「……あの、何ですか、これ」

早速年からの質問があったので、私は言った。

「これはな、芋の煮込みだ。芋と、それに幾つかの菜類を適當にれて、マキヤソース仕立てに味付けすれば、あっという間に完というわけだ。家庭料理としても、そこそこ有名だな」

「俺……何も注文していないんですけど」

「ここは私が食べたいものを読み取る。そして作るんだ。簡単に言えばお客さんは待っているだけで暖かいご飯が食べられる。これほどすばらしいものも無いだろう？」

「な、る程……」

年はちょっと押され気味だった。まぁ、しょうがないといえばしょうがないかもしれないな。実際問題、この店はどの世界で比べてもこの一軒しかない、非常に珍しい店だ。

だからこの店に対する疑問や「本當なの？」という考えは何ら間違っちゃいない。むしろ正しい考えだろう。

「いただきます」

手を合わせ、フォークを手に取る。……しかし、その表はどこか怪訝だ。いったい何があったというのだろうか？

そういう疑問の視線をしの間送っていたところ、彼は顔を上げて首を傾げながら、言った。

「あの……箸は無いでしょうか？」

「箸……とは？」

「二本の棒なんですが……。それを使って挾むんです。この國でこの料理を食べるときは、それが主流なもので……」

ふむ、箸か。聞いたことの無い代だが、それと同時に興味が湧いた。今度試しに仕れてみようかな。

箸は無いから、そのフォークで食べてくれないか？　私はそう言った。それを聞くとしだけ俯いて「そうですか……」と言った。なんだか悲しんでいた様子だったが、箸はここに無いのだ。申し訳ないが我慢してもらうしか無い。

一口、また一口食べていくと徐々に年のが和になっていく。

どうやら年の舌にその料理は合ったらしい。良かった良かった、先ずは一安心といえるだろう。これで舌に合わなかったら今すぐ出て行かれる可能だってあったわけだからな。

まぁ、及第點というやつだ。

「ごちそうさまでした。……ふう、何だか食べたらんなものが抜けちゃいましたよ」

食べ終わった頃には、年はすっかり笑顔を取り戻していた。はっきり言ってそれはとても嬉しいことだ。自分の作った料理で他人を喜ばせることが出來た、それだけで料理人の極みと言えることだろう。

はてさて、年は食べ終わったので普通にし休憩後に會計、そして出て行くというのがルーチンとして間違っていないことになる。

だがしかし、年は會計後（余談だが彼が払ったお金は見たことが無い紙幣と小銭だった。……換金出來るだろうか？　というか、してもらわないと困るのだが）、こんなことを言い出した。

――ここで働かせてくれませんか、と。