源のあった場所には、一人の男が立っていた。を放っている自、人間としてはあり得ないことなのだから、やはりそこに立っているのは人間では無いのかもしれない。しかしながら、それを素直にサクラに伝えたところで彼がもっと怯えるのは到底目に見えている。だから、どうすればいいかって話だけれど――。

「もし、そこの年」

そんなことをしているうちに、聲をかけられた。

年という年齢でもないわけだが、だからといってここでそれを否定したところで語が進むわけではない。

とにかく、その人間と話をすることにした。

「……どうかしましたか？」

「いや、ちょっと目にってね。……どうして君たちはここに居るのかね。ここは私の店だ」

それを聞いて俺はピンときた。

古くにメリューさんから聞いた、このお店ができるまでの語。確かその時の話を思い出すと、ここにはかつて別の人間が経営する喫茶店があったはずだ。

ということは、今目の前にいるのはそのマスター……？

「なあ、どういうことだ。私の店は、別の人間に売られてしまったのか。今、どうなってしまっているのかを教えてくれ。……私はこんなだから、くことが出來ないのだよ」

「……このお店は、今はあなたの言う通り別の人が経営しています。そして、俺も、その人に雇われているです」

「そうか。……やはり、ボルケイノは潰れてしまったということなのか」

「いえ。ボルケイノは潰れていません。人は変わってしまいましたが、ボルケイノの看板はそのまま。下げてなどいません。まだあなたの意志は、け継がれています」

それを聞いて俯きがちになっていた男は、ゆっくりと顔を上げた。

そんなこと信じられない、といったようなじで。

「今はだれが……？」

「ええと、それは……。たぶん、あなたの知らない方になるかと……」

「それにしてもお前さん、ドラゴンのにおいがかなりしみついているな。……それでお店をやっていけているのか？　まあ、あの店は昔から冒険者ばかりやってきていたから問題ないといえば無いのかもしれないが……」

そこで彼は何か思い出したかのように、和な笑みを浮かべる。

「そういえば、昔ドラゴンの子供を助けたことがあったな。庭に弱ったドラゴンの子供が居たものだから、ミルクを與えて傷を手當したらとても喜んでいたな……。あのドラゴンは今も元気だろうか」

「ドラゴンの子供？」

それって、もしかして――。

「ねえ、ケイタ！　何か、見つかった？」

階段の前に立ち盡くしているサクラに呼びかけられた。

やばいな、そろそろ戻らないと、彼の恐怖度もピークを迎えるだろう。そう思って、俺は踵を返した。

「……なあ、年よ」

「はい？」

聲をかけられたのは、ちょうどその時だった。