薄暗く甘ったるい匂いがする部屋で待っていると廊下から二人分の足音が聞こえた。

一人はコトッコトッという革靴特有のい足音と、ペタッペタッという素足特有の粘著質な足音。

革靴の方がカウンターの男のものだとすると素足なのは俺の相手をするの子のものだろう。

そうだと思うと何故だか腹が立ってきた。

クイーンベッドに腰掛けて貧乏揺すりをしながら待っているとガチャリとドアが開き、二人分の影がってきた。

一人はやはりあのカウンターの男。

そしてもう一人は12歳までもいかないもののそれなりにが発達した"の子"だった。

俺が発達したけれど12歳までもいかないと表現したのはその風貌からだった。

長はそれなりにあるもののあまりにも不健康そうなその型はダボダボの白いワンピースで隠されており、ワンピース獨特の の開けた襟元から見える部にはらかそうななどはほとんどなくグロテスクでリアルな肋骨が浮かび上がっていた。

顔は整ってはいるものの、その目は一切の希をじさせない暗い目をしており、前髪が切りそろえられた腰まである黒髮のロングヘアーはそのなりに似合わないほどに艶がある。

皮の所々にはり傷や炭でられたような煤が作られていた。

まともな相手ではないと言われていたがこれは予想の範囲外だった。

だってこんなの完全に。

「奴隷じゃないか・・・」

「ええ、奴隷ですよ。お客さん」

男は不敵な笑みを浮かべながらの説明をする。

「この子は國最大の犯罪グループ"ビースト"によって捕らえられた奴隷。あぁ、安心してください。この子の家族はもうどこにもいませんし、いるとしても微生の腹の中ですので。ええ、そうです、殺されたんですよ。両親はおろか、祖父祖母、親戚に至るまでがあの日のテロで全員殺されてしまいました。その中で唯一殘っていたこの子もビーストに捕まってしまい、人市場の裏取引で回されに回されてここまで來ました」

話していくにつれて男の表は変わっていき、あの不敵な笑みからは想像できないほどに哀愁に満ちた顔にり代わっていた。

「そこからの彼の人生は最悪なものだったでしょう。いや元から最悪も最悪だったのに更に転落してしまいました。ここのオーナーは。いや、ここら一帯のオーナーはこのにも仕事をさせようと言いました。もちろん相手は限られていましたが、それは多くの男のモノとり果ててしまったのです。私はそんな姿を見てどうにもいたたまれない気持ちになり、彼の世話をすることにしました。彼に許されたスペースはここの地下の一室。與えられた食べはパンと塩だけでした。なるべく栄養を取らせようと私も給料を削って彼に食べを與えました、絵本などの娯楽もできる限り與えました。しかし・・・」

自由は。

彼の存在理由だけは與えられなかった。

「だからこそお願いします。彼に外の世界を見せないでください。この世は酷いものだったと最初から思わせて、一切の希を絶たせてください。お願いします」

男は俺にそう縋り付いた。

そんな景を見ては男を勵ますように頭をでた。

それがまるで彼が知っている唯一の表現であるかのように。