《(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~》ダークエルフとその一行・承
メリューさんがどこかから取り出したのは、塩辛だった。
「……塩辛、ですか?」
「味をつけるならただの塩でもいいんだけれど、やっぱりこれが一番よね。ああ、そういえばあなたの世界では塩辛って言うのかな。私はこれをソレインと呼んでいるよ。ソレインは塩の味が濃いからこういうものにトッピングとして追加するのが一番良いのよ」
ソレイン、か。
見た目そのものは塩辛に見えるけれど、どうやら呼び名は違うらしい。
「ソレインをつけて、ほら、食べてみな。しは解っておかないと」
そう言われて、メリューさんはふかした芋にソレインをつけて俺に差し出した。
「ほら」
そうしてメリューさんから皿をけ取ると、俺はそのふかした芋を口に運んだ。
味い。
芋の甘味と、それを引き立てるようなソレインの塩気。……それにしてもソレインには何がっているのだろうか。日本の塩辛は獨特な風味があるので、人を選ぶ味のような気もしないでもないが。
「どうだ、ケイタ? こっちの世界の料理も、なかなか味だろ」
「ええ、そうですね。……それに、塩辛……あ、向こうの世界では塩辛って言う似たような食べがあるんですけれど、それよりも癖が無いので、寧ろ食べやすいほうかもしれないです」
「そいつは結構。……ふうん、シオカラね。ぜひとも食べてみたいものだけれど」
「癖が強いので、メリューさんの舌に合うかどうかは解りませんよ」
「そいつは食べてみないと解らないだろう? ……まあ、それは道理だ。とにかく、これを早く出してあげてくれ。酒は未だだったか?」
「そうですね。未だです。もしかしたら、もうしびれを切らしているかも」
「だったらさっさと出して來い。どういうものとか言っていなかったから、取り敢えずエールでいいだろ。あ、ケイタの世界ではビールというんだったか? いずれにせよ、それを出しておくといい。確かあの世界での主流はエールだったはずだ」
「エールにソレイン、ですね……。解りました、それじゃ持っていきます」
そうして俺は、エールの瓶を持ってくるために保冷庫へと向かうのだった。
保冷庫へ向かう道中、サクラに出會った。
「あら、ケイタ。どうしたの、こんなところまで?」
「それはこっちの臺詞だ、サクラ。お前、まだ営業時間中だぞ。まさかサボリじゃ」
俺が言葉を言い切る前に、サクラは俺の頭を毆ってきた。
まだ言葉を言い切っていないだろ! 舌を嚙むぞ!
とまあ、そんな文句を言おうとしたが、それよりも先にサクラが持っているものに視線を移した。
それは空の皿が載っている盆だった。
「……ああ、そうか。シュテンとウラの晝食を片付けていたんだな?」
その言葉にサクラはコクリと頷く。
- 連載中87 章
じょっぱれアオモリの星 ~「何喋ってらんだがわがんねぇんだよ!」どギルドをぼんだされだ青森出身の魔導士、通訳兼相棒の新米回復術士と一緒ずてツートな無詠唱魔術で最強ば目指す~【角川S文庫より書籍化】
【2022年6月1日 本作が角川スニーカー文庫様より冬頃発売決定です!!】 「オーリン・ジョナゴールド君。悪いんだけど、今日づけでギルドを辭めてほしいの」 「わ――わのどごばまねんだすか!?」 巨大冒険者ギルド『イーストウィンド』の新米お茶汲み冒険者レジーナ・マイルズは、先輩であった中堅魔導士オーリン・ジョナゴールドがクビを言い渡される現場に遭遇する。 原因はオーリンの酷い訛り――何年経っても取れない訛り言葉では他の冒険者と意思疎通が取れず、パーティを危険に曬しかねないとのギルドマスター判斷だった。追放されることとなったオーリンは絶望し、意気消沈してイーストウィンドを出ていく。だがこの突然の追放劇の裏には、美貌のギルドマスター・マティルダの、なにか深い目論見があるようだった。 その後、ギルマス直々にオーリンへの隨行を命じられたレジーナは、クズスキルと言われていた【通訳】のスキルで、王都で唯一オーリンと意思疎通のできる人間となる。追放されたことを恨みに思い、腐って捨て鉢になるオーリンを必死になだめて勵ましているうちに、レジーナたちは同じイーストウィンドに所屬する評判の悪いS級冒険者・ヴァロンに絡まれてしまう。 小競り合いから激昂したヴァロンがレジーナを毆りつけようとした、その瞬間。 「【拒絶(マネ)】――」 オーリンの魔法が発動し、S級冒険者であるヴァロンを圧倒し始める。それは凄まじい研鑽を積んだ大魔導士でなければ扱うことの出來ない絶技・無詠唱魔法だった。何が起こっているの? この人は一體――!? 驚いているレジーナの前で、オーリンの非常識的かつ超人的な魔法が次々と炸裂し始めて――。 「アオモリの星コさなる」と心に決めて仮想世界アオモリから都會に出てきた、ズーズー弁丸出しで何言ってるかわからない田舎者青年魔導士と、クズスキル【通訳】で彼のパートナー兼通訳を務める都會系新米回復術士の、ギルドを追い出されてから始まるノレソレ痛快なみちのく冒険ファンタジー。
8 77 - 連載中34 章
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