《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》倉庫の掘り出し・後編

一口大に菜っ葉を千切ってそれをまんの上に載せる。そして、菜っ葉が落ちないように慎重にそれごと口に運んだ。

口の中に広がるのはさっきの味付け――だけではなかった。ピリリと辛さが効いていた。

「これってもしかして、からし菜……?」

「その通り。からし菜という名前はあなたの世界で使っている名前だったかしら。こちらでは、『アクタナ』と呼ばれているよ」

アクタナ、か。

聞いたことは無いけれど、きっとからし菜と同じ類なのだろう。

それにしても想像以上に辛さが効いている。そういえば、まんにからしをつける食べ方もあると聞いたことがあるし、ミルシア王陛下が言っていた食べ方とはそのことを言っているのかもしれない。もっとも、辛子(いわゆる辛子や和辛子)とはまた別の食べ方になるのかもしれないが。

「どうだ? アクタナは味しいか。これは因みにここの庭で採れた奴だ。家庭菜園、というやつだな」

「家庭菜園……そういえば昔そんなことを言っていましたよね。今って誰が管理しているんですか? ほら、ボルケイノの普段の一日じゃ、家庭菜園を管理する時間なんて見つからないですよね」

「そりゃあもう……」

「私たち!」

「二人でーす!」

メリューさんの後ろからひょっこり出てきたのはシュテンとウラだった。

「二人があの家庭菜園を管理しているのか」

俺はシュテンとウラを見て、ゆっくりと頷いた。

シュテンとウラの手にも、俺が持っているのより一回り小さいまんがあった。どうやら俺よりも早く――ほんとうの一番手として試食しているようだった。

まあ、別にそれについてはどうだっていいのだけれど。

「最近シュテンとウラを営業中に見かけないな……と思っていたけれど、まさかそんなことをしていたなんて」

「えへへ」

俺の言葉を聞いて、恥ずかしいのか笑みを浮かべながら頭を掻くシュテンとウラ。

再びアクタナを千切ってまんと一緒に頬張る。これがあると無いとでは話が違う。普通にそのまま食べれば辛味が出てしまうのだろうけれど、まんの脂がそれを中和してくれる。そして辛味は脂を中和するから――ちょうどうまい合に、爽やかなじになるのだ。

そうして気が付けばあっという間にまんが手の中から無くなってしまっていた。

「メリューさん、とても味かったです」

「……もっと食べたいのでしょう?」

メリューさんの言葉に、俺は顔を上げる。

メリューさんは悪戯っぽく笑みを浮かべ、ウインクする。メリューさんの前にある蒸籠は今も蒸気をあげていて、甘い香りを漂わせていた。どうやらいつの間にかまんを蒸かしているらしい。

「まだ作っていた分はあるからね。幾らでも食べていいよ。ただ、ちょっとだけ時間はかかるけれどね」

「それならぜひ、お代わりをください」

――そのあと俺が合計三つまんを頬張ることになるのだが、それはまた別の話。

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