《聲の神に顔はいらない。》80 聲優でも人間でも、私にあるのはこの聲だけ

靜川秋華はなんだかんだ言ってからかいながらも本當に困ってたら助けてくれる奴だった。

何故かと言うと、プロデューサーが余りにもグイグイくるからコミュ癥の私がガクブルしてると、いい笑顔でこう言ってくれた。

「止めてください」

けど小娘の言葉なんてあのプロデューサーが簡単に聞くわけはなかった。勿論靜川秋華だとわかってただろうに流してたんだ。

だからだろう、靜川秋華も多分ちょっと面白くなかったんだろう。あれ? それを考えると私の為じゃない? 自分がぞんざいに扱われたからあのプロデューサーを追い出した?

めっちゃ謝してたんだけどなんか悪しくなったかもしれない。

「止めてください」

けど確かにその言葉であの人を追い払ってくれたのは確かだ。どんどん聲のトーンがマジのになっていく様は隣で聞いてる私も怖かった。プロデューサーが青い顔して逃げていったのも仕方ないだろう。

顔は笑顔だったんだけどね……まぁそれが余計に怖かったんだけどね。靜川秋華は普段ずっと笑顔の印象が強い。そしてそれは周囲まで笑顔にしてしまう様な笑顔だ。靜川秋華の周りには花が咲いてるとまで言われるその現象を私はここ數ヶ月目の當たりにしてる。

そんな靜川秋華が他人を前に笑顔で凄んだのだ……それは逃げ出すよ。人が怒ると怖いと聞いた事はあった。けど今までは人が本気で怒るなんてないでしょって思ってた。だって人は怒るよりも笑顔でいた方が絶対に徳だし……その方が々とよく回るじがしてた。

うまく世の中わたってくのが人である。実際、靜川秋華はそれをやってた。けど同じだからわかる。靜川秋華は本當は無理してるって。それに私といるときは時々皆に見せない顔や態度見せてたしね。けど、まさかここでまで出來るとは……私は怖くて男にあんなことできない。

逆切れとかされたら、なすすべなんてない。不健康そうな中年でも、なんかよりはよっぽど力とか腕力はある訳だからね。

そして、靜川秋華は私なんかよりもよっぽど自分自を大切にしなくちゃいけない存在だ。私がちょっと傷ついたって、それで心配する人なんて、両手も……下手したら片手で済みそうな人數しかいない。けど靜川秋華が怪我でもしようものなら、もうアニメ業界騒然だ。彼のファンたちがネットで暴れまわることだろう。それくらいに私と彼の価値は違う。

それなのに、守ってくれたのだ。てか靜川秋華の方が年下なんだけどね……

「ありがとう……」

私は小さな聲でそう言う事しか出來なかった。自分が本當にダメな人間だなって思って、靜川秋華を直視できない。

「なんのことですか? 私は目の前に私がいるのに、匙川さんばかり見てるあの人にちょっとイラッとしただけです」

そういってしてやったりみたいな顔でいう靜川秋華。それはきっと本心なんだろう。予想してた通りだし……けど、それでもやっぱり助けてもらったのは変わりない。理由はどうあれ……だからやっぱり「ありがとう」を言うしかない私を靜川秋華は止めた。

「そういう事いいです。本當に自分のためですし。でもそれじゃきっと匙川さんは納得できないんですよね?」

その言葉に私はうなずく。私がやれるものなんて靜川秋華にはない。だって向こうの方がたくさん……いっぱい持ってる。だから私には気持ちしか……そう思ってると、靜川秋華はビシッと靜川秋華が指をさしてくる。

「なら、聲で返してくださいよ。それが聲優ってものでしょ?」

そういう靜川秋華の目は、何やら燃えてるようだった。

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