《スキルを使い続けたら変異したんだが?》第二十七話 バーサーカー

――モーションが変わるのかッ⁉

脇腹に強い振。次いで空と地面がグルグルと互に視界へ映り、セリアの一撃で地面を転がっているのだと気付く。

追撃はなく、勢いを利用して立ち上がる。

セリアが笑顔で會場を見渡していた。

『さあ、皆様!

もうお気づきでしょうが、対人戦においては“レベルによるステータス、スキル補正”はなくなります。

つまりは、プレイヤースキルと習得したスキルが勝利のカギを握るのです!』

違和の正はそれか。

レベルの差を無くす。スキルの構次第ではどんな者でも勝てる可能があって、どんな者でも負ける可能があるということ。

観客席がどよめきに包まれる。強者の戸いと、弱者の嘆に。

「ブレイズ・ショット!」

解説の途中、再びレナがスキルを発する。

サッカーボール程の炎の弾丸を放つ、魔師の初期スキルだった。

ゆえに、その速度は容易く避けられる程度のもの。線からして、一歩下がればかわされてしまうだろう。

そうと知って放ったレナ。

狙いは、目を合わせずともわかった。

『だから、説明途中の攻撃はやめろっていうのに』

全神経を、セリアに集中する。

ぶつくさ言いながら、右足を地面から離し、後ろへ――今ッ!

ダンッ、と俺は力いっぱいに大地を蹴る。

スキルと同等とまではいかないが、一段劣る程度の速度で彼我の距離を詰める。

炎弾へ意識を取られていたセリアの対処は遅れる。右足を一歩後方に降ろした直後であったから、なおさらに。

右手による上段からの振り下ろし。完全に虛を突いた攻撃、紙一重で朱の剣に防がれる。

の顔に安堵のが滲む。俺は、ニッと笑って見せた。

――お返しだ。

真下から。俺は逆手に持った鞘を逆袈裟に振り上げ、彼の脇腹を打ち據える。

予期せぬ連続攻撃に、セリアの目が見開かれた。

「ヨルムンガンド」

その隙をついて、俺は後ろへ跳ぶ。同時、彼の足元が割れ、真っ赤なが溢れ出す。

轟音と共に発を起こし、セリアは上空へと吹き飛ばされた。

HPはもう三割もない。

くるくると宙を舞う彼が瑠璃のエフェクトに包まれる。

俺を苦しめたバッドステータス。

レナが杖を構えている。著地の瞬間にヨルムンガンドの発を合わせるつもりなのだろう。

終わった。會場中の誰もがそう確信する中、

『……いいなぁ、やっぱり』

ポツリと、セリアが呟いた言葉をマイクが拾う。

何気ない一言に、底冷えするような悪寒を覚える。

そうじたのは、俺だけではなかった。

湧き上がっていたはずのアリーナ、いつの間にか靜まり返る。

やがて重力へ引かれ始めるセリア。その相貌を見て――俺は背筋を凍らせた。

この狀況でなお、爛々と瞳をたぎらせる薄暗い笑みに。

『――戦うのって、やっぱり愉しい……ッ‼』

直後。

轟ッと彼から赤い闘気が発し、瑠璃の輝きを消し飛ばす。

「なっ……⁉」

驚愕の聲は、誰のものだったか。

セリアは闘気を纏ったまま、宙を蹴る。狙いは、レナだった。

一歩もくことが出來ず、こうとした時には終わっていた。

彗星の如き速度から放たれた一撃。レナのHPを全て刈り取る。

だが、そのし薄く半明になってしまってはいるが、になって消える様子はない。

『このようにPvPで倒された場合は拠點に戻ることはなく、裝備を失うこともないのでご安心を!

そして、お得報!

これは斧のスキルを上げることによって得られるパッシブスキル、バーサーカーですッ! その効果は、なんと! HPの三割を切った時に全ステータスを上昇させ、狀態異常を無効にします!』

司會の役割をきちんと果たす彼

だが、豹変した彼の言を観客たちがれられているかは疑問だった。

『制限時間があるので、説明はここまでッ!

さあ、愉しみましょうか、ゴーレムキラーッ!』

鬼気とした笑みを浮かべ、雙剣を構える。

俺もまた、全力で彼を迎え撃つべく、唯一のスキルを発した。

「クリムゾン・ブレイズッ‼」

元から切っ先まで、剎那に紅い焔へ染まる。

死んでもデメリットがないのならば、使わない道理はない。

は嗤った。

『あははっ! 何それ⁉ 知らない、私も知らないよ、そんなスキル!

バグッ⁉ それともスタッフたちの悪ふざけッ⁉』

瞳孔を目一杯に開いたセリアへ、俺は真紅の刃を手に迫り、逆袈裟に斬り上げた。

は雙剣を差させ、ハサミのようにけ止める。

『なるほど、このスキルでゴーレムを倒したんだ!

でも、いいやっ! あいつら許しちゃおう! おかげで私、今こんなに愉しい……ッ!』

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