《スキルを使い続けたら変異したんだが?》第三十三話 ギルド

思いの他、早く朝の仕事が終わってしまった。

朝食は普段通り作ったが、弁當に関しては俺が食べなかった昨日の夕食の殘りを詰め込んだためだ。

今日は涼しい方だし、再加熱もしているので問題ないだろう。

七時半。まだ約束の時間まで三十分以上あったが、俺はゲームへログインしていた。

昨日ログアウトした酒場の前に現れた俺は、人通りから離れた裏路地で和樹を待つことにする。

そこでタブレットを呼び出した俺は、ゲームで何か目新しい報がないか確認することにした。

タブレットでは、ステータス確認などの他にも運営からのお知らせや、ギルドの報を見ることが出來る。

運営からのお知らせに一件、新著があった。

件名は、『長時間のプレイについて』

容は、長時間VRゲームをプレイしていると、脳が疲労して時間覚がマヒする可能あるというもの。適度な休憩を取ってプレイを行うようにという、注意を促すものだった。

ああ、やはり昨日のはゲームのやりすぎだったのか。

しかし、數時間も覚がずれるとは恐ろしい。

でも、買ったばかりのゲームに熱中して時間を忘れるのと似たようなものか。

できる限り休憩を取るようにすることを頭にれ、次にギルドの報を見た。

ギルドの報には、マスターの名前、メンバーの人數、メンバーの最大レベル、平均レベル、募集報が記されている。

ギルドで出來ることは他のMMOとあまり変わらない。メンバー同士で遠く離れた場所でもチャットができたり、拠點が持てたりといったところだ。

ならわざわざる必要があるのかという疑問が生まれるが、まだ実裝されていないだけで大規模なレイド戦が行われる可能もゼロではない。

それを見越して、レベルが高いプレイヤーをスカウトしたり、有なギルドの面接をけたりということも頻繁に行われているようだった。

俺やレナ達も、昨日この酒場へ來る途中に様々なギルドへスカウトされ、その小競り合いに巻き込まれた。人が多かったので逃げるのは容易かったが。

平均レベルが高いものをソートすると、一番上に來たのは『蒼穹の証人』。

平均レベル43。最大は……47。あとしで俺とレナへ追い付く。

ギルドマスターの名前は、シヴァ。人數は25人で満員だ。

募集報には、ただ一言。

『強き者を求む」

文面から漂うガチギルド臭。

學業や仕事よりも、ゲームを優先してくるに違いない。

學校? お前が今やんなくちゃいけないのは、リアルじゃなくてこっちのレベルを上げることだろう。

レベル上がるまでログアウトすんじゃねえぞ。

とか言ってくるに違いない。

かつてMMO初心者だった俺が、まかり間違って廃人プレイヤーの巣窟のギルドへってしまった時のことを思い出し、を震わせる。

開始して一ヶ月以のプレイヤーをギルドにれると何か特典がもらえるイベントがあったらしく、すんなりれてしまったのだ。

あれの何が初心者救済イベントだ。危うくゲーム不振に陥るところだったわ。

以來、そういうプレイヤーたちには関わらないようにしてきた。

だが、どこのゲームにもそういうプレイヤー達は現れるようだった。

このギルドには関わらないようにしよう。

そう心に決め、俺は他のギルドの報を暇潰しに眺め始めた。

そろそろか。

タブレットに表示される時間が待ち合わせ五分前となり、放り投げて消し去る。

できれば、あまり人目には付きたくない。パッと和樹を見つけて、パッと酒場の個室へりたかった。

流石にもう來てるか?

裏路地からこっそり顔を出し……、俺はポカンと口を開いた。

酒場の前へ、鬼が居た。

歳は四十代辺り。の丈二メートル前後の筋骨隆々の。褐に焼け、割れた巖のように尖った顔立ちは、伝説上の鬼を連想させた。

丸太のような腕を組んで佇むだけで異様な圧を発する彼を、人の波は大きくて避けて通る。

なんだ、あれ? プレイヤー? NPC?

疑問に思ってタブレットを呼び出して調べると、プレイヤーだった。

アバターは元々の型によるので、恐らく現実でもああなのだろう。

森の中を歩いていたら、確実に熊と間違われて猟師に撃たれそうだ。

撃たれても平然としてそうであるが。

その名前は、シヴァ。

ついさっき見た。同じネームは使えないので、本人に間違いないだろう。

彼は、『蒼穹の証人』のマスターだった。

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