《聲の神に顔はいらない。》83 道は自分で切り開けたらいいなって

結局の所、淺野芽からの協力は斷った。だってなんか怖いし。そもそもアイツに借りを作りたくはない。絶対利子とかつけて返させる奴だよあれ。だって格悪いもん。まあけど、あれで諦めたとも思えないんだけどね。だって――

「先輩、予言しますよ。先輩は私の先輩だって。だからよろしくです」

――とか訳の分からない事を言ってた。アイツはなんだか私のラジオにこだわってる。それが何故かはわからない。私の事がバズってるのがアイツ的には嫌なのかもしれない。でもそれなら協力なんてしないか……それとも協力する振りをして潰す気? ありえそうな気がする。

「けど、問題なのは淺野芽が何かやる前にこの企畫がとん挫しそうなことだよね」

今の所、ラジオの腳本家とか見つかってないし……そもそも沢山のスタッフに逃げられてる作品なのだ。ここからしバズったからって簡単にそこら辺が見つかる訳はない。でもこのままだと……私か、あのプロデューサーが書いた腳本を元にラジオをやることになる。

そんなの完全に放送事故だ。プロデューサーの奴なんてやった日には炎上さえしそうだし……私のは多分可もなく不可もなく? くらいにだと思う。でもそれってつまり面白くないんだよね。私、小説書き始めるときも設定から箇條書きにしてしまうタイプなのだ。

ラジオにそんな説明する事なんかないんだけど、絶対に面白くないラジオになるって斷言出來る。私が勇気を出して初めて投稿した小説が、ちょっとアクセスされて、それで舞い上がってたら想で「これは小説じゃない」とか書かれたの……今でもトラウマだから。

「私がやると言っちゃったんだよね……」

正確には靜川秋華のせいだが……そこら辺は今や関係ない。だって腳本をどうにかしないと、ラジオがき出すことはないのだ。どうして靜川秋華もラジオさせたいのかわからないが……てか靜川秋華に協力させた方がいいのでは? 淺野芽よりはまだ信用できる。

あんなプライド高そうなが枕とかしてそうにないし……それでいて、聲優界の現トップといっていいんだから、顔だって広いだろう。というか、事実広い。ズバズバと我が道を行ってる靜川秋華だが、それを不快にさせない心配りがある奴なのである。

ちゃんと自分の容姿とか存在とかを自覚してただツーンとしてるんじゃなく、周囲をかすのが靜川秋華というだ。だからこそ、彼が協力してくれれば……いやあわよくば靜川秋華がニコリと笑えば……いやいや、サインでも書いてもらってそれを出にでもして……

靜川秋華に謝してるが、彼のせいで大変な思いもしてるわけだしちょっとくらい協力しくれてもいいよね? 靜川秋華のネームバリューを使えば、ラジオ作家の一人や二人釣れそうである。

「うしし」

私はそんな皮算用をしてスマホを見る。靜川秋華と連絡はとりあえる。私に連絡を取りたい人なんてあんまりいないし、これまでも現場でそんな事なかったけど、靜川秋華は気を使ったのか何なのか、私の連絡先を聞いてきたから教えた。

いや本當は嫌だったけどね。プライベートと仕事は分けたい派だし。けどしがない端っこ聲優の私では、スポットライトを浴びるスターである靜川秋華の言葉に頷かない訳にはいかないのだ。まあその時は、聞くだけ聞いて連絡なんてこないんだろうって思ってたんだけどね。

そういうのよくあるし。

「……よし」

気づくと張してる。なにせ向こうから連絡は來てもこっちからしたことはなかったからだ。ただタップするだけなのに、スマホでも電話という機能をあんまり使わないからやけに……ね。それに嫌な記憶とか思い出すし……そんな事を思ってると、私のスマホが鳴った。

まさかのこのタイミングで靜川秋華? とか思ったけど、畫面に表示されてる文字は彼ではなかった。そこに表示されてる文字は『篠塚 宮』の文字だった。

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