかったですね……! つ、次のところへ行きましょう……!」
いやいや、思いっきり怖がってたよね? 悲鳴上げたし、帰ろうとか言ってたし、一人にしたら泣くって脅しみたいなことも言ってたし、どこからどう見ても怖がってたよね?
とは口が裂けても本人には言えないので、言わないでおく。
本當に、次のところへ行っても大丈夫なんだろうか。絶対に同じことになる予がするんだけど……。
そんな僕の不安を他所に、顔が真っ青のモモが「さ、さあ、リュウさん、次行きますよ、次!」と急かしてくるので仕方なく次のところへ行くことにした。
學校と屋敷のどちらに行くのかと聞くと、「どっちも怖そう……いえいえ、なんでもないです! り、リュウさんが決めてください!」と言った。
ボソッと言ったであろう最初の部分、バッチリ聞こえてたんだけど……。怖いなら言ってくれれば中斷するのに、なんで見栄張っちゃうかな……?
まぁ、本人が行くと言う限りは何も言わないけど。
「じゃあ、屋敷へ行こうか」
「えっ、そっちですか!? ……あっ、いや、なんでもないです。行きましょう」
……全く取り繕えてなかったよ?
結構大きな聲で言っちゃってたし、なにより、思いっきり僕の顔を驚きの顔で見ながら言ってたからね?
そんなやり取りを終えた後、僕とモモは屋敷へ向かった。
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