右京うきょう　六慶ろっけいは、次元兎の能力によって生き返ったことを確かめるように靜かに深呼吸をした。

(……生き返ったか。何度発してもこの能力には慣れないな)

六慶は卯うさぎの契約者であり、魔法とは違う特殊な能力を所持している――が、六慶はその能力を嫌っているため、あまり発する機會は無かった。なぜなら卯うさぎは逃げることに特化している能力が多く、六慶のしょうに合わないからだ。

六慶が使う能力はただひとつ、次元兎のみ。

次元兎は自分の死をきっかけに発する常時発能力パッシブスキルで、致命傷をうけた瞬間に発、死の危険が無い地點まで時を遡ることができる能力だ。

（まさか次元兎じげんだっとを使わされることになるとは。戦爭が終わればもう発することもあるまいと考えていたが…………驚いたな。まさかこんな小娘を相手に発させられるとは）

が剣を下げたとき、なんらかの策がある事は分かっていた。が、所詮は小細工であり、歴然と広がる力の差を埋めることなどできようはずもないと判斷したのだが――俺がの首を切り落としたと思ったそのとき、足元から信じられぬスピードで生え上がるナニカ・にを貫かれていた。

六慶には、そのナニカに思い當たる技がある――錬剣「竹林ちくりん」

（錬剣は初代國王一代のみが扱えた技で、継承者がいたという話は聞いたことが無かったが…………あるいは裏に継承者を育てていたのかもしれない）

六慶はあふれでる殺気を抑え、気を練り上げてゆく。

丹田から二の腕へ。

腕から指先へ。

指先から剣の切っ先へ。

そのとき、対峙しているの構えに予想通り――いや、経験した通りの変化が訪れた。正眼の構えから徐々に切っ先を下げ、地の構えへ。それは俺をい込むための巧妙な一手だ――が、死を超えてすべてを見てきた俺には通用しない。

剣が下がりきった所で俺の足は地をはね飛ばす。間合いは瞬時に詰められ、が程におさまると同時に何千何萬と修練を重ねた上段切りを放つ。技の至らぬ者ならば反応することさえ葉わぬきだ――が、は俺の姿をしっかりと瞳に捉えている。

本來は防のため剣を上に構え直すべきの剣は、定跡に逆らい更に下へ落ちる。その切っ先が土にれた剎那、俺の足元から長大な剣が超高速で延び上がる。

（いいタイミングだ。これは知らねば避けられまい――知らねばな）

び上がる剣が六慶の顔へ迫る。が、既に彼の重心は僅かに左へ傾いていた。六慶の顳こめかみからしぶきが舞う。

「ツっ?!」

決死の一手を外された鈴音は、その瞳に驚愕のを浮かばせた。

（なかなかの使い手だったが――恨むなら錬の覇者と関わったその非運を恨め）

顳を削られたくらいで俺の剣筋にれはない。俺の上段切りは、狙い違わずの首を撥ね飛ばした。