《聲の神に顔はいらない。》356 夢見る大人

積み上がるジョッキの空きと、そしてきれいに食べられた皿の山。実はちゃんと店員さんは注文を持ってくるたびに空いたジョッキや皿は下げてはくれている。けどそれでも……溜まっていくんだ。それくらいには壯絶な食いっぷりを野村さんは見せてる。はっきり言って、口をはさむ余裕が……とか思ってると、ちょくちょくと喋ってくるんだよね。

「どうでしたか社長は?」

「え?」

「會ったんでしょう?」

「ええまあ」

なんで知ってるの? とかおもったけど、まあおかしくはないな。だって二人はに連絡くらいしてるだろう。いや、酒井武雄がに連絡なんてするとは思えないからたぶん野村さんが積極的に連絡を取ってるんだと思う。それはたぶん間違ってない。だって……

「それにしてもよく知ってますね」

「現狀を把握しておくのは大切です。他の人達はちゃんと進行表を更新してくれるんですけどね。あの人はそういう事はしないので。ただ自分の中で々と決めたりします」

「それは……」

なんて厄介な格。だってアニメが沢山の人達の力が合わさって出來るってことはあの酒井武雄だってわかってるはずだ。なのに……なのに監督である。あいつがほうれんそうをしないってなんだよ。監督なんだから皆の手本になってほしくない?

「野村さんはそれていいんですか?」

まあそれを聞くよね。だってそうとう不満溜まってるんじゃない? それにこの人の仕事量半端ないし……はっきり言ってこの人が倒れると非常にまずい。いわゆる『萬策盡きたー!!』になる可能大だ。だから今はたくさん食べて栄養を補充してもらうことに異論はない。をどせ居酒屋の會見なんてたかが知れてるし。行っても萬だ十萬とか行くことはない。でもそれは結局の所、一時的な解決策にしかならないって事だ。いや、解決策……なんて言えないだろう。問題は問題として殘ってるんだから。

「自分の役割はサポートなんですよ。彼に最高のアニメを作ってもらう……それが自分の夢なんです。だから……不満なんてないですよ。彼なら自分が見たいアニメを作ってくれると信じてますから」

本當、なんでこの人はここまで……と思う。けどそれを聞いたってあいつの才能に惚れ込んだとかそういうのしか帰ってこないだろう。だからこの人は言葉ではきっととまらないし、自分が見たい最高のアニメが出來るまでとまることはきっと無い。だって自分たちは誰しもがそういう人種だからだ。

「そうですか。でもちゃんといいたい事は言ったほうが良いですよ?」

「それは大丈夫ですよ。私たちの間に遠慮なんて無いですから」

そう行って軽く笑う野村さん。やっぱりどうすることも出來ないな。なるべく今の狀況を聞いて此ノ花さんにアドバイスを貰おう。

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