《一目惚れから始まった俺のアオハルは全部キミだった...》弾き語り

バンド名も決まり、ライブに向けて演奏を仕上げて行く作業にっていた。

院中に、優輝くんがある程度仕上げた音源を持って來てくれてあったから、その曲たちに乗せる詞は仕上がっていた。

あとはわたしの詞の世界観と、優輝くんのメロディー、そして演奏面のすり合わせをしながら1曲として仕上げて行く。

手がこんなことにならなければ、もちろんベースが弾きたかった。でも、ベースが弾けなくなってしまった今は、歌に徹するしかない。逆に言えば、歌にのみ集中できるようになったということ。やはりそれは、歌に大きくプラスに働いた。

「歌う度に良くなるよ來蘭ちゃん!今のテイクの大サビの歌い崩し方良かったよ!」

「ほんと?やった!」

コンポーザーである優輝くんにそう言われるとやっぱり嬉しい!

私は小さくガッツポーズした。

優輝くんとわたしの音楽的はとても似ていて、言葉で多くを語らずとも、優輝くんの鍵盤のタッチひとつ、コードの崩し方ひとつでわたしもじ取り、応えるように歌い方を変えるし、優輝くんもわたしのブレスひとつ、歌い崩し方ひとつを決して聞き逃さないで応えてくれる。

「そろそろセットリストを決めないとなぁ…」

優輝くんがため息をひとつついた。

「よし、今日はリハはここまで!

ここからは〈セトリ會議〉だ!」

やっぱりそうちゃんは、このバンドのキャプテンだ!

そうちゃんが最終ラインを固めるキャプテンなら、優輝くんは司令塔、介くんと加奈は中盤のミッドフィールダー、そしてわたしはみんなが繋いでくれたボールを決めるストライカーといったところなのかな…なんてサッカーに例えてみたりして…

冷蔵庫から、それぞれ好きな飲みを取り出し、ソファーやラグに座った。

「やっぱり初っ端は、ドカーンと盛り上がる曲じゃないか?」

介くんらしい発想だ。

「徐々に盛り上がってって、最後が最高になる流れでしょう、やっぱり」

割とそうちゃんは堅実なこと言うんだな、なんて思ってたら、案の定

「そんな普通のライブじゃ、話題にもならないよ!」

ピシャりと優輝くんに言われ、しょげる2人…

「あのね、わたしやってみたいことがあるの…」

「何やりたいの?來蘭」

隣に居た加奈が聞いてくる

「実はね、わたし院中にリハビリにもなるから、アコースティックギターを練習していたの。右手はかないからピックは持てないんだけど、腕の上下のきは出來るから、親指の橫腹で弦にれてストロークすれば弾けるの。あんまり上手には弾けないんだけど、1曲弾き語りで歌ってみたい曲があって…」

弾き語りをすることは、右手がかないことをクローズアップすることになる。それでもやりたかった。

わたしはこれを隠すことはしたくないと思っていた。なぜなら、このかなくなった右手も含めて『わたし』だからだ。

わたしはずっとコンプレックスの塊だった。

この大きなも、このくせっも大嫌いだった。

隠したくて、いつも下ばかり向いていた。

でも今はそのどれもがおしい自分の一部だと思える。そう思えるようになったのは、そうちゃん、加奈、優輝くん、介くんに出會えたからに他ならない。

その気持ちを込めて歌いたい曲があった。

優輝くんの作った曲の中に、ひっそりと埋もれていた曲に、こっそり詞を付けた。

「いつの間にギターを…」

驚く加奈と介くん

「ちょっとじゃあ、披しよっかな」

使ってていいよと持たせてくれた紫音先生のビンテージのギターをケースから取り出した。

ひとつ深呼吸して、わたしはギターを鳴らし、歌い始めた。

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