キッチンにると、その甘い香りはさらに濃くなっていった。

「……何を作っているんですか？」

メリューさんはキッチンの奧に居た。甘い香りを漂わせているものは、やはり蒸籠だった。

「まん、だよ。饅頭の中に味付けした挽をれて、このシェーロンで蒸しあげた。まんは食べるか？　嫌いではないだろう？　まあ、お客さんに出す前に試しに作ってみたのだが」

「まんですか」

まんはコンビニで買うくらいしか食べたことが無いけれど、いざそう言われると、そういえばもうまんが味しい季節になったのか、というじだった。

そんなことを考えている間に、蒸籠からまんを取り出して、それを皿に置いた。

「はい。熱いから、気を付けて食べなよ」

そう注意をけて、俺はゆっくりとまんを手に取った。

確かにまんは熱かった。あれ、そういえばどうやってコンビニのまんはあまり熱くしていないのだったか――と考えていたが、「そういえば包み紙があったじゃないか」という結論に落ち著いた。

息で冷まして、思い切りかぶりつく。

口の中にと挽やタケノコ、シイタケなどが広がっていく。

味付けはやはりマキヤソースをベースにしているらしい。やっぱり和風にするにはマキヤソースが一番だよな。マキヤソースは俺の世界でいうところの醤油に近いものだし。そういえばいつだか醤油をプレゼントしたら、「これはマキヤソースじゃないか！」って驚いていたようなことがあったな。

「そうだ。そういえば、これと一緒に食べるといい」

メリューさんはそう言って何かを取り出した。

容にっているそれは、菜っ葉だった。菜っ葉の枝には実もついている。

「これ……、このまま食べるんですか？」

「ああ。でも、そのまま単品では食べないかな。普通は料理と一緒に食べるものだ。ミルシアが、この前『まんと合わせると味しいのよ！』って言っていたから、合わせてみる価値はあるかな、と」

あの王様、ほんとうに庶民の思想だよな。まあ、貴族には貴族の考えがあるのかもしれないし、貴族の料理は飽きてしまっているのかもしれないけれど。

そもそも國の主がそういう庶民的価値観を持っていることは、國民からすれば大変有難いことなのかもしれないが。あるいは、パフォーマンスとけ取る人も居るかもしれない。それは、まあ、人それぞれ。

はてさて。

本題に戻ることにしよう。

メリューさんが差し出してきた菜っ葉。それとまんを一緒に食べる。正直サイズがそれなりに大きい（まんに載せるとはみ出るくらい）ので、どうやって食べようかと四苦八苦していたが、

「適當に手で千切ればいいだろうが。そんな、橫著しなくても料理は逃げていかない」

メリューさんからダメ出しを食らったので、仕方なく皿にまんを置いて、その通りに手で千切ることにした。