《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》ボルケイノの地下室・2

「こんなところに、こんな扉なんてあったか?」

俺が最初にその扉を見た時に思ったのは、そんな単純な想だった。

目の前に広がっているのは確かに扉だ。けれど、今までこんな扉を見たことが無い。正直、実を見せられるまで噓じゃないかと思い込んでいたくらいだ。

「……な、なに言っているのよ。あなたの目の前にあるそれは、まぎれもない扉でしょう? まさか、私とあなたが二人とも幻を見ているなんて言いださないわよね? はっきり言って、それこそ『幻滅』だけれど」

「何か上手いことを言ったつもりかもしれないけど、正味、そんなことは有り得ないよ。だとすれば僕たちが食べたものを疑うべきだと思うけれど、ボルケイノの皆は同じものを食べている。だからそういう薬を盛られたら解るものだと思うけれど」

「それは知っているわよ! ……じゃあ、この扉はなんだって言うのよ。ちゃんと説明出來るとでも?」

「待て。喧嘩腰になるのはよそう。ただでさえ疑心暗鬼になりがちなんだ。ここでもっと悪くなってしまうのは、正直言っても誰もんでいないぞ」

「……、」

それを聞いて若干クールダウンしたサクラ。正直そうであってなくては困るのだ。

今目の前にある扉は見たことがない。だが、それを文字通り『見たことがない』で片付けては困るというわけだ。

「と、とにかく扉を開けてよ。あなたの考えは解っているわよ。どうせまだ信用していないのだってことくらい、百も承知よ。これは張りぼてだとくらいしか思っていないのでしょう?」

「それを言われると何か先回りされたじがするのがなあ……。うん、まあ、確かにそうだよ。だって信じられっこないだろ。サクラよりも前に俺はずっとボルケイノで働いていたわけだし」

「……それとこれは、また話が別だよね?」

正論を言われてしまった。

確かにそれを言われてしまえばおしまいだ。もう俺からは何も言えやしない。

「解った、解ったよ。扉を開けて、急いで地下室に向かえばいいんだろ」

というか、そういう風に仕向けているわけだし。

「解ればよろしい」

笑顔で頷きながら、サクラは言った。

何というか今回のサクラの立場がイマイチ解らない。

とまあ、そんな戯言を考えていても時間の無駄だ。とにかく今はサクラの言うことを聞いておいたほうがいいだろう。それがの為というか、そうあるべきだった。振り回されることはあろうとも、なんやかんやで彼の考えは正しいことが多かったし、それが安全牌というわけだ。

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