《聲の神に顔はいらない。》62 たった一つ……なんて言わない意地の張り方

毎日が大変なことだらけだった。何作か映畫に出たが、私には余裕がない。ハリウッドの映畫の予算は莫大で、そして役者にも莫大な金が払われてる――って思われがちだが、そんな滅茶苦茶莫大な金をもらってるのなんて、主演の人とか、既に大の人達だけだ。

まあそれでもそこらのどっかの國とか都市とかで支払われる金額よりは全然多いのは確かだと思う。一作で當たれば數年遊んで暮らせるし、派手じゃなければ、當たらなくても一応もらえるだけの分でも數ヶ月分にはなる。

私には波が來てると思ってる。運よく何作かで続けることが出來てるし、その間にしずつ知名度も上がってる。知名度が上がれば、名前で指名がる場合もなる。まあ大はオーディオが必須だし、指名がきても、監督のも求めるものと違うと、やっぱりなし……なんてのはよくある。

は実力だ。でも演技の実力というものこそ曖昧なものなんてないと思ってる。私は別にどこかで演技を習ったわけでもないし……けどそれでも何となくで実はここまできた。ハリウッドの門は案外誰にでも開かれてる。オーディションをけるだけなら、別段特別な資格なんて必要なんてない。

でも誰でもけれるからこそ倍率はすさまじい。夢見る奴が世界中から集まってくるんだからなおさらだ。私は演技というよりも容姿に自信があったからそれを利用するために優を目指した質である。田舎から出てきて、大都會に圧倒され、それでも運で摑んだ小さな糸を必死に手繰り寄せてここまできた。

人脈を作るために業界関係者と寢るなんて些細なことだ。それをれさせるのも私という人の実力だ。外野に文句なんて言わせない。

(オーレライは凄いよね。凄いけど、これ以上はいけないよ)

ここ最近……いや、數ヶ月、ずっとその言葉が頭にあった。私にそういった彼は才能があった。私なんか目じゃない演技の才能だ。けど彼は遂には一度もオーディションにかることなく消えていった。この都市から消える時、彼から私に言われた言葉。

(演技も容姿も、そしてきっと全部を捧げることができる人たちが上にいるんだよ。私達は片側しか持ってない。だからきっとダメなんだよ)

その時はそんなことない。負け犬のいいわけだと思ってた。けど……最近は限界というものをじてる。まだ私を使ってくれる人たちはいる。積極的にパーティーに參加しては自分を売り込んできた果だ。でも確実に仕事は減ってる。

コネも何度も使えるほどに甘くはない。なにせ監督とかも実力を常に求められてるのがこの世界だ。下手な役者は自分の作品の汚點になりえない。余裕があるときはいいが、余裕がないとそんな役者は使ってられないだろう。それに最近はハリウッドも順調じゃないとも聞く。

まあ役者にとっては映畫かそれ以外でそこまで違いはないけど……まだ私は優だ。けどそれがいつまで続くかは正直不安だった。

ここ最近は參加できるパーティーで玉の輿を狙ってる。限界が見えたら男を狙うのも選択肢の一つだろう。なにせここはハリウッド。大金を持ってる奴らはいっぱいいる。それにその人たちに近づく場所まではこれたんだ。だから後は玉の輿を狙って楽に生きたい所。

そんな思いでいた私だが、今は私はちょっとだけ違う。ある作品をミスターバルクから勧められて、それのせいで私にもちょっとだけ、優としてのプライドがあったのだと初めて気づいたんだ。

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