《スキルを使い続けたら変異したんだが?》第三十一話 アイズ・コア

「剣士のアイドル……、その発想はありませんでした。

確かに、このゲームで人気を得るためには可いだけじゃなくて、力も伴わないといけないっていうのが、今日よくわかりましたし……その方向を目指すのも面白いかもしれません」

ナツメが微笑む。

それがいい。なら、彼のファン一號は俺だな。

そう思っていても言い出せないのは、レナが居るからか。

そうだ、力と言えば。

「レナ。アイズ戦で見せたあのマジックエンチャントっていうのは一何だったんだ?」

「ああ。そういえば、ユウトにもまだ話してなかったよね。

まあ、聞かれなかったから言わなかったんだけど。あれがゴーレムに襲われる前に私がダンジョンで手にれたユニーク裝備のスキルなんだ」

そう言って、彼は首に掛けたペンダントを持ち上げる。

「発した魔法スキルの効果を、自分の武に付與するの。

その魔法の効果範囲がでかければでかいほど、その効力は大きくなるみたい」

「ユニークスキルをユニークスキルで強化したわけか。

そりゃあ、アイズの防も貫けるわけだ」

「アイズって言えば、あの機械人形が落としたアイテムの説明、ちょっと見せてくれない?」

「? ああ、いいけど」

タブレットを開き、アイテム畫面へ。

レナが隣の席に移してくる。ナツメも気になるのか、そのままの席で畫面をのぞき込んでくる。

アイズ・コア

ゴーレムの真の姿、アイズを討伐した証。

アイズ・エナジー

専用パッシブスキル。

一日に一度、所持者のHP一割以下で最大數値分のHP、MPを徐々に回復する。

アイズ・レイヤー

専用アクティブスキル。

一日に一度、所持者のHP一割以下で使用可能。アイズの形質を得る。

「……別によって、得られるスキルが違うのね」

「アイズ・レイヤーの、形質を得るってなんでしょう?」

説明を見て、レナとナツメは俺が抱いたものと同じ疑問を述べる。

「なんのために、二つ用意されてるんだろうな。ユニーク裝備は譲渡不可能な――」

言い掛け、気付く。そう、確かに裝備は譲渡不可能。

だが、アイテムに関しては。

同じことへ思い至ったらしいハイエナが一匹、ニコリと笑いかけてくる。

「ねえ、ユウト。アイズ・レイヤーの効果、見てみたくない? 見てみたいよね?」

「悪い、ちょっと急用があったのを思い出した。

二人とも、本當に今日はありがとう」

「あ、ちょっと、冗談だってば!」

とてもそうには聞こえなかった。

が飛び掛かってくる寸前に、俺はログアウトした。

「……ふぅ」

仮想世界から帰還した俺は、ヘッドセットを取り外して一息をつく。

時計を見て、俺はぎょっと目を見開く。すでにその針は午後九時を回っていた。

機の上には雑に書かれたメモ書きと、海苔の巻かれたおにぎりが數個ラップにくるまれて置かれていた。

あれ? 晝食を取ってからすぐに闘技場へ行ったのに、なんでこんなに時間が過ぎてるんだ?

闘技場のエントリーから試合の終わりまで、二時間は掛からなかったはずだ。

それから酒場に行って祝杯を挙げたのも一時間程度。

現実とゲームで流れる時間は同じ。なら、殘りの空白の時間は一何をしていたんだ?

思い出そうとして、しかしズキッと頭が痛む。

ゲームのやりすぎだろうか。

まあ、いいか。

腹の減った俺はおにぎりを頬張り、また明日に目一杯ゲームを楽しむため、眠る準備を始めた。

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